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女子聖学院中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(女子聖学院中学校の特色のある教育 #3)

英語で国際理解を深める国内研修プログラム

女子聖学院中学校・高等学校では、国際理解教育の一環として「Global 3day Program」を学年ごとに実施。中1から高2まで全員が参加する必修プログラムの特色とは?

女子聖学院中学校・高等学校では、実用的な英語力を身につけて国際理解を深めるために、中1から高2まで全員参加の必修プログラム「Global 3day Program」を2015年度から展開している。プログラム担当の滝澤佳代子先生(国際教育委員会委員長・英語科)に話を聞いた後、プログラムの集大成となる「Self-Development Program」の最終日に行われた高校2年生によるプレゼンテーションを取材した。

国際理解を深めるツールとしての英語

同校では、異文化を理解し、自らの考えを英語で発信できる力を養うために、日々の英語の授業に加え、国際理解教育プログラムを実施。「上手な英語の習得」が目的ではなく、「英語を使って上手にコミュニケーションする」ことで国際理解を深めるというプログラムである。

中学生には、「英語に慣れて、英語を楽しむ」ことをメインにしたプログラムを展開。中1の5月に行われる「Global Starter Program」では、英語を楽しく学ぶだけでなく、人前で発表することにも挑戦する。好きなこと、興味のあること、家族のことなど、自分を知ってもらうための発表である。どうしても無理という生徒には発表を強制しないが、入学前からこのプログラムを実施することは告知しているため、ほとんどの生徒がポジティブな気持ちで取り組むという。

「英語への抵抗をなくすために、中1は入学してまだ間もない5月に実施しています。英語というのは、理解しないと使えないものではありません。最初は口まねでも十分です。人前で自分の口から英語を発する高揚感や、話すことができたという喜びを感じて、聴衆から拍手をもらい、先生から褒められるという体験に大きな意味があると考えています。生徒たちの様子は、1日目と3日目とではまったく違います。初日には『発表なんて自分にできるの?』と思っていた生徒も、3日目には『やってみたらできた!』と言っているのです。『自分はこんな人』だと伝えたい気持ちがあふれ出て、中学生らしいのびのびとした素敵な発表をします」(滝澤先生)

▶︎国際教育委員会委員長・英語科 滝澤佳代子先生

英語を「自分の言葉」にするための様々な経験

中2で行う「English Fun Program」では、グループごとに英語スキット(寸劇)をつくって演じる。3日間(15コマ)のうち7コマぐらいでストーリーを考えてセリフも覚えなければならないので、日本の昔話をベースに劇を創作。演技への抵抗などは見られず、生徒たちは演じることをとても楽しんでいるという。中3の「English Skill Up Program」では、グループごとに衣食住やアニメなどの日本文化について英語で発表する。この経験は、高1で実施する海外研修(希望制)で、ホームステイ先のファミリーに日本文化を紹介する準備にもつながっていく。

高1の「Self-Expression Program」では、自分が育ってきた環境を振り返り、部活や興味のあることなど、自分自身について発表。プログラムが行われる3月の時点では、3分の1程度の生徒が3週間や2~3ヶ月の海外研修を経験している。実際に海外で様々な体験をしてからのプログラムとなるので、コミュニケーションをより自分事としてとらえることができるという。

「ホームステイやターム留学で、生徒たちは天地がひっくり返るような経験をしています。数週間から数ヶ月間、1人でホストファミリーにお世話になることも初めてです。それまで出会ったことのない価値観を知り、嬉しいこともあれば、ビックリしたり困ったり、居心地が悪いと感じることもあるでしょう。海外での経験により、それまで平面として見ていた世界が立体的に見えてくるはずです。例えば、円錐台という立体(一般的なプリンの形)は上から見れば円に見えますが、横から見ると台形にも見えます。円も台形も間違いではありませんが、一部分の正しさでしかありません。いろいろな角度から見ないと全体像が見えないように、自分で行って見ないとわからないことがあるのです。だから、海外へ行っていろいろな経験をしてほしいと思っています」(滝澤先生)

▶︎中2「English Fun Program」

▶︎中3「English Skill Up Program」

▶︎高1「Self-Expression Program」

様々な国の留学生たちと交流する貴重な経験

プログラムの集大成となるのが、高2で行われる「Self-Development Program」。生徒30人に1人の講師がつき、さらに6人ずつのグループに分けて東大などに在籍する留学生(大学院生)がグループリーダーとして入る。このプログラムが始まった4年前は、初めてこのような3日間を体験して不安を隠せない生徒も多かったという。しかし、今の高2は中2の時からプログラムを経験してきているため、英語でのコミュニケーションを負担に感じることなく、自然に英語を口にしている。

「留学生たちは、マレーシアやサウジアラビア、モザンビーク、ガーナなど様々な国の出身で、その多くは母語が英語ではありません。流暢に英語を話しますが、発音はまちまちです。英語はツールとして使えれば十分であり、アメリカ人やイギリス人と同様である必要はないことを感じとってほしいという狙いもあります。留学生たちは、目標を持って日本の大学院で学び、母語と英語と日本語が使える、とても志の高い人たちです。そんな彼らの『Future goal』を聞いて、生徒たちは多いに刺激を受けます。留学生との交流は非常に貴重な経験となり、進路指導にもつながっていきます」(滝澤先生)

プログラムの最終日には、全員が自分の「Future goal」についてクラスごとにプレゼンを行う。そして、各クラスから選ばれた12人が学年全員の前で発表。高2のプログラムでは、テーマをどれだけ自分事として考えられたかが重要であり、自分が思っていることをしっかりと表現できるようになることを目指している。プレゼンを行う際には、「技術的なことよりマインドが重要」だと滝澤先生は語る。

「過去に、スティーブ・ジョブズのような、熱い思いがあふれ出てくる発表をした生徒がいました。そのような表現をしても、茶化すような生徒はいないので、のびのびと発表できます。いいプレゼンをするためには、聞き手を信頼する気持ちが必要です。その信頼が生まれるためには、失敗を恐れる必要がないと感じさせる聞き手のマインドが重要。失敗しても笑わない、揚げ足をとらない、出る杭を打たない、思いっきり表現しても茶化さないという信頼感が聞き手との間にあってこそ、発表者はよい表現ができるのです。生徒たちの発表から、自分の未来や友達に対する信頼が伝わってきますが、それは、本校の教育の要である礼拝からきていると思います。礼拝を通して、『あなたは大切な存在』『たとえ未熟でも信頼している』と言われて育まれてきた生徒たちなので、失敗を恐れずに素敵に表現する姿を見ることができます。」(滝澤先生)

選ばれた12人が学年全員の前で「Future goal」を発表

高2のプログラム「Self-Development Program」は、最終日に代表として選ばれた12人が校内のクローソンホールで「Future goal」を発表する。生徒の挨拶やプレゼンテーションはもちろん、司会進行も全て英語だ。今回発表した生徒たちの「Future goal」は、スポーツトレーナー、医療従事者、弁護士、助産師など様々であるが、どの生徒も「なぜなりたいのか」「なるためにはどうしたらよいか」などについてもしっかりと語っていた。まだ具体的な職業が決まっていない生徒もいたが、そのような場合も「まだ決まっていない」だけで終わるのではなく、今好きなことは何か、夢を見つけるためにはどうすればよいかなどを語っている。中には、「Future goal」と絡めて自分の存在意義について考えるなど、とても深い内容の発表もあった。

また、他の生徒とは少し違う視点での「Future goal」を発表した生徒もいた。背が低くて小中学生に間違われることも多いため、「背が高くなる」というのが彼女の「Future goal」だという。カルシウムを多く含んだ食べ物を摂ったり、早寝を心掛けるなど、彼女なりのプランが語られ、「皆さんが知っている背が高くなる方法をぜひ教えてください!」と締めくくられた。一般的な「Future goal」とは異なっていたが、それを茶化す生徒もいない。「背が高くなることで、もっと自分に自信を持てるようになりたい」という彼女の思いを受け止めた聴衆から、大きな拍手が贈られた。

「Future goal」という大きなテーマは同じであっても、同じ発表は1つもない。どの生徒も「Future goal」を自分の事として考え、それを堂々と自分の言葉で発表していた。生徒たちは、「簡単ではないが諦めない」「いろいろな可能性がある」「夢を諦めないで努力する」「諦めなければ全ての人にチャンスはある」などと語り、自分の未来を信じている気持ちを力強く表現していた。

プログラムに参加した高2の生徒2人にインタビュー

――発表を終えた感想、発表を聞いた感想を教えてください。

Tさん 自分が代表者に選ばれときは不安な気持ちもありましたが、実際にやってみたらちゃんとできたのでよい経験になりました。人前に立ってスピーチするのはとても緊張しますが、グループ内での発表で先生やグループリーダーが「間違えても全然大丈夫だよ」と言ってくださったので、間違いを気にせずに発表することができました。

Sさん 緊張していた人や、途中で忘れちゃった人もいましたが、それを感じさせないぐらい胸を張って発表していたので、みんなとてもよかったです。それができたのは、1日目と2日目にグループ内で行ったショートプレゼンの経験があったからだと思います。

▶︎写真左からSさん、Tさん

――中2から始まった「Global 3day Program」は今年で4回目ですが、どんな変化がありましたか?

Tさん 中2のプログラムで初めて、初対面のネイティブの先生とコミュニケーションをしたので、その時は何て言えばいいのかわからず、とても不安でした。プログラムを4回経験する中で、今年が一番楽しく過ごせて、自分からも積極的に先生や留学生に話しかけられました。一度で理解できないときは、先生やグループリーダーがかみくだいて説明してくれます。プログラムを4回経験して、英語力も高まり、表現力も身についてきたかなと思います。

Sさん 中2の時は、まだ文法なども習ったばかりだったので、頭の中で理解して、考えて訳すことに時間がかかり、会話もつまっていました。毎年プログラムを経験するにつれて、言われたこともササッと訳せて、言いたいことも自然に英語で出てきて、スムーズに会話ができるようになりました。4回目ですごく成長できたと感じています。

<取材を終えて>

このプログラムは国際理解教育の一環として展開しているが、生徒たちのキャリアデザインにも大きな影響を与える内容である。「Future goal」を英語で発表するためには、好きなことや興味のあること、どんな職業の選択肢があるか、それらの職に就くためにはどうするべきかをじっくりと考えなければならない。高2のこの時期にこのような機会があることは、進路指導としても大きな役割を果たしていることにも注目していただきたい。

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