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せいがくいん

聖学院中学校 

スクール特集(聖学院中学校の特色のある教育 #2)

山岳民との交流を通して、 社会課題を考える「タイ研修旅行」

聖学院中学校・高等学校が30年以上に渡って実施している「タイ研修旅行」。山岳少数民族との交流や、ボランティア活動を行う独自の海外研修プログラムを紹介する。

「人間力」「思考力」「国際力」の育成を教育の柱に据えて、生徒たちの指導を行っている聖学院中学校・高等学校。その1つ、国際力においてはグローバル教育に力を入れ、様々な海外研修を実施している。なかでも「タイ研修旅行」は、山岳少数民族との交流やボランティア活動を行う独自のプログラム。その目的や成果について、研修責任者の伊藤豊先生に話を聞いた。

山岳民と交流し、社会課題を“自分事化”する

2018年12月、29回目となる「タイ研修旅行」(13日間)に中3~高2の37名の有志が参加した。この研修は、タイ北部にある「メーコックファーム」(メーコック財団)を訪れ、親と暮らすことができない子どもたちと寝食を共にして交流をするなどボランティア活動、スタディーツアーを行っている。
「タイ北部の国境付近は山岳地帯で、少数民族が独自の文化を継承しながら暮らしています。正規の手続きなしに国境を越えて山で暮らし始めたり、出生届を出す機会を逃してしまったりなど理由はさまざまですが、国籍を持たない人も多くいます。子どもたちにとっても大きなハンディキャップとなり、それがもとで貧困の連鎖が生まれています。また、タイ北部はかつて、ケシの大栽培地でした。政府の麻薬撲滅策で一定の成果は出ましたが、アンダーグラウンドでは麻薬が流通し、親が逮捕されて子どもが路頭に迷う事態が続いています。
メーコックファームは、山岳民の自立支援や劣悪な家庭環境で育ってきた子どもたちの支援を行っています。生徒たちには、山岳民たちとの交流を通じて今は直接彼らを救えなくても、どうしたら支えになるのか、どうすれば貧困の問題を解決していけるのかを考えてほしい」と伊藤先生は言う。「そうした意味を込めて、今回の研修のテーマを『社会課題を“自分事化”する』にしました」

その他、研修ではラオスとミャンマーとの国境地帯「ゴールデン・トライアングル」へ行くスタディーツアーを実施した。
「生徒たちは、ラオスとミャンマーの2つの国に入りました。国境を越えただけで、生活様式や街の雰囲気が変わること、そして自分たちは軽々と国境を超えることができるのに無国籍の人はそれができないということを実感したと思います」と伊藤先生。「そして、無国籍の問題について考えるために国籍取得プロジェクトを展開している現地の人に講演会を開いてもらいました」
また、山岳民のアカ族の村でホームステイも行った。「生徒たちが民泊した村は、森林保護や麻薬撲滅を自治で行っています。その話を聞いたり、森林や田畑、水源保護地に連れて行ってもらうなど、スタディーツアーを展開。SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みも、実際に見ることができました」

▶︎研修責任者 伊藤豊先生

▶︎タイ・ミャンマー国境の橋を歩いて渡る

事前学習で目的意識を明確化

メーコックファームで生徒たちは、ボランティア学生として滞在する。施設の人を手伝ったり、子どもたちと遊んだりしているが、近年はこちらからもアクションを起こし、積極的に交流を図るプロジェクトを実施している。

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<プロジェクト活動>
1.有線LAN敷設プロジェクト…ITエンジニアの技術指導のもとで、主に土木工事を行う。
2.日本料理プロジェクト…メーコックのスタッフや子どもたちに、普段日本で食べている食事を提供する。
3.フリーマーケットプロジェクト…献品を集めて、近くの公園でフリーマーケットを開き、収益をメーコックに寄付する。
4.Tシャツプロジェクト…記念Tシャツを制作。メーコックの子どもたちが描いた絵をデザイン化し、現地でシルクスクリーンの技法を使ってプリントする。
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プロジェクト活動はグループに分かれて、生徒たちで話し合い、準備を進める。いわゆるPBL(Project Based Learning)の取り組みだ。また、週1回の昼休みのミーティングや校内合宿をして、綿密に事前学習を行った。
「合宿では、『何のために自分は研修に参加するのか』『現地で自分は何をしたいのか』、参加の動機を明確化したり、チームビルディングや、山岳民族について知るワークなどを行いました。現地の基礎知識をしっかり入れておかないと、生徒たちはメーコックの子どもたちを、ただ可哀そうな人と捉えてしまいます。そうではなく、バックグラウンドの違う他者を、無条件に受け入れてほしいのです」と伊藤先生は言う。

▶︎有線LAN敷設プロジェクト

▶︎料理プロジェクト

▶︎Tシャツプロジェクト

自己を開示し、他者を受容するマインドへ

研修へ行く前と後で、生徒たちの変化はあったのだろうか。
「最初、生徒たちは、現地の人に自分を伝えなければならないと前のめりになっていましたが、実は、それよりも先に相手が自分を受け入れてくれていたことに気づいたと思います。この研修プログラムを専門家にみてもらうために生徒たちへアンケートをとったのですが、『言葉の通じない人と仲良くするには何が必要ですか」という質問に対して、研修前は『自分からコミュニケーションをとりに行く』と答える生徒が多かったのに、帰国後は『相手を受け入れる』という答えになっていました。これが一番大きな変化ですね。
また、おとなしかった生徒が、自分から行動するようになるなど積極性が出てきました。なかには、聖学院大学と一緒にやっている釜石の震災ボランティアツアーに参加したり、SDGsのワークショップに応募したり、次の活動へ進む生徒もいます」
そして、今年度からタイ研修を活かした問題解決プログラム「カンボジアMoG(Mission on the Ground)」がスタートする。「具体的には、現地で活躍する起業家とコラボして土産物を開発し、市場で販売をします。さらに難度の高いスタディーツアーになりますね」。タイ研修から引き続き参加する生徒もいるそうだ。

▶︎仲良くなりました

タイ研修に参加した生徒にインタビュー

実際にタイ研修旅行に参加した生徒たちは、どんな気づきや感想を抱いたのだろうか。二人の生徒に話を聞いてみた。

Mくん 高校2年生(参加時は高校1年生、中学3年から連続で参加)
Eくん 高校1年生(参加時は中学3年生)

▶︎写真:左 M君、右 E君

Qタイ研修に応募した理由は?

Mくん 中3の時は、タイの山岳地帯の人たちは、どんな生活をしているのか興味があって参加しました。今回は、前回の日本料理プロジェクトでできなかったことをやり直したいという思いで応募をしました。
Eくん 小学6年の時に学校説明会でタイ研修のことを知り、その時から行きたいと思っていました。タイという東南アジアの国で、それも少数民族の村でボランティア活動をしているのは聖学院だけです。この学校を選んだのもタイ研修が大きな理由でした。

▶︎寄付をしました

Qタイ研修の体験で印象的だったことは?

Mくん アカ族の村にホームステイをしたのですが、行くまでは村の中に貧富の差はないと思っていました。でも、実はそうではなく、自分が泊った家は木造りで、壁にあちこち隙間があり、隣の家はコンクリートでしっかりしていました。小さな村でも、大きな差があることに驚きました。
Eくん タイの空は、星がとてもきれいに見えました。でも、スタディーツアーで「星がきれいに見えるところは貧しい」という話を聞き、「そういうことか」と思い知らされました。確かにタイの村人たちは、裕福ではありません。でも、明るく楽しそうに生活をしていて、幸せというのはお金ではなく「自分はどう生きたいのか」と考えるようになりました。

▶︎アカ族の女性

Q研修を経て、自分の中で変わったことは?

Mくん プロジェクト活動を通して、人の意見を受け入れ、それをいい方向に進めていくスキルが以前よりついたと感じます。
Eくん 積極性が出てきたと思います。ディスカッションの学習の時もどんどん意見を出すようになりました。

▶︎さよならの直前

Q研修で感じた自分の課題、そして次の目標は?

Mくん 貧困や親のいない子どもたちに対してどんな支援をしたらよいのか考えるようになりました。今、自分ができることは、事実を知ることです。勉強をしたり、勉強できる場所に行って現状を知り、大人になったら解決する側になりたいです。次の目標は、8月のカンボジア研修でプロジェクト活動を成功させることです。
Eくん タイでしみじみ感じたのは、もっと英語の勉強をする必要があるということです。英語が話せれば相手に通じることが多く、また、人と仲良くなるにはコミュニケーションが大事であると実感しました。これからは言葉に気持ちを込めて会話をし、より深く人とつながりたいです。

(取材を終えて)
グローバル教育として、海外研修プログラムを導入している学校は数多くあるが、同校は、東南アジアの小さな村でボランティア活動を行うという独自性を発揮。長年培った経験に加え、近年はプロジェクト型の学習(PBL)やスタディーツアーなどを取り入れるなど、プログラムも進化している。タイ研修は異文化や社会問題を身をもって理解するとともに、自分で考えて行動する力やコミュニケーション力、人を受容する心など同校が掲げる人間力も養っていることを取材を通して知ることができた。

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