東京電機大学中学校
東京電機大学中学校は、1996(平成8)年に中高一貫校として開校しました。そして、1999(平成11)年より共学校となります。学び舎を武蔵野の面影の残る東京都小金井市に構え、付近に小さな畑も姿を見せる落ち着いた地域環境のなか、東京電機大学高校の先輩たちと同じキャンパスで学んでいます。
東京電機大学中学校の起源は1907(明治40)年。二人の青年技術者、廣田精一と扇本真吉が、東京・神田の地に「電機学校」を創設、二人は日本が将来“技術立国”になる夢を抱いて、科学者・技術者の養成に取り組みました。
「後世、科学技術の総本山たらん」――二人の大志は教師と生徒たちによって脈々と受け継がれ、「電機学校」はやがて電機学園高等学校(現東京電機大学高等学校)、東京電機大学、さらに東京電機大学中学校へと拡大・発展し、昨年9月、創立100周年を迎えました。
東京電機大学中学校の校訓は、「人間らしく生きる」――。その目標とする人間像は、「社会で信頼と尊敬を得ることのできる人」「自分の人生に対し、積極的に生きることのできる人」。学校教育の三つの主要課題-学習指導、進路指導、生活指導―には、この人間像の実現を念頭に置いて取り組んでいます。
なかでも、学習指導は中高一貫教育ならではの特色ある指導を行っています。今回は、その学習指導の特徴について取材しました。
学習指導の特徴
■6年間を三つのステップに分けて学習指導
中高6年一貫校教育として、中学1〜2年生を「基礎力養成期」、中学3〜高校1年生を「基礎力充実期」、高校2〜3年生を「実力完成期」として区切り、弾力的なカリキュラムを組んでいます。6年間を2年ごとのステップに分けることで、中高の学習課程を効率よく吸収、大学進学にそなえます。
■少人数制を導入
1クラス30人程度で編成。効率的な学習とともに、一人ひとりの課題を早期に見つけ出し、対応するきめ細かな指導を行います。
■数学・英語に重点を置く
東京電機大学中学校では、主要教科のなかで特に数学・英語教育に重点を置いています。
中学1年生の主要5教科のカリキュラムを見てみましょう。( )の数字は週当たり単位数。
国語 国語1(4)
社会 地理的分野(2)
歴史的分野(2)
数学 中学数学1・2(5)
理科 地学分野(2)
生物分野(2)
英語 プログレス(4)
T.T.(ティーム・ティーチング)(1)
英会話(1)
中学1〜3年生の主要5教科の年間授業時間数
| 中1 | 中2 | 中3 | |
| 国語 | 140 | 175 | 175 |
| 社会 | 140 | 140 | 140 |
| 数学 | 175 | 175 | 210 |
| 理科 | 140 | 140 | 140 |
| 英語 | 210 | 245 | 245 |
数学
―指導の特徴
中高5年間で数学全課程を修了する先取り学習を行うため、早い段階で自学自習の習慣が身につくよう工夫しています。一人ひとりの課題点を見つけ出し、対応することで少人数制を生かした授業を展開します。さらに、中学3年生からは習熟度別授業を導入しています。
・数学1・2の授業
数学a(数式・関数中心の数量的分野:週3時間)と、数学b(平面図形・空間図形中心の図形的分野=週2時間)の2科目に分け、体系的に授業を進めていきます。算数から数学への橋渡しに配慮しながら、生徒の知的好奇心に訴えかける授業を展開します。また、確認テストにより定着を高め、課題により家庭学習の習慣を身につけさせていきます。
・中3の習熟度別授業
上位クラスのA組を除いた3クラスについて、習熟度別で授業を行っています。クラス編成は、3年生のスタート時は中2の成績で分け、以降中間・期末試験ごとの結果で順次編成が組み直されます。授業は高校数学a(週4時間)、数学b(週2時間)の教科書を使用して進めます。
英語
―指導の特徴
教科書に「プログレス」を採用、パターンプラクティスに取り組むことで、短文から徐々に長文を組み立てる力を養います。
T.T.では、教科書で学んだ表現を実際に用いる環境をつくり、1年生は頭とからだを動かしながら反復練習を中心に学習します。中学3年生では英作文指導に重点を置き、スピーチを行えるようにします。
・プログレスを用いた授業
「レギュラークラス」として英語のコアとなる授業を行います。プログレスに加え、問題集や補助プリントを用いて数多く文法問題に当たること、英作文を書かせることをくり返し行い、基本の定着を図ります。
・T.T.の授業
ネイティブ教師とのT.T.を行います。ペアワークやゲームなどの楽しい活動を通して短い英文を学び、みんなの前で発表できるようにします。
・英会話の授業
1クラスを半分に分け、ネイティブ教師により行っています。実践的な場面を設定し、その中で頻繁に用いる表現の習得をめざします。英語圏の文化や日常生活にも触れ、楽しみながら学びます。
―中1対象にモーニングレッスンを実施
中学1年生にはより英語に親しむ時間を多くもってほしい。また、少しでも実践力を高めてほしい。そうした意図から、1年生のみを対象としてネイティブ教師による特別レッスンを行っています。ここでは発音やリズム感が自然に身につくように指導しています。
=取材報告=
1年生の英語・数学の先生に話をうかがい、授業を見学してきました
数学科教諭 高橋先生のお話
数学は1年生の1学期が最も肝心です。中高6年間のなかで、初めて数学を学ぶことになるこの時期が、いちばんつまずきやすいのです。というのも、まず「正・負の計算」という、小学校の算数にはなかった学習が出てくるのですね。さらに、1学期中ごろから文字式が出てきます。こうした「数学」との出会いのときに、つまずきが起こりやすいのです。
そこでわたしは、1学期と、引きつづき文字式を学ぶ2学期を特に重視し、きめ細かな指導を心がけています。その一つは小テスト。授業中によくやっています。小テストで一人ひとりの理解度を確認し、つまずきの起こりかかっている生徒は放課後に再テスト、補習を行います。1学期はほぼ毎日のように再テストをやっていました。本校には数学好きな生徒が集まる傾向にありますが、それでも1学期のうちに差が出てきます。そこで、補習などで生徒を励ましながら、基礎をしっかり定着させます。
数学科では先取り学習を行っているため、早い時期から自学自習の習慣を身につけさせるようにしています。生徒には教科書とともに家庭学習用として問題集を配布していますが、この進み方は自分しだいです。ただし、定期試験ごとに問題集の範囲を指定しているので、そこは全員がやらなくてはいけません。定期試験終了後に問題集を提出させて理解度をチェックし、試験の結果と合わせて学習の不足している生徒を集めて再テストをします。それができなかったら、また再テスト。こうやって何度もテストを行い、自分で勉強する習慣を身につけさせます。初めから個別指導をすると、自ら学習する力が身につかないのです。だから、個別指導は最後の段階で行うようにします。
一方、進度の速い生徒は、授業中にこの問題集を解かせています。ドリルをさせることが多いので、終わった生徒は問題集で先に進みます。
自学自習の習慣を身につけるとともに、自身の学習到達度を確かめることも必要です。そこで、中間・期末定期試験のほかに、2・3学期の初めに到達確認テストを行っています。これは前学期に学んだことが範囲です。夏休み・冬休みに復習用のプリントを配布しておくので、それをしっかりと勉強し、休み明けの到達確認テストに臨みます。
各クラス30人程度の少人数学級ですが、ちょうどいい人数だと思います。一人ひとりに目が行き届きやすく、ノートのとり方なども授業中に指導することができます。1年生は黒板を写すのもゆっくりなので、授業を飛ばして行うことはありません。数学の時間数が十分に確保されているので、生徒のペースで進めていっています。
中学3年生の習熟度別授業では、生徒も一生懸命に勉強しています。中間・期末試験ごとにクラス編成が変わるので、がんばれば短期間で上の段階のクラスに上がれるわけです。学習内容も高校レベルになるので、生徒の習熟度に合わせて教えていくのは、一人ひとりの確実な理解のためにもいいと思います。
―授業見学―高橋先生の「比例」の授業を見学しました
9月末の某日、1年生の数学の授業を見学しました。単元は「比例」。通常では3学期ごろから学ぶ単元ですが、先取り学習を行っている東京電機大学中学校では、2学期にすでに比例の学習に入り、2学期中間試験後からは中2の数学に入ります。
生徒は各自グラフ用紙にグラフを書きながら問題を解き、「比例定数」の意味・特徴について学んでいきます。
授業は問題集を使いながら、生徒自身に問題を解かせていきます。その間、先生は机の間をまわり、生徒の理解度を確かめたり、ヒントを与えたりしています。
筆者も生徒のノートをちょっとのぞいてみました。青や赤のペンで色分けしながら、几帳面にノートをまとめている男子生徒。真面目なようすが伝わってきましたが、高橋先生のお話のように、たしかにゆっくりなペース。問題の答え合わせでは、一問一問きちんとマルをつけていました。
こっくりしている生徒はおらず、全員がそれぞれ問題に向かっている。――高橋先生が1学期に行ってきたつまずき防止が、2学期の学習態度に生かされていることが伝わってくる授業風景でした。