中学受験TOP特別取材  富士見中学校の「卒業自由研究」中間発表

特別企画「進路指導」徹底解剖!で取材させて頂いた富士見中学校ですが、そこで明らかになった富士見中学校(高等学校)の教育の原点のひとつ「他者からの刺激」の現場を拝見すべく、中学3年生の「卒業自由研究」中間発表会を取材しました!
10月27日(土)
季節外れの台風接近で、外は冷たい雨の嵐模様。
高校生は中間試験の最終日、中1・中2の生徒は理科・社会の校外学習で校外へ出ており、いつもより静かでガランとした校舎の中に、中3の生徒たち約240人は、朝のホームルームが終わると午前中いっぱいかけて、「卒業自由研究」の中間発表を行います。

長期間にわたる個人研究だけに、ともすると「学ぶ楽しさ」が感じられず、興味や関心、情熱が続かなくなるのでは?先生たちは、どんな仕掛けを用意して、生徒のモチベーションを維持・向上させ、生徒に「学ぶ楽しさ」を伝えているのだろう・・・?そんな疑問を抱きつつ始めた取材でしたが・・・

※富士見の「卒業自由研究」とは・・・
5月から授業の中で準備を始め、中学卒業前の2月に本格的な芸術鑑賞会などにも使われる講堂(収容数554名)で、保護者も招いて最終発表会を行います。個々の生徒が、1学期中に決めたテーマを、夏休みの課題の1つとして調査・研究を始めます。2学期に12〜3名のグループに分かれて一人ひとりが研究の途中経過を発表し(中間発表会)、更に研究内容を磨いて、磨いて・・・2月の最終発表会に備えます。まさに大学などの"卒論"同様、生徒一人ひとりがテーマを自由に決めて、研究論文的に仕上げます。
保護者も招いた最終発表は、各クラスの優秀者12名により行われますが、その前に学年の生徒たちだけで行う「"プレ"最終発表会」も行われます。その発表者12名は、ナントくじ引きで決定!全員が講堂の演壇に上がり発表する可能性があるので、みんな気を抜けません。
卒業自由研究発表会

発表会の運営を自分たちで行い、自分たちそれぞれが研究した内容、その経過をイキイキとした表情で話しお互いにアドバイスや感想を持ち寄ってお互いの卒業研究をいいものにしよう!と話し合う生徒たちの姿に、純粋な向学の精神を見て、嬉しくなりました。

発表の内容も「中間発表」とはいえ、中学生ながら、遺伝子について詳細に調べ、容姿のことから遺伝子組換食品について言及する生徒もあれば、睡眠中に見ている夢と精神状態の関係性をフロイトの論文等を引用して説明する生徒もあり、大学の卒業論文のような出来栄えに仕上がりつつあるものも見受けられました。

自分たちが興味を持ったことを、自らの力で調べて自分の結論を導く
表立っては口を出さず、生徒の自主性を促しながらサポートしている先生方の姿も印象的です。     
  →「進路指導」徹底解剖! 富士見中学校の巻はこちら
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互いに学び合える仲間であろう!!
富士見中学のクラス名は松・竹・梅・菊・桜・桃の6クラス。伝統的、日本的なクラス名です。
中間発表会は、普段の教室の仲間ばかりでなく、他の同級生同士で刺激を与えあう意図から、6クラスそれぞれから2〜3人ずつが振り分けられた18のグループに分かれています。
ホームルームで先生から配られたプリントには、「互いに学び合える仲間であろう!!」の文字とともに、次のようなことが書いてあります。

*係(司会、タイムキーパー、報告書取りまとめ、清掃)を決める
 (人数配分は各グループに任せる)
*発表順を決める
*発表する(内容は先日配布した要項の通り)
*質疑応答〜発表を聞いて分からないことを聞くのは人の為!
*助言しあおう〜こんな調査しては?こんな仮説もあるのでは?
 お互いのヒントになるはず。
*発表〜助言までは、一人10分で。
中間発表会プリント
自分が動かないと時間ばかりが過ぎてしまう・・・
グループに分かれてからは、各教室に先生はいません(もちろん、先生方は巡回しています)。あくまでも、生徒同士が各々の研究成果の経過を発表しあい、感想やアドバイスを与え合ういわば「生徒同士の刺激」を狙った富士見らしいもの。教室に入るなり、話し合う為に適した机の配置、発表者が話す場所、発表順、係はダレ・・・?自分たちだけで決めること、やることが満載です。

机を円座に組むグループ、晩餐会のように細長く組むグループ、教壇で発表者が話すのが聞きやすいように(本番を想定したのかも?!)敢えて普段の教室と同じスクール形式にするグループ・・・
中にはタイムキーパーを数名配置して、壁掛け時計を外し、発表者が常に見えるように抱えるグループも。
教室の使い方から、グループそれぞれのやり方を考え出していきます
円になって進めるグループ 細長く机を並べるグループ スクール形式で進めるグループ
係や発表順の決め方も、グループそれぞれで、普段の部活動などで養われたリーダーシップを発揮して、どんどん仕切ってくれる生徒がいるグループ、遠慮がちに皆であみだやくじ引き、じゃんけんで決めるグループ。
決めきれないグループには、そっと先生のアドバイスが入ることもありますが、動かなければ時間だけが過ぎてしまう状況で、それぞれのグループ皆んなが納得きる方策を模索して、15分ほど後には、どのグループでも発表が始まりました。
民族、障がい者、遺伝子・・・
最初にお邪魔したグループの最初の発表は、「民族について」
円になった机の自分の席で立ち上がり(その前に、”立ってやる?””えーっ””立った方がいいよ”
”そうかな””じゃ、みんな立ってやろう”などのプチ会議がありました)、夏以降調べてきた自分の研究成果びっしり手書きしたノートを読み上げていきます。
私は、民族について調べました。中でも中国の民族についてです。
 なぜ、この研究にしたかというと、あるTV番組を見て興味を持ったからです。
 私は、「民族」(発表者の中では、特に伝統的な風習を続けている少数民族を指している様子)というものはだんだん減ってきているのだと思っていましたが、中国では逆に増えています。実は、少数民族への保護政策があって・・・・」

ふと思えば疑問に感じるテーマと調査内容生徒たちの向学心に脱帽です。
一方で、質疑応答の段になると、最初だからか何を聞いていいのか分からず、無言の時間が・・・。

すかさず、先生が「はーい!質問!あるTV番組ってナニ??」
生徒「ウル●ンです。」
先生「そのどんな内容みて調べようと思ったかとか、もっと言えばいいんじゃない?」
生徒「え・・・こういう論文に、番組名とか入れたらいけないかと思って。」
先生「校内で発表するだけだし、聞く側がその方がよく分かるから、今回は大丈夫だよ。」
生徒「じゃ、入れます!」
質疑応答の様子

著作権のことが気になって、リスクを回避する為に敢えて番組名を伏せる。
これも自分で考えた結果で、この会話によって他のメンバーにも共有できたということ。研究発表の中身ももちろんですが、こうした会話が、他者からの刺激で自らが気付いて学び・進むことなのだと実感しました。

中間発表の報告書
※感想やアドバイスを、びっしり書き込んでいる報告書
他のグループも覗いてみると、そこでの発表は「障がい者について」。
少し前、おばあ様がケガをして足が不自由になったことから、研究対象に選んだ
とのこと。
「まず、障がい者ってどういう人たちのことをいうか、調べました。(中略) 調べてみると、社会に出て不自由なことがある人たちのことで、どんなことに不自由かで 呼び方が違ったりすることが分かりました。 介護についても・・・」
発表が終わると、少し慣れてきたからなのか、このグループではどんどん質問が出ていました。
「ユニバーサルデザインってどういうの??」
「バリアフリーってナニ?」
タイムキーパー係が、「あ、時間!次〜」と促しつつ・・・。
その後、アドバイスなどを報告書に書き込んでいました。

次のグループでは、「遺伝子について」
声に張りのあるお話上手な生徒が発表者で、論文発表としての体裁は完璧。
結論を述べ、理由・根拠を述べ、具体例を話す。全ての生物にある遺伝子について、幅広く調べて、まとめていました。「目が大きいとか背が高いとかが優勢遺伝子だったら、子供にその遺伝子が受継がれて、目が大きい背が高い子になる。逆に目が細いのが優勢遺伝子だったら目が細くなちゃう。」
身近な例をあげて、グループのメンバーの顔を交互に見ながら話す様子は、マニュアルなどで鍛えられたものとは異なり、自分の考えをきちんと聴く側に伝えたい!という気持ちから、自分で導き出した行動のように見えました。
発表の様子

互いを認め、称えあう仲間
発表の様子 もちろん、14〜5歳らしい可愛らしいテーマや、思春期の女子が好みそうな夢と深層心理のテーマ、血液型や宇宙人のテーマなどもあり、発表についても、まだまだ掘り下げた調査が必要な生徒、つい小さな声で自信なさげに研究の途中経過を読み上げる(途中で止まると元気のよい生徒から”ガンバレ!”の掛け声もあり)生徒もありました。

そんな時にも、普段はクラスも別であまり交わりのない生徒同士が、温かい拍手を送りあい、一生懸命「何か聞いてあげよう」と質問を捻り出したりする"刺激"を与えあう姿がありました。
18のグループ全てを回ってみたわけではありませんが、最初はお互いに遠慮して口数の少なかった所も、時間の経過とともに、リーダーシップを取ったり何かの役割を担う生徒が現れていて、お互いが学びあう充実した時間が、確かに流れていました。
取材を終えて・・・
最後に、学年主任の小村先生にお話を伺いました。
「今回の中間発表の目的としては、発表の出来・不出来ではなく”自分の言葉で話しが出来るか”。
調べたことを自分の言葉で仲間に伝えて、生徒同士のその行動が次に進む刺激になればいい。」
とのこと。

生徒たちと話をすると、「正直面倒くさい」「長い時間聞いてばかりだとイライラしたりもする」という本音トークもありましたが必ず最後には「でも、将来役に立つだろうから」「調べてみると面白かった」と話してくれました。

面白いことに、卒業研究は発表の仕方も研究内容も、普段の成績とは全く比例しないとのこと。
生徒たちの様々な才能得意分野を、先生方も生徒同士も再発見する、とてもよい機会になってもいる・・・
富士見の教育の原点のひとつ「他者からの刺激」が確かに"効いている"現場でした。
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