中学受験スタディが特別取材した私立中学の特徴ある教育
独自のキャリア教育によって、生徒の意欲や興味・関心、将来への夢を育む広尾学園。その合言葉は「生徒たちの心に種をまこう」。
新しい世界との出会いや魅力ある人たちとの触れ合いなど、中高大連携も含め多彩なプログラムを実施しています。
吸収力が高く、多感な中高生たちの心に響く豊かな出会いや発見を提供したい。――学園の熱意のこもったキャリア教育です。
2009年度に行ったプログラムの一部を紹介しましょう。
「第一線を知る講座―広学特別講演会」を年2回開催。「難関大学キャンパスツアー」では東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学を訪問し、教授や現役大学生のお話を聞く。
「広学サイエンス講座」ではロボットのプログラミングやDNA鑑定を体験。「つくばサイエンスツアー」では筑波を訪れ、国土地理院、宇宙センター、筑波大学ギャラリーなどを見学。
生徒に人気なのが、最先端の講義を受ける「大学講座」。東京大学、一橋大学、慶應義塾大学、上智大学、立命館大学など11の大学から先生を招いて受講。
これらはすべて中学生・高校生とも希望制。“自律と共生”を教育方針とする学園では、つねに生徒の意思を尊重します。生徒はどのプログラムにも意欲的で、各回100名~240名が参加しています。
3学期を迎えた広尾学園では、2009年度のキャリア教育の総まとめとなる最先端講座・スーパーサタデーが実施されました。
この日は全国から、21世紀の最先端分野に挑む科学者、エンジニア、医療研究者、若手法律家など、日本の現在と未来を支える精鋭たちが学園に結集し、講義を行いました。
講座は22講座。以下はその一部です。
| 地球規模の創薬 -寄生虫からがんまで- 東京大学大学院医学系研究科 北 潔先生 |
地球温暖化予測の最前線 これから気候はどう変わる? 海洋研究開発機構 横畠徳太先生 |
| 生物の「なぜ?」を探るフィールドサイエンス 国立科学博物館附属自然教育園 濱尾章二先生 |
Dinosaurs meet technology 恐竜学のこれまでとこれから 東京大学 学術統合化プロジェクト 大橋智之先生 |
日本の宇宙科学の今とこれから JAXA(宇宙航空研究開発機構)阪本成一先生 |
政治と経済学 なぜ政府は必要で、なぜ失敗するのか 慶應義塾大学大学院経済学 平賀一希先生 |
| ヒューマノイドロボット研究とその応用 早稲田大学創造理工学部 高西淳夫先生 |
裁判官の魅力とやりがい 東京地方裁判所 荒谷謙介先生 |
世界にはばたけ! Challenge the World! 日本英語協会代表 マーク貝島先生 |
脳は不思議がいっぱい!! 自然科学研究機構 生理学研究所 柿木隆介先生 |
春の到来を告げる暖かな陽気となった3月初旬の土曜日。1時間目・2時間目に開かれたスーパーサタデーは、中1~高2対象で参加生徒700名。
さっそく教室をのぞいてみると、中学生と高校生がいっしょになって熱心に講義に耳を傾けています。
受講者数は教室ごとに20名~40名、なかには80名を超える教室も。理科系の講座が中心となるなか、大半の教室が男女同数となっていました。
講義を受けた生徒に感想を聞いてみました。
1時間目「地球規模の創薬」を受けた中2女子は、「寄生虫をつかった創薬の話など、難しかったけれどとてもおもしろかった。生物に興味があり、将来は理系に進みたいのでこの講座を選びました」。
2時間目は「バイオロギングによる海洋動物の行動研究」を受講するとか。その理由は?「これもやっぱり生物に関するものだから、ぜひ聴いてみたいと思って」
1時間目「脳は不思議がいっぱい!!」を受講した高1女子は、「将来は医師を志望しているので、脳の話はおもしろそうだと思い、選びました。講義は難しかったけれど、普通の授業では学べないことだったので、すごく興味をそそられました」。
2時間目は「裁判官の魅力とやりがい」を受講するそう。「親が警察関係なので、少しでも親の仕事に関係するものを受けたいなと思い、選びました」。
2時間目「ヒューマノイドロボット研究とその応用」を受講した中3男子は、「ロボットの部品に興味があるので受けました。知らないことをたくさん知ることができた。将来はロボットをつくってみたいです」。
同じ講義を受けた高1男子は、「講義を選んだのは、小さいころガンダムが好きだったから。講義を受けて、ロボットはこれから発展する学問なのだなと思いました。将来の夢は、新しいエネルギーを開発すること。エネルギー工学を専攻したいと思っています。1時間目は核融合の講義を受けました」。
生徒の心に種をまき、夢を持たせること。それが広尾学園のキャリア教育の大きなねらいです。なんのために勉強するのか。これは学ぶ者にとって大事なことです。
わたしたちは、それを生徒一人ひとりに考えるきっかけを与えたい。生徒の心を揺さぶり、生き方に影響を与えるようなきっかけをたくさん提供したい。
そうした意図のもと、2009年度は充実したプログラムを実施することができたと思います。
スーパーサタデーは、2009年度キャリア教育の総決算として最も大掛かりなものになりました。理科系の講座が中心ですが、これには「広尾学園サイエンス教育」の方針が反映しています。
学園では理科系の研究・学問に興味を示す生徒が増えていて、特に生物系や医療系を志望する女子生徒が多くなっています。こうしたことを背景に、現在サイエンス教育の充実を目指しているところです。
2011年竣工予定の第2新校舎では3つのサイエンスラボが設置され、大学の研究室レベルの機器を活用した実験が可能になります。
キャリア教育プログラムによって、生徒の意識はたしかに変わってきました。
たとえば昨年12月に司法裁判についての講演会を開き、東京地裁を4日間にわたって傍聴しました。参加者は150名余り。
弁護士志望の生徒はおおいに刺激を受け、今まで苦手だった教科をがんばりたいと言うようになりました。大学の先にある将来の職業を強く意識できるような体験は貴重です。
今後はさらに充実したプログラムにしていきます。学年の枠を取り払った活動は大きな意義があります。一方で学年別の講座もあったらいいのではないか。また、スーパーサタデーの講座も、歴史や芸術などの最先端分野も入れていきたいですね。
キャリア教育プログラムは4人の教員がチームを組んで運営していますが、学園の全教員のアイデアや助言を得ながら進めています。
講師を務めてくれた方は、すべて第一線で活躍する優れた研究者や専門家ばかり。こうした人選から依頼まで、すべてわたしたちが行っています。まさに教員手づくりの心のこもったプログラムです。必ず生徒の心に届くものと確信しています。