郁文館夢学園の「夢教育」
子どもたちに夢を持たせ、夢を追わせ、夢を叶えさせる
郁文館夢学園の「夢教育」
郁文館夢学園の誕生は1889(明治22)年。教育者の棚橋一郎によって、現在の地(文京区向丘)に「私立郁文館」として創設され、以来男子名門校として100余年の歴史を歩んできました。
2003年(平成15)年には理事長に渡邉美樹〔ワタミ株式会社 代表取締役社長〕を迎え教育を一新、2006(平成18)年に校名を「郁文館夢学園」へと改称し、子どもの夢をはぐくむ学校へと更なる一歩を踏み出しました。
2008(平成20)年より、生徒一人ひとりの「夢」を叶えるための最新教育施設の整った新校舎で授業を開始。全館完成予定の2010(平成22)年には、男女共学がスタートします。
郁文館夢学園は「子どもの夢をはぐくむこと」を教育の中心に据えています。
今、子どもたちの多くが、「何のために勉強しているのか」がわからなくなっているといわれています。目的がわからないまま勉強することほどつらいことはありません。
どんな子どもも、本来「学ぶ」ことが嫌いではないはずです。自分の「夢」のために学ぶのであれば。――その「夢」とは、実社会のなかで自分が心豊かに、幸せに生きるための「夢」にほかなりません。ところが、今の子どもたちは夢の見つけ方や叶え方がわからず、勉強に意味を見出せなくなっているのです。
郁文館夢学園では、「社会の一員として、その子どもが幸せになるため」に教育があると考えています。そして、子どもたちに「夢」を持たせ、「夢」を追わせ、「夢」を叶えさせる――それを教育の目標に据えた「夢教育」に取り組んでいます。
学園が「夢教育」の一環として特に力を入れているのが“夢プロジェクト”です。それはどういうものでしょう。
今回“夢プロジェクト”について取材しました。
“夢プロジェクト”の取り組み
■学年別メインテーマ
夢プロジェクトは、以下の学年ごとのテーマに沿って進められます。
中学1年
〔自覚〕…中学生として、郁文館生としての自覚を持とう。
中学2年
〔感謝・思いやり〕…他者への思いやりや感謝の気持ちを自ら養い、人間関係を学ぼう。
中学3年
〔自立〕…卒業を控えた巣立ちの時期に、自分を見つめ、現時点での将来の目標を考え、それに向かって自分の足で歩くことを考えよう。
高校1年
〔発見〕…義務教育を終え、自らの意志で高校へ入学したこの時期に、自分を見つめ直し、一生をかけて追い求める夢を見つけてみよう。
高校2年
〔前進〕…思春期の真っ只中で進路や人生に悩む時期に、自分の「未来」や「夢」を信じて一歩前に踏み出そう。
高校3年
〔不撓不屈〕…受験を控え不安で苦しいことがあっても、「夢」をあきらめずに前進しよう。
■夢合宿
中学1年生は入学式の翌日から5泊6日の「夢合宿」に出かけます。場所は長野県・湯の丸高原にある学園の研修施設、志高館。中学2年生〜高校生は、10泊11日の長期合宿に臨みます。合宿は各学年のメインテーマにそって、さまざまなプログラムが用意されています。
■理事長講座
学年ごとに、理事長自ら、または理事長が推薦するゲストの講師たちが、月1回のペースでいろいろなテーマをもとに話をします。大きなテーマは「夢の実現」です。
■夢達人ライヴ・夢実習
全学年の希望者対象に行います。さまざまなジャンルで活躍する達人が学園にやって来て、自身の体験談や人生訓、そして「夢」に近づくためのプロセスについて語ります。さらに、「夢実習」として生徒たちが実際に職場を訪問し、職業体験や実地研修を行います。これまでエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社の録音スタジオを体験したり、岸和田盈進会病院の医療現場を訪れて最先端技術を見学したりなど、生徒の夢をはぐくむ活動を展開しています。
■起業体験プログラム
高校2年生が文化祭での実行をめざして挑戦します。クラスごとに、自分たちでどのような会社を興すのかを決め、実際のお金を使って会社を立ち上げ、ビジネスを運営します。
■修学旅行
中学2年生の修学旅行は沖縄です。「環境・平和・食」をテーマに、事前学習として社会科の授業で「環境」「平和」「食」の三つの班に分かれて調査・準備します。旅行中はすべて班行動。自分たちで決めたコースで、自分たちで選んだ交通手段で巡ります。
夢プロジェクト推進部長 土屋 俊之先生にうかがいました
(土屋俊之先生のインタビューイメージ映像です。再生ボタンを押すと音声が出ますので気をつけてください。)
★「夢教育」の考え方―DQ(夢指数)を高めるために―
夢プロジェクトの大きな目的は、子どもたちの「夢」指数を高めることです。「夢」指数とはわたしたちのつくった言葉で、「DQ=Dream Quotient」と名づけています。DQは、「夢」を具体的な目標に置き換え、その実現に向かって課題をクリアしていく能力のことです。
わたしたちは、DQを高めるためには三つの「Q=Quotient」が大切だと考えています。
一つ目は「EQ=Emotional Quotient=こころの広さの指数」。「夢」は実社会のなかで叶えるものです。「夢」指数を高めるために、人間関係を築く力や思いやりの心を養うこと、社会の常識や正しい生活習慣を身につけ、自分の感情や行動をコントロールする力を養うことが大切です。このような能力は、一般的に「EQ」と呼ばれています。「EQ」の考え方は近年世界に広く受け入れられ、学校や企業など多方面で重視されるようになってきています。
二つ目は「SQ=Spiritual Quotient=自分を正しく自覚する指数」。自身の実力や価値を自覚する能力のことです。自分について深く理解できれば、自分の「夢」を具体的な目標にすることができるようになります。自分はなぜ勉強しているのだろう? なぜこの学校で学んでいるのだろう? なぜ生きているのだろう?……など、「自分自身の『なぜ?』」という問いに答えを出せる人は、SQの高い人です。DQを高めるうえで、特に郁文館が重視する能力です。
三つ目は「IQ=Intelligence Quotient=知識を力にする指数」。ここでいうIQとは、知能テストの結果や偏差値のことではありません。自分の知能や知識を最大限に発揮して、何かに役立てる能力を意味します。この能力はEQとSQが高くなることと並行して伸びていきます。だから、自分の努力次第でIQはいくらでも高くすることができるのです。
EQ・SQ・IQを向上させることによってDQ(夢指数)が高まる。わたしたちはそう考え、「三つのQ」の向上をめざす取り組みを行っています。以下はその取り組みの例です。
★基本的生活習慣・仲間づくりを学ぶ中1夢合宿
中学1年生の夢合宿の大きな目標は、生活習慣の確立と親離れ、仲間づくりです。6〜7人部屋に分かれて共同生活に臨みます。ふとんの上げ下ろしや掃除、洗濯など生活に関することすべてを自分たちでやります。シーツの敷き方なども厳しく指導します。ふだんはお母さんにやってもらっていることも、ここでは自分たちでやらなくてはいけないし、責任も班単位。そうすると初日からケンカが起きます。相手を知り、仲良くなるまでにはケンカも起こるものです。
なかにはホームシックにかかって泣き出したりする子もいます。家庭でも心配しています。だから合宿中の様子は毎日保護者専用HPでお知らせします。学年が進むと保護者の皆さんもだんだん見なくなりますけれど(笑)。
夢合宿では「アドベンチャープログラム」というものがあります。これは「一人ではとうていできないもの・こと」がキーワード。中1はたとえば「ラインナップ」というプログラムをやります。1本の幅の狭い板に生徒が10人ずつ並んで立ち、誕生月の順に並び直すというもの。板から落ちてはいけないこと、言葉をしゃべってはいけないことがルールです。みんな夢中になってボディーランゲージを始めます。できるまでに2時間以上かかりますよ。で、しまいにケンカです(笑)。それでも生徒たちはギブアップしません。
こうした活動をするうちに、自然にリーダーやサブリーダーが出てくるんです。そして、合宿が終わるころにはみんなで達成感を共有し、仲間になっている。学校に帰って委員会や係を決めようとすると、たいてい立候補で決定していきます。
★夢達人ライヴのねらい
夢達人ライヴは月2〜3回のペースで開催しています。全学年希望者対象に放課後の4時から視聴覚室で。ここには最大150人ほど入りますが、いっぱいになることもあるし、30人程度のこともある。中1は希望者が毎回とても多く、積極的です。
スタートから現在までの2年半で、41人のゲストを招きました。有名・無名を問わずいろいろな方に来てもらっています。最近ではテレビプロデューサーで演出家のテリー伊藤さん、日本テレビ系番組「笑点」で活躍中の落語家・林屋たい平さん、フォークデュオ「ゆず」の北川悠仁さんなど。人選はわたしたち夢プロジェクト推進部でやっています。何回もアポイントメントを取り、やっとOKを取りつけることもあるのですよ。
夢達人ライヴは保護者も関心が高く、ゲストとして保護者から推薦をもらうこともあります。保護者もライヴを聴くことができますが、それには自分の子どもも出席すること、家でそのライヴについて話し合うことという約束事があります。
ゲストには自分の仕事をテーマに語ってもらいます。やりがいや、どうやって自分の夢を実現できたかなど。終了後、生徒にはアンケートで感想を尋ねます。毎回ほぼ全員から満足した、勇気をもらった、やる気が出てきたといった感想が返ってきます。
なぜこのライヴが希望者対象で、放課後なのか。保護者からは全員強制にしてほしいと要望が来ます。でも、わたしたちはあえて強制しません。それは生徒の「一歩」を重んじているから。生徒には自分の意志で講師を選び、自分の意志で来てほしい。受け身になってほしくないのです。もちろん担任は事前に講師について紹介したりして、生徒たちの背中を押します。友だちに誘われてという生徒もいます。わたしたちはそれでいいと考えます。
★夢手帳・夢カウンセリング
夢カウンセリングとは学期ごとに1回行われるもので、担任と生徒が1対1で「夢」について話し合います。はじめのうち生徒の「夢」はコロコロと変わりますが、担任はそれを大事にして、すべて受容します。そして、その生徒がどういう方面に興味があるのか、どういうことに価値を見出そうとしているのかを、共に探っていきます。たとえば医者になりたいと言ってきたとしたら、どうして医者なのかを話し合う。人の役に立ちたいのか、喜んでほしいのか。そうすると、人の役に立つ仕事はほかにもある。間口を広げて考えてみてはどうかと。…担任は生徒の成長や個性も考慮しながら、そういった話をしていきます。
生徒たちは、生徒手帳として「夢手帳」というものを持っています。ここには将来の夢やそれを選んだ理由、進路希望(大学・学部・専門学校など)、夢を実現するための目標などをえんぴつで書き入れます。そして夢カウンセリングではこの手帳を役立てています。
夢カウンセリングの経過は、すべての生徒についてコンピュータに記録しています。6年間通しで記録しているので、学年が進んで担任が変わってもそのまま指導を継続できます。
話は最初にもどりますが、DQ(夢指数)を高めるためには、EQ(人間関係を築く力・正しい生活習慣・自己コントロール)・SQ(自己理解)・IQ(知能・知識を実際に役立てる力)の「三つのQ」を向上させることが大切です。わたしたちの取り組みは、すべてここに向かっています。こうした活動を、今後さらに充実させていく予定です。
Copyright(C) 2008 中学受験の「スタディ」.All Right Reserved [運営・管理] 中学受験 対策研究所 株式会社バレクセル