中学受験スタディが特別取材した私立中学の特徴ある教育

Special Report - 共立女子中学校の美術教育

Get the Flash Player to see this player.

再生ボタンを押すと音声が出ますのでお気をつけください。

共立女子中学校の教育方針

PHOTO共立女子中学高等学校は、明治初期の1886年に共立女子職業学校として設立されました。設立に携わったのは、教育者で鳩山由紀夫首相の曾祖母にあたる鳩山春子ら34名。

「共立」の名は、この人々によって共同設立されたことに由来します。そのめざすところは女性の社会的自立。

今日では共立女子学園として、大学、短大、二つの高校および中学校、幼稚園に発展し、1万人もの学生・生徒たちが学んでいます。


共立女子中学高等学校は2006年に最新施設・設備の整った新校舎がすべて完成。同時に高校からの生徒募集を停止し、完全中高一貫校としてその建学の精神「女性の自立」にもとづく一貫教育を開始しました。

校訓に「誠実・勤勉・友愛」を掲げ、時代の進展に寄与する高い品格を備えた女性の育成を目標としています。

↑ このページのTOP

共立女子中学校の特色ある美術教育

今年で創立124年を迎えた共立女子中学高等学校。その伝統を支えているのは、一人ひとりの教員の熱意と創意によって行われる授業の質の高さです。では実際に、どのような授業が行われているのでしょう。

PHOTO今回は、独自の方針によって実践的な指導を行い、生徒の能力の向上に成果を上げている美術教育について紹介します。

美術は得意・不得意に分かれやすい教科のひとつ。中学に入ると、その差も大きくなってきます。

しかし、共立女子中学校の生徒たちは、一人ひとりが美術の授業を楽しみながら熱心に取り組み、完成度の高い作品をつくっています。


PHOTO取り組む課題も、「想定自画像」や「CGを使ったパズルゲームのデザイン」など、ユニークで魅力的なものが並びます。

そのねらいとは何でしょう。また、なぜすべての生徒が、一定のレベル以上の作品をつくれるようになるのでしょう。教科担当の先生とその授業を取材しました。


↑ このページのTOP

芸術科教諭 美術担当 上田 祥晴先生のお話

美術の指導のねらいは、まず「だれでもできるようにする」ことです。得手不得手を超え、だれもが基本の技術・知識をしっかりと身につけたうえで作品をつくれるようになること。そのために技術指導を徹底します。

もともと日本の美術教育は“教えないこと”が主流だったのですね。ただ自分の思うようにやりなさいと。でも、それでは生徒はどうやったらいいのかわからない。それで美術嫌いになってしまうこともあるのです。

たとえば算数や国語は、一斉に九九を覚えたり、漢字や言葉の意味を学んだりしますね。これはすべての生徒が身につけるべき基礎基本です。

PHOTO美術にも当然そうした基礎基本があるわけです。それをまず画一的に、つまりすべての生徒に確実に教えることが大切です。

絵画であれば鉛筆の持ち方、絵筆の使い方、構図の取り方、色の塗り方・・・というように、取り組む課題に応じて、基礎基本を具体的に教えていきます。

常にこころがけているのは、教員による実演です。絵を仕上げるまでの手順そのままに、毎時間実演してみせます。


PHOTO中学では、「写実的にとらえ、表現すること」が大きな学習目標です。小学校までの、輪郭を描き色を塗るという、平面的な塗り絵からの卒業ですね。

そのために中1からグリザイユという、西洋画の古典技法を指導しています。

これは明暗だけで描く技法で、写実的に表現するための大切な基本です。対象物を線でとらえるのではなく、明暗でとらえる。それによって、だれもが立体的・写実的に表現できることを教えます。


PHOTO基礎基本が身につくと、生徒たちはだんだん“自分らしさ”を出せるようになります。そこで、基礎基本の技術を用いて“何を描くか・つくるか”が重要になります。美術科では中高を通して“自分を見つめる”ことを大きなテーマとしています。

中1は「頭蓋骨のある静物画」から入り、塑造演習として自刻像の制作、中2では「想定自画像」というように進みます。こうした過程で人間としての自分について、骨格やこころの風景を深く見つめていきます。


PHOTO一方で、現代はコンピュータを使った表現活動も盛んに行われていることから、CGの演習も積極的に取り入れています。

また、すぐ近所の東京国立近代美術館に行って多くの芸術作品に触れ、感想を文章にまとめます。

こうした文章化の作業も、鑑賞力を高めるだけでなく、自らの造形力の向上に結びついていきます。


生徒たちの作品は年々レベルが上がっています。また、いつも感動させられるのは、生徒の力は未知数であり、取り組む課題によってあるとき急に伸び、眠っていた力を発揮するということです。

だから得手不得手のレッテル貼りは禁物。いい作品をつくったときは、そっと背中を押し、さらに自分を伸ばすよう促します。

近年では美大や一般大学の美術コースへの志望者も増えており、例年芸大などへの進学者が出ています。そこで、今後は高校で美大受験に対応する授業も導入し、もっと積極的に指導していく予定です。


↑ このページのTOP

中学2年生の授業 「想定自画像」を描く

PHOTO美術室では生徒たちがイーゼルに絵を掛け、パステル絵の具を使って筆を動かしています。普通の中学校では見られない本格的な美術の授業風景です。

取り組んでいるのは単なる「自画像」ではなく、「想定自画像」という不思議な課題。

それは、まず自分のこころの中のイメージを描き、それを背景として自画像を描いていくというもの。


PHOTO生徒たちは事前にワークシートを用いて自分を振り返り、考えたことを記しておきます。それをもとにして“心象風景”を描き、さらに鏡を見ながら自分の顔を描いていきます。

授業は仕上げの段階に入っていました。先生は効果的な色づかいについて、黒板に掲示してある自画像の見本に色を塗ってみせながら説明します。

生徒たちは真剣そのものの表情で見入り、待ちきれないように自分の絵に向かいます。


PHOTOその後、先生は生徒をまわって具体的にアドバイス。そしてみんなに「最後にサインを入れよう。ちょっと濃い目の色を選んで、はっきりとね」と呼びかけました。

生徒の作品はどれも独創的で豊かな表現力が伝わってきます。紫色に塗られた顔、黄色い顔、オレンジ、青、緑・・・実に多様です。


PHOTO背景も、鎖が描かれていたり、階段のようなものがうねるように描かれていたり、または太陽のようなもの、大きな目玉、雲、光のような抽象的な模様、動物、花・・・。自分のこころ模様を一生懸命に見つめた結果、オリジナルでシュールな表現が生まれました。

また、古典技法にもとづいて、初めに灰色を基調とする明暗によって立体的に形を表し、その上に色を重ねていくことで、重厚で写実的な絵に仕上がっています。


絵の裏には作品の題名、解説や感想を書き、さらにワークシートを貼付して完成です。

生徒たちにとって、確かな達成感を得られる授業であることがうかがえました。また、こころの成長という目に見えないものも、こうして作品がはっきりと示してくれているように思えました。


↑ このページのTOP

中学3年生の授業 CG演習・パズルゲームのデザイン

PHOTO授業はコンピュータ室で行われます。

黒板に設置されているスクリーンに先生のパソコンの画面が映し出され、操作法などを実演してみせますが、生徒はすでに1年生のときからCGを学んでおり、基本的な操作はマスターしています。

授業には情報科の実習助手が1名つき、美術の先生と手分けして個別にパソコンの操作を教えます。


PHOTO課題はパズルゲームのデザイン。パズルの1コマのデザインを考えます。

先生は「小さなコマのデザインだから、それを並べたとき全体でどう見えるか、色のコントラストなどを考えていくことが大切だよ」とポイントをアドバイスします。

生徒は升目の入った用紙に下書きをしてあるので、今日の授業はそれにもとづいて画面上に描いていきます。生徒によっては何点も下書きをし、丁寧に彩色してあるものも。


PHOTOみんな初めは画面上でいろいろと模索しているようだったのが、だんだん形が見えてきました。

ネコ、松の木、ハート、扁形動物のプラナリア、ピンクのグラデーションで彩られた花模様・・・思い思いの楽しいデザイン。

みんな夢中で、途中で飽きてしまうような生徒は一人もいません。あっという間の50分授業でした。


先生は次回の授業を予告します。「今日描いたデザインの修正を次の授業までに考えておき、続きをつくりましょう」

これまでにつくられた生徒の作品を見せてもらうと、デザイン性が高くおもしろいものばかり。中にはそのまま商品化できるのではと思われるようなものもありました。

今回の授業でも、どんなデザインに仕上がるのか、大いに期待されます。

↑ このページのTOP


↑ このページのTOP


サイト内検索

powered by Yahoo! JAPAN