三輪田学園の「読書の時間」
=取材報告=
中学1年生の「読書の時間」を取材しました
2学期が始まった9月、中学1年生の「読書の時間」を取材しました。場所は図書室。生徒たちは細長い机に並んで座り、一斉に本を読んでいます。おしゃべりをする人はだれもおらず、しんとしたなかで、それぞれ自分の選んだ本に向かっていました。なかには本を読み終え、読書ノートに熱心に書き込んでいる生徒もいます。

「次郎物語」「車輪の下」「ジェーン・エア」……、「読書の時間」によって、おそらく自分からは手にとることがないような本に出会うことができる。それがこの時間の大きな意味の一つといえるでしょう。すでに1学期を経た生徒たちは、読書が“板についた”ようすで、それらの本を手にしていました。
場所を教室から図書室に移すことにも、大切な意味がありそうです。広い空間のなかで、4万五千冊の蔵書に囲まれながら過ごすことで、自然と心が落ち着き、気持ちも日常から離れ、物語の世界へと身をゆだねることができるはずです。そうした時間の積み重ねによって、心が豊かに耕されていくことでしょう。

「『一夜貸し』という本の貸し出し制度があって、読書の時間に読んだ本をそのまま借りることができるんですよ。ほかの生徒も同じ本を読んでいるかもしれないので、一日だけの貸し出しなのです」図書室に案内してくれた教頭・望月 道子先生が話してくれました。「読書の時間が終わると、一夜貸しを申し込む生徒がずらっと並びます。そうするとね、はじめはそれほど本が好きでなかった生徒も、つられて並んじゃう(笑)。そうやって自分でも気がつかないうちに、読書好きになっちゃうんです」
クラスの仲間とともに本を読むことで、読書が自然に習慣となる。そして、教科と結びついた体系的な読書指導は、学校生活全体へと波及していくのではないでしょうか。「誠実で、真面目に努力する」――そうした三輪田学園の校風に、読書指導が深くかかわっている。「読書の時間」を取材して、そんな印象を強くしました。
三輪田学園校長 西 惇先生のお話
「読書の時間」は、大きく分けて三つの目的があります。一つは、本を読んでじっくり考えること、感じること。これはすべての学習の基本です。主人公の生き方や、社会について考えたり感じたりしながら、学習の基本も身につけていくことが、この時間の大きなねらいです。
二つ目の目的として、中学1年生は自分を見つめる目を養うこと。本は自分を映す鏡です。主人公のことを考えながら、実は自分のことを考えているのです。ちょうど思春期の入り口に当たる時期に、自分をじっくりと見つめることはとても大切です。一方、中学3年生は平和、福祉、環境などについて考え、社会全体へと視野を広げることがねらいです。その意味で読書の時間は社会科や道徳の時間と関連しています。
三つ目の目的は、書くということです。三輪田学園では書かせる指導が多く、読書の時間も読書ノートを重視しています。書くことを通して、自分はどう考えるのか、何を感じたのか、ひいては社会のなかでどう生きるべきなのか、どう生きたいのか、自身と対話することができる。それが人生や進路について自主的に考えるための素地となります。
読書の時間の仕上げとして、中学3年生は卒論に取り組みます。社会と自分とのかかわりを大きなテーマに、400字詰原稿用紙で4〜5枚程度書くことになります。さらに、最後のまとめとして3学期の道徳の時間に学年全員が集まり、クラスの代表者が自分の卒論についてスピーチします。
学校説明会では、「読書の時間」についてくわしく説明しています。そのせいか、はじめから本好きな子どもが三輪田学園を志望する傾向にあります。だからといって、生徒に読書の負担を大きくすることはありません。「読書習慣は人生の宝」――わたしたしはいつもそれを胸に置いて、読書指導を行っています。