三輪田学園中学校 読書指導の総仕上げ 〜中学3年生の卒業論文発表会〜
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三輪田学園中学校 読書指導の総仕上げ 〜中学3年生の卒業論文発表会〜
特色ある読書指導を行っている三輪田学園では、「読書の時間」の総仕上げとして中学3年生が卒業論文に臨みます。
■三輪田学園の読書指導とは?
中学1年生は国語科(週5時間)の授業のなかで、中学3年生は社会科(公民:週4時間)の授業のなかで、
それぞれ1時間を「読書の時間」に当てています。
教科や道徳と関連させながら体系的に指導していることが大きな特色です。本は課題図書のなかから選んで読みます。
課題図書は道徳教育の観点も入れながら、先生たちが話し合って選定しています。
前回の特集「三輪田学園の読書の時間」はこちらになります。
中学2年生は教科の授業や道徳の時間、行事において行われる
講演会等を通して、感想文や調べ学習のレポート作成など文章指導に
重点を置き、3年生で行われる卒論作成へとつなげていきます。
卒論はこれまで積み上げてきた読書経験を振り返り、各自がテーマを
決めてじっくりと研究するというもの。
3年間の総仕上げとして、また高校での学習の準備として、
大切な活動となっています。
卒論は3年生全員が取り組み、さらに各クラスの代表者による発表会が
3学期に行われます。
今回はその卒論発表会を取材しました。
■卒論作成のステップ―ワークシートで段階を踏みながら作成
卒論作成では、先生のきめ細かな指導と段階を踏んだ計画的な学習により、一人ひとりが課題とじっくり向き合いながら研究しています。
先生の手づくりのワークシートにより、だれもが確実に取り組めるしくみになっています。
生徒たちはこれまでの読書の蓄積をもとに、テーマ設定から調査方法、論文の組み立て方、執筆まで、
レポートの書き方の基本と実践をしっかりと学ぶことができます。
ここで卒論作成のステップを具体的にご紹介しましょう。
○1学期初め
「社会科読書」の年間の授業内容や卒論作成のスケジュールについて書かれたプリントを配布。課題図書も示します。
「課題図書のブロック」
1ブロック 思春期の心理・生き方を考える本
2ブロック 平和を考える本
3ブロック 自然や環境を考える本
4ブロック 人権思想を考える本
5ブロック 国際協力・ボランティアを考える本
以上の5ブロックについて、それぞれ課題図書があります。
各ブロックから1冊以上読み、感想文を書いて提出。「読書の時間」のなかで2学期半ばまでに計5冊以上読みます(夏休みの宿題も含む)。
○2学期後半
卒論作成に向けてワークシートにとりかかります。
「研究レポートの書き方」を示した数枚のワークシートに沿って取り組みが始まります。
シートには、テーマの設定から情報収集の方法、記録のとり方、
執筆など、レポート作成の手順がわかりやすく丁寧に示されています。
生徒はワークシートを使って、テーマ設定、調査、
資料カード作成に取り組みます。
資料カードは「引用カード」「要約・加工カード」「意見カード」
「結論カード」の4種類。
本で調べたり実施調査したりして得たことをもとにカードに記録していきます。
○3学期
ワークシート「レポートをまとめよう」にとりかかり、卒論を仕上げます。
2学期に作成した資料カードをもとに、最後のワークシートに沿っていよいよ執筆にかかります。
生徒の手元には2学期に自分で作成した資料カードが何枚もたまり、論述の材料はすっかりそろっています。
このカードを整理し、論文の構成(序論・本論・結論)を考え、それぞれの小項目を立てたうえで実際に書き始めます。
レポートの提出期限は2月。
○3学期末
クラスで卒論の発表会を開いたり回し読みしたりして、一人ひとりの努力の成果をみんなで確かめ合います。
そして、各クラス3人の代表者を決め、学年の発表会に臨みます。
発表会は卒業をひかえた2月、道徳の時間を利用して開かれます。
読書指導の総仕上げ 中学3年生の卒論発表会を取材しました
2月某日午後。今日は三輪田学園の中学3年生の卒業論文発表会が開かれます。
3年生がホールに集合し、すみやかに着席しました。
代表者が舞台に上がり、スクリーンに論文の目次を映し出しながら、発表を始めます。
どの生徒もはきはきとした話しぶりで、制限時間の3分間を有効に使って発表していました。
代表者のテーマから、生徒たちの高い意識と意欲が伝わってきます。
以下は今年の代表者の選んだテーマです。
「ハンセン病患者」
「女性差別」
「増加する少年犯罪とその対処法」
「介助犬」
「障害者とバリアフリー」
「フリーターとニート社会」
「戦犯」
「自閉症とは何なのか」
「神道について」
「バリアフリー」
「児童労働―フリー・ザ・チルドレン」
「従軍慰安婦」
どの発表者も、歴史的背景、過去と現在・日本と海外などの比較、データの提示、現状、課題、解決策などを筋道立てて述べています。
単なる感想文ではなく、自分の問題意識や意見を、客観的な論証によって述べるものである論文のレベルに達し、
その完成度も高いことがわかりました。
解決策についても、「自分にできること」という視点に立って考えており、論文の基本となる主体性がはっきりと伝わってきました。
時事問題を論述に取りこんでいるのも印象的でした。
たとえば「フリーターとニート社会」では派遣社員の問題点や雇用問題を取り上げたり、
「児童労働―フリー・ザ・チルドレン」ではフェアトレードを取り上げたりするなど、生きた課題を取り上げて考察しており、
現代社会への関心の高さがうかがえました。
充実した資料調査に加え、取材をしている生徒もいました。
「バリアフリー」をテーマとした生徒は、実際に車椅子に乗って学校を移動し、
課題点などを調べたうえで「車椅子を使う人の立場に立って考えること」
が大切であるという結論を導きました。
「児童労働―フリー・ザ・チルドレン」をテーマとした生徒は、
児童労働をさせて菓子を製造した国・企業からの商品の輸入について、
グリコや明治製菓など製菓会社に問い合わせて調査しました。
「従軍慰安婦」をテーマとした生徒は、お年寄りへの取材も行い、
結論として「慰安婦問題についてくわしく知ること」が大切であり、
「自分とは反対の意見にもしっかりと耳を傾けたい。この問題を次世代に伝えていきたい」と述べました。
発表を聞く生徒たちは、私語もなく最後まで熱心に耳を傾けていました。発表する側も聞く側も、
中学3年生としてだいぶ大人になっている様子です。
春が来れば三輪田の高校生になる生徒たち。その準備は学習面と心の成長の両面とも、しっかりとできているようです。
入試対策委員 吉田 珠美先生(社会科担当)のお話
中学3年生の卒論を始めて今年で3年目を迎えました。
これを始めたのは、「読書の時間」長い蓄積があるからです。
生徒たちは読書好きで、熱心にいろいろな本を読むのですが、
それだけで終わらせたくないなと。
生徒の感想文を読んでいて、もっと読みを深めさせられないかと
考えるようになったのです。
それと、他教科との関連も深めていきたい。そうした意図のもと、
社会科で卒論に取り組むことになりました。
自分でテーマを決め、調査し、考え、論理的に書くという活動のなかで、
一人ひとりが自身の読みを深めています。
他教科との関連についても、たとえば英語の授業でキング牧師について学んだ生徒が、社会科読書の課題図書から「キング牧師」を選び、
卒論では公民権運動をテーマとするなど、教科ごとの学びが生徒のなかで結びつくようになってきています。
三輪田学園では常に学びの系統化、総合化をめざしており、読書指導と卒論はその教育の一環として重要です。
この年頃の生徒は豊かな人間性をはぐくむうえで大事な時期を迎えています。
いろいろなことに自ら興味や疑問を抱き、抽象的な思考力も伸びる時期です。
社会問題についてまっすぐな気持ちで向き合うことができ、同時に自己の内側にまなざしが向く。
こうした年頃に社会に目を開かせ、自分と社会との関係を意識するための学びが大切です。
今後も読書指導や卒論などによってこのような学びを充実させていきたいですね。
中3社会科担当 山下 愛子先生のお話
読書指導では、本を読むことはすぐに成果や結果が出るものではないと、
生徒たちに度々話しています。
時間をかけて積み重ねていくことが大事だと。成果はそのあとに現れるもので、
それは時間がかかった分、豊かで持続的なのだと教えています。
そのことを自分で体験するためにも「読書の時間」があるのだといっていいでしょう。
卒論も同じことです。自分でテーマを見つけ、調べ、自分の考えを持つこと。
それが今すぐ役立つわけではありません。
しかし、この先大学生や社会人になってから必ず役立ちます。
そうした学びにも大きな価値があることを、生徒に自ら知ってほしいと考えます。
卒論指導では、生徒によってテーマが異なるし進度もそれぞれなので、一人ひとりに応じた指導をしていきます。
わたしたちは毎日のように生徒の相談にのったり、資料カードをチェックしたり。
教師は楽しんでやっていますよ。生徒はたいへんでしょうけれど(笑)。
読書指導の発展形として、高校では1年生の世界史の授業で調べ学習をしてレポート作成を行います。
2年生の社会では「映像」「読書」といった選択科目があり、それぞれ歴史の映像を見たり、読書したりしてレポートを作成します。
これからもいろいろな企画を考え、読書指導を発展させていきたいですね。
卒業論文の一例はこちらから見られます PDF(9.74MB)
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