中学受験スタディが特別取材した私立中学の特徴ある教育
昨年創設100周年を迎えた女子教育の伝統校・大妻学院。美しく緑豊かな多摩キャンパスでは、大妻多摩中学高等学校の生徒が大学生の先輩たちと同じ敷地内で学んでいます。
「夢は高遠に、実行は足もとから」
――創始者・大妻コタカが掲げたモットーを守り、学院では高い知性と豊かな情操を備えた心身ともに健やかな女性の育成に力を入れています。
大妻多摩中学高等学校の魅力の一つは、体験を重視した教育を行っていること。なかでも中学の理科の授業の多くは実験・観察にあてるなど、実証・実感をともなった学習を行っています。
そこで今回は、理科の実験を取材し、先生に話をうかがいました。
1学期中間試験を終えた6月、理科Iで行われた化学の実験を取材しました。
実験テーマは「酸素の性質を調べよう」。
生徒は白衣に着替え、4人ずつ9班に分かれて席に着きます。まず、先生のつくったプリントを黙読し、実験の手順を確認。
二酸化マンガンと過酸化水素水(オキシドール)を反応させて酸素を発生させ、それを試験管に集めて色やにおいを調べたり、火のついた線香を入れて反応を見たりなど、5つの実験を行って性質を調べます。
黙読後、先生が実際に器具を示しながら実験方法と注意点を説明しました。このとき全員が黒板前の実験台に集合。先生はゆっくり説明しますが、何度も繰りかえすことはしません。生徒の私語はなく、真剣に先生の手元を見ていました。
いよいよ実験開始。フラスコに二酸化マンガンを入れ、先生に教わったとおりのやり方で過酸化水素水を注意深く注ぎます。反応が起こり、酸素が発生。水を入れたたらいに試験管を入れ、水上置換法によって酸素を集めます。
はじめから上手に酸素を集めるのはちょっと難しいようです。何度かやり直しながら、4本分集めます。どの班も熱心に取り組んでおり、遊んだり騒いだりする生徒は一人もいません。
先生は生徒の実験のようすを見て回り、時々助言しますが、手助けはしません。生徒も先生に頼ることなく、自分たちでやっています。それが自然な姿として身についているようでした。
試験管に酸素を集めたら、次は酸素の性質を調べます。リトマス紙を近づけたり、石灰水を入れて振ったりなどの実験を行い、その結果を各自のプリントに記録しています。
終わりの5分で片付け・着替えを済ませました。先生の指示に従い、試験管を洗い、たらいの水を捨て、所定の場所に戻します。チャイムと同時に授業は終了しました。
生徒たちは進んで実験を行っていたのが印象的です。器具の扱いや後片付けなども慣れたようすで、すばやくやっていました。
授業後、先生にうかがってみると、「中学1年生の1学期前半は、器具の扱い方など実験の基本をしっかりと学びます。今回の実験はまだ3回目くらい。でも生徒たちは基本操作はできるようになっています」
中学1年生は理科I(化学・物理分野)・理科II(生物・地学分野)それぞれ週2時間ずつ、計4時間の授業となっていますが、そのほとんどが実験室で行われているとのこと。
「生徒にとって実験室は特別な場所ではありません。どの生徒も実験が好きで、自分からやりたがりますよ。次の授業は二酸化炭素の実験です。それが終わったところで、通常の教室でまとめをします。プリントに記録しておいた実験結果を確認しながらまとめる。このサイクルで授業を行っています」
どうりで生徒は慣れているはず。教室移動もスムーズで、授業が終わったらサッと実験室を後にしました。
実験や観察を多くすることの最大のねらいは、実感をともなった本当の理解と、科学への興味を育てることです。
理科は自分で体験しないとなかなか興味を持ちにくい教科です。
こういう教科に苦手意識を持ってほしくないし、楽しい実験をして理科への興味・関心をもってほしいという思いから、体験的学習を多くしています。
実験・観察のポイントは、生徒の身のまわりのものと結びつけること。理科の学習はわたしたちの暮らしや身近な自然現象に直結する内容を含んでいます。
たとえば高校1年生では酸と塩基の中和反応を学びますが、そのとき食べ物に含まれる酸の濃度を測る実験をします。生徒はグレープフルーツやレモンなど好きな果物を持ってきて測るんですよ。
本校は実験・観察をより充実させようと、去年できあがった新校舎では実験室を以前の3つから5つに増やしました。生物室と化学室が各2つ、物理室が1つあります。高校の選択科目では、グループごとの実験だけでなく個人単位での実験も行っています。
生徒たちは実験が大好きです。本校では全体の3分の1ほどが理科系への進学を希望します。女子校としては多いほうですね。
今、女子の理系志向が高まっているといわれていますが、私たちはその芽をもっと育てていきたいと考えています。そのために実験や観察がますます大事になりますね。