中学受験スタディが特別取材した私立中学の特徴ある教育
立教女学院は、アメリカ人プロテスタント宣教師・ウィリアムズによって、1877(明治10)年に創立。
以来キリスト教にもとづく女子教育を行う学校として、130余年にわたる伝統を築いてきました。
美しく緑豊かな久我山キャンパスにて、小学校・中学校・高校・短大がともに学んでいます。
立教女学院中学校・高等学校では、次の5つの教育目標を掲げています。
1.他者に奉仕できる人間になる
2.知的で品格のある人間になる
3.自由と規律を重んじる人間になる
4.世の中に流されない凛とした人間になる
5.平和をつくり出し、発信する人間になる
この教育目標は、学校のさまざまな活動のすべてに反映されています。では、どのような活動を行っているのでしょう。
朝の礼拝と授業の様子を取材するとともに、教頭の山岸悦子先生にお話をうかがいました。
聖マーガレット礼拝堂での礼拝のもようを取材しました。
礼拝堂は中世ヨーロッパ・ロマネスク様式の建築。
1932(昭和7)年に完成し、校舎とともに奇跡的に戦禍を免れました。
歴史を重ね、美しく格調高いたたずまいを見せています。
礼拝堂からパイプオルガンの響きが聞こえてきました。
その演奏に迎えられるように、ホームルームでの点呼を済ませた生徒たちがすみやかに礼拝堂に集まります。
私語は厳禁。声をあげる生徒はだれもいません。
8時15分、礼拝が始まりました。
全員で聖歌を合唱します。次に牧師による聖書の朗読と教話。
だれにもいつかは訪れる死について、そして生きることの意味について、牧師が静かに語りかけました。
「ひざまずいて祈りましょう」の声で全員がひざまずき、祈りを捧げます。聖歌を合唱し、最後に再びひざまずいて祈り、礼拝は終わりました。
生徒は終始静粛で、先生の誘導や注意はいっさいありません。礼拝らしいおごそかな空気に包まれていました。
わずか20分間、それは充実した豊かな時間でした。礼拝堂に身を置き、しばし日常から離れ、祈りの時を過ごすことで、自然に心が落ち着き、自分の内面に目が向きます。
こうした時間を毎朝、6年間経験することは、人間としての心の成長に、目に見えない大きな意味をもたらしてくれることでしょう。
大人になったとき、自分の受けた教育がどんなに豊かであったか、実感するのではないでしょうか。
卒業生が時々訪ねてきて、礼拝堂で一人祈りを捧げる姿が見られるといいます。
母校が心のよりどころとなる、どんなときも母校が変わらぬ顔で迎えてくれる・・・そんな温かみのある、そして時とともに歩み続ける学校、それが立教女学院なのだと感じました。
校庭に行ってみると、中学2年生の体育の授業が始まったところでした。生徒たちが軽快な音楽に合わせて、踊るように体操しています。
その名も立教体操。「ラジオ体操よりも今の子どもになじむものはないかと、体育科の教師が考案しました。
エアロビクスの動きを取り入れたもので、楽しく準備体操して体を温めます」と体育の先生。
常に時代に応じた教育を意識するという、立教学院の姿勢をかいまみる思いがします。
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中学2年生の聖書の授業を見学しました。
「日本のキリスト教史」として、日本に初めてキリスト教を伝えたカトリック宣教師、フランシスコ・ザビエルについて学んでいるところでした。
来年5月に実施される修学旅行は、長崎での平和学習なので、その事前学習も兼ねています。
宗教史の視点からも学習することで、キリスト教への興味や理解が広まりそうです。
生徒は先生のつくったプリントを読みながら、静かに学んでいました。
中学校の新校舎は2001年に完成。教室の壁面に大きなガラス窓を嵌め込み、廊下から室内が見えて開放的な印象です。
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理科室では高校2年生の理系コース、化学IIの授業が行われていました。
理系コースは学年1クラス。40名近い生徒が学んでいます。
先生が演示(教壇で実験をやって見せる)しながら、授業を進めていました。
生徒たちはそのようすを見守り、先生の質問には指名されなくても、あちこちで自分から答えています。
先ほどの中学生と比べ、高校2年生ともなるとだいぶ大人で、授業も自然体で受けているようす。
和気あいあいとした雰囲気のなかに、生徒の化学への興味が伝わってくる授業風景でした。
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明るい光の差し込む図書館では、ちょうど高校3年生の卒論の授業が行われていました。
すでに草稿を書き終え、先生にも見てもらっています。仕上げの段階を迎えて、今日はプレゼンテーションの準備をしているところ。
卒論作成の山場を越え、ちょっとゆとりのある雰囲気で授業は進められていました。
図書館には司書教諭もいるので、いつでも個別に相談可能。インターネットに接続したパソコンも自由に使えます。
<朝の礼拝について>
本校が最も大切にしていることの一つに、朝の礼拝があります。
授業前の毎朝20分、中学校・高校それぞれ全校生徒が集い、行われます。
礼拝によって、人は目に見えないものによって生かされ、支えられていることを感じてほしいと思います。
今、自己肯定感を持てない子どもが増えていると言われますが、そうした時代だからこそ、宗教的な支えが必要ではないでしょうか。
神は一人ひとりを守り、すべての人のそのままの価値を認めています。毎朝の牧師からのメッセージの根本には、そのことが込められているのです。
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<土曜集会について>
30年続けてきた土曜集会プログラムも、人間性を豊かに養うキリスト教教育の柱となっています。
年に10回開催し、内容は演劇鑑賞や古典芸能鑑賞、講演会など多彩です。
たとえば“諸宗教に学ぶ”というテーマで、永平寺の僧侶を招いて講演会を開いたり、東京のイスラム教モスクや築地の聖ルカ国際病院礼拝堂を訪問したりしています。
土曜集会ではイースター礼拝やニューイヤーコンサートなどの恒例行事と並んで、常に新しい現代的な諸問題・話題を取り入れた講演会や活動も行うようにしています。
この10月の土曜集会は、小児がんの子どもたちとその治療に取り組む聖路加病院小児科医師・細谷亮太さんの活動を記録したドキュメンタリー映画「風のかたち」を鑑賞しました。
11月の土曜集会は、細谷医師と「風のかたち」の監督・伊勢真一さんを招いて対談をしてもらいます。
生徒は土曜集会ノートに感想を書き、担任の先生に提出します。卒業時には生徒一人ひとりの手元に、中高6年間の土曜集会の記録が残されるわけです。生徒たちは熱心に記録していますよ。
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<ARE学習について>
ARE学習も、本校の教育の特色の一つです。
Ask(課題発見)、Research(徹底的な調査)、Express(発表)の三つの力の育成をめざしています。
文科省の総合的な学習の時間が施行された2002年に先立つ2000年より、ARE学習の時間を週1時間、導入しました。
中学校では環境や平和・福祉など学年ごとのテーマによって、調査やレポート作成、発表を行います。
この学習は最終的に高校での卒業論文に発展します。卒論は自由選択ですが、立教大学への推薦希望者は必修選択となります。
優秀卒論は文集にまとめます。
2009年度の文集に掲載された卒論の一部を紹介しましょう。
「宝塚歌劇『エル・アルコン-鷹-』についての考察」
「現代日本の輸送事情におけるプラットフォームの高低」
「1968年に学生運動が世界の資本主義国で起こった理由」
「武士道の変遷」
「自己満足な美容整形」
後輩たちは学校図書館で先輩の文集を見て大いに刺激を受けながら、自分のテーマを探していますよ。
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<ボランティア活動について>
ボランティア活動も、学校創立以来100年以上の歴史をもつ取り組みです。
中学校では有志によるボランティアグループが、近隣の修道院の清掃、高齢者施設でのケアサポート、老人ホームへのボランティアキャンプなどを行っています。
1995年に起きた阪神・淡路大震災では、高校3年生40名が交代で芦屋の聖公会の教会に寝泊まりし、トイレ清掃や水汲み、炊き出しなどの支援をしました。
こうしたボランティアは代々先輩から後輩に受け継がれ、生徒による自主的な活動となっています。
ボランティア活動は楽しいものです。人を助け、感謝される経験は中高生にとって大切です。自分の価値に気づき、自信を深めるいい機会にもなりますね。
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<教育カリキュラムについて>
新しい教育カリキュラムについてお話ししましょう。
本校では生徒の多くが立教大学へ推薦入学しますが、一方で他大学への進学を希望する生徒も3分の1くらいいます。そうした一人ひとりの進路希望に応えるために、2006年より高校でコース制のカリキュラムをスタートさせました。
高2・高3は次の三つのコースに分かれます。
●理系コース:理系進学希望者・立教大学理学部推薦希望者を含む。
●文Iコース:立教大学を除く文系進学希望者。
●文IIコース:立教大学推薦希望者・芸術系大学進学希望者等。
理系コースは医学・薬学・工学系にも対応しており、力を入れています。
文科省の理数教育支援事業・SSP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)に参加し、お茶の水女子大学や東京電機大学などと連携して研究室での実験を体験したり、先生を招いて講演をしてもらったり。
また通常の授業でも実験を多く行うなど、いろいろな取り組みを行っています。
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礼拝、土曜プログラム、ARE学習、そしてコース制カリキュラム・・・本校の取り組みのすべてが教育目標のもとで一つにつながり、互いに深く関連し合っています。
そしてどんな教育に取り組もうと、そのよりどころはキリスト教です。
その意味で、わたしたちはいつの時代もブレることはありません。
本校はこれからも伝統として守り続けていく教育と、時代を先取りする新しい教育の両方を行っていきます。