中学受験スタディが特別取材した私立中学の特徴ある教育

上野学園は、明治の教育者・石橋蔵五郎によって、新しい女子教育をめざして1904(明治37)年に創立されました。
建学の精神は「自覚」。
当時の主流だった良妻賢母教育にとらわれず、自らの意志と豊かな感性を備えた「自覚」ある人間の育成を理念としました。
戦後の1947(昭和22)年に上野学園中学校を、翌年に高等学校を設置。
2007年(平成19)年に男女共学制となり、音楽大学である上野学園大学・短期大学と並んで、豊かな人間性の育成に取り組んでいます。
上野学園中学校では、2007(平成19)年の共学化と同時に、従来の入試に加え新しい入試をスタートさせました。
それは「公立中高一貫校受験対応」入試(S日程入試)です。その名の示すとおり、公立中高一貫校の適性検査と同様の方式で入試を行うもの。
私立ではこうした入試を実施している学校は少なく、受験生の注目を集めています。
「公立中高一貫校受験対応」入試とは具体的にどのようなものでしょう。
そして、実際にこの入試によって上野学園に入学した生徒の様子は?
――上野学園中学校を取材しました。
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■2012年(平成23)年度入試について
| ●公立中高一貫校受験対応(S日程)入試 | |
|---|---|
| S日程 入試日 | 2月1日(水曜)午後 |
| 試験 | 適性検査(40分/100点)・面接(受験生のみ) |
| 適性検査の内容 | 4科(国語・算数・社会・理科)の各分野から バランスよく出題する総合問題。 |
| 受験料 | 9,000円 |
| ●S日程以外の入試 | |
| A日程 入試日 | 2月1日(水曜)午前 |
| B日程 入試日 | 2月1日(水曜)午後 |
| 試験 | A日程・B日程ともに 2科(国語、算数)または4科(国語、算数、社会・理科) 各50分/100点(社・理はあわせて50分/100点)、面接(受験生のみ) |
| 受験料 | 19,000円 |
| 【定員】 | |
| S日程・A日程・B日程あわせて男女35名。 | |


公立中高一貫校受験対応入試に特待生として合格し、現在上野学園中学校で学んでいる中学2年生(女子)のお話を紹介しましょう。
この入試を受けたきっかけは、塾の先生に進められたからです。公立中高一貫校の入試の練習として受けてみてはと。実際に受けてみて…、よくできました、たぶん(笑)。
第一志望校は受からなかったけれど、もともと地元の公立の中学校に進むつもりはなくて、この学校にしようと思いました。両親も私が決めていいと言いました。

学校は楽しいです。部活はバトン部で、週4日練習してます。舞台で発表するのは緊張するけれど、とても楽しい。
新入生歓迎会、体育会、文化祭、予餞会と発表する機会が多くて、けっこう忙しいです。
幼稚園から習っているバレエも続けてます。

学校では中学3年間で一つの楽器を習うことになっていて、私はサックスを選びました。理由はカッコよさそうだったから(笑)。
2年生は楽器ごとのアンサンブルを演奏してみんなの前で発表することになっているので、総合学習の時間に練習してます。
やってみると難しいけれど、楽器演奏は貴重な経験だなと思います。

好きな教科は…理科。国語よりは好きです(笑)。歴史とか国語とか小テストがあるから、電車のなかで勉強します。通学1時間かかるので、ちょうどいいです。
これから一番がんばりたいのは勉強。英語がんばりたいです。バトンもずっと続けたい。
将来は、なにかバレエに関係した仕事に就きたいです。

まず、本校の公立中高一貫校受験対応入試のポイントをお話ししましょう。
4科(国語・算数・社会・理科)の総合問題となっており、いずれの分野も記述式問題です。環境や平和、食糧といった現代社会の課題を大きなテーマとして出題することも、公立中高一貫校の適性検査と同様です。
こうしたテーマのもと、小学校で学んだ4科の基礎知識や自分の経験をもとに、自ら考える問題となります。それと、地域の特色も話題に入れています。
本校は創立以来、上野に根を下ろしていることから、たとえば、西郷隆盛の像が白く変色してしまったのはなぜか。答えは酸性雨ですね。上野界隈を循環する「めぐりんバス」も登場したことがあります。

面接では受験生の人柄や本校への適性を見ます。
公立中高一貫校受験対応入試を受けるお子さんは、やはり公立が第一志望であり、なかには私立のことをよく知らない受験生もいるのですね。
そこで一人ひとりと直接会って、意思を聞いたり、髪型や服装、言葉づかいなど基本的なことを確認したりしています。

入試の準備ですが、本校用に特別に勉強する必要はありません。公立中高一貫校の適性検査の準備だけで十分対応できます。公立を受ける前の腕試しとして受けてみてほしいと思います。
公立が不合格になり、本校を選ぶお子さんも徐々に増える傾向にあります。その背景には、せっかく中学受験の準備を一生懸命やってきたのだから、努力を無駄にしたくないという思いが本人にもご家庭にもあるようです。
特に女子の場合は、地元の公立中学に進むことをためらいます。初めから地元校に入るつもりだった友だちといっしょの学校になることに、少し抵抗感があるのですね。
公立中高一貫校受験対応入試によって本校に進学した生徒の様子を見ると、みんな生き生きと意欲的に学んでいます。いろいろなことに興味をもち、学習や部活、習い事などに積極的ですね。リーダーシップもあり、周囲にいい影響を与えています。特待生として合格した生徒も多くいます。

次に、上野学園の特色をお話ししましょう。
本校は少人数教育を行っている学校です。1クラスは20名程度で1学年2クラス。きめ細かい学習指導が可能で、つまずきの起きやすい数学と英語は2クラスをさらに3分割した習熟度別授業で、しっかりと教えます。
またこの2教科について、それぞれ成績上位者を対象とした補習も、週1回放課後に行います。
このほか、朝学習や小テスト、長期休暇中の補習なども行い、一人ひとりに応じて指導しています。
本校の特色ある授業の一つとして、中学校では楽器の体験学習があります。
フルート、クラリネット、サクソフォン、トランペット、ヴィオラ・ダ・ガンバ、リコーダーの中から一つ選び、3年間学びます。音楽大学の系列のよさを生かし、上野学園大学の先生に指導してもらっています。1年生は個人演奏、2年生は同じ楽器でのアンサンブル、3年生は異なる楽器どうしのアンサンブルと、学年別の目標で無理なく学びます。アンサンブルでは互いの音を聞き合う、呼吸を合わせるなど、協力する心を楽しみながら体験的にはぐくむという面からも、意義ある教育となっています。

中学・高校時代は、ぐんと伸びる時期です。その意味で中学受験の失敗は決定的な問題ではありません。
2007年度より始まった公立中高一貫校受験対応入試で本校に来た生徒も、現在高校生になりました。そのなかには、外部模試で都立上位校と同レベルの結果を得ている生徒もいます。
生徒一人ひとりの将来の進路の第一希望をかなえる指導をすること、それが小規模校としての本校の使命と考えています。その一環で受験指導も行うし、また楽器に触れ情操を養ったり、部活をがんばったりと、いろいろな機会を生徒に与えていきたい。
どんな進路でも、自分のよさややりたいことを生かした選択であるよう、画一的ではなく多様な価値観をもって教育していきます。