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スクール特集

中学受験スタディが特別取材した私立中学の特徴ある教育

Special Report - 関西大倉が考える進路指導とは~進路指導部部長 郷地倫秀先生のお話

生徒が主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」

写真創立110余年の歴史を誇る関西大倉中学校。明治の創立以来、徳育を土台として、常に新しい時代を生きる人の育成に力を注いできました。

現在関西大倉中学校では、21世紀を生きる人間に求められる資質・能力を育成するために、新しい教育に取り組んでいます。
その一つが、生徒が中心となって学ぶ「アクティブ・ラーニング」です。生徒が主体的に学び、友だちと協力し合って課題に取り組む「アクティブ・ラーニング」を、各教科の授業やキャリア教育に積極的に取り入れています。

関西大倉中学校の新しい学びについて、お話をうかがいました。

 

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関西大倉中学校 入試運営部長 北 英太郎先生のお話

教師が教え込まない授業

写真現在、本校では各教科でアクティブ・ラーニングの取り組みが始まり、教師もそのための研修などを積極的に受けています。中学では大学教員を招いて、アクティブ・ラーニングの模擬授業も行いました。本校教員が見学し、自分たちがどのように実践するか、大学教員も交えて意見を交換しました。

今、生徒主体の学びが強く求められています。それは教師が教え込むものではありません。教師はサポート役です。生徒が自分で獲得するのをそばで待ち、サポートする。生徒が自分で考え、気づく機会を大切にします。

社会では、受け身で勉強してきた生徒ではなく、自ら学ぶ姿勢や実践力のある生徒が求められています。そういう生徒が大学に入ってから伸びるからです。大学も同様です。本校ではそれに対応できる力を生徒に養うことをめざします。

ICTも導入

写真今後、本校ではアクティブ・ラーニングを取り入れた授業が増えていくでしょう。そのための施設環境として、ICTも導入していきます。現在、一部の教室でプロジェクターを設置し、5教科で活用しています。プリントや教科書などをプロジェクターに映したり実験の様子を動画で見せることで、生徒が理解しやすくなるし、授業の効率も上がります。

また、キャリア教育にもプロジェクト・ベースト・ラーニングを取り入れていきます。現在、中学3年生で職場体験を行っていますが、この次の段階の学びとして、今年から新たに、高校1年生でプロジェクト・ベースト・ラーニングを取り入れたグループでの企業研究に取り組んでいます。

多くの企業に協力してもらい、生徒たちは1年間かけてじっくりと研究します。また、教科との関連も意識し、本校ならではの中身の充実したキャリア教育を行っていきます。

では、実際に授業やキャリア教育でどのようにアクティブ・ラーニングを行っているのか、次に担当教員がお話しします。


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関西大倉中学校・高等学校 数学科 郷地 倫秀先生のお話

数学の授業でのアクティブ・ラーニング

写真現在、高校1年生を中心に、5教科の授業でアクティブ・ラーニングを取り入れています。
私の担当する数学を例にお話ししましょう。授業では生徒が各自で課題を解いたり、友だち同士で解き方について話し合ったりする時間を多く配分します。私の説明は簡潔にまとめます。生徒が自分のテンポで、自ら考えることを重視する授業です。

数学では「わからないときにどうするか」が大切です。教科書を振り返るのもいい、ノートを見直してもいい。どうしたら課題を解決できるか、各自で考えて解いていきます。
課題の解き方に早く気づく生徒もいれば、ゆっくりの生徒もいる。テンポはそれぞれ異なります。この“違い”を活かして、生徒同士の教え合いも行います。

 

写真生徒同士の教え合いをすると、理解のゆっくりな生徒にテンポを合わせなくてはいけないのかと思われるかもしれません。しかし、「わかった」と思っている生徒は、本当に理解できているでしょうか。友だちに教えようとすると、言葉できちんと説明できない部分が出てきます。言葉で論理的に説明できて、はじめて「わかった」ことになる。友だちに教えてみると、わかったつもりでも、まだわかっていなかった部分があることに気づきます。

その間、私は生徒のサポート役にまわります。一人ひとりの様子を見て、困っている生徒には助け船を出します。ただし、すぐに助けるのではありません。まずは生徒自身に考えさせます。

アクティブ・ラーニングによって授業進度が早まる

写真初めはこうした授業でほんとうに学習効果が出るだろうかと思っていました。しかし、実際にやってみると、教師による一斉授業よりも生徒の理解が深まることがわかりました。

それはなぜか。生徒が主役の授業だからです。ふつうの授業では、最初から最後まで教師が説明します。教師が中心となる授業で、ペースも教師が決め、教え方も一方的になってしまいます。
生徒にとっていちばん分かりやすい教え方をしていると思っても、実はそうではない。生徒を見ていると、自分のやり方で問題を考えている。友だちとの教え合いも効果があります。


生徒自身がよく考えることで、理解が深まる。これまではそのための時間を十分に確保できていなかったと思います。アクティブ・ラーニングによって、結果的に例年より授業の進度が速くなっています。これは私たち教師にとっても発見です。

小テストと授業の振り返りを確実に行う

こうした授業を行うには、教材の工夫が必要です。私は授業のはじめに、まず今日の目標をしっかりと生徒に示します。そのうえで、目標に応じた演習問題のプリントを使用します。生徒が自ら取り組みやすいよう、易しい問題から徐々にステップアップするようにつくります。つねに目の前の生徒の状況をよくつかみ、柔軟に対応していきます。

毎授業小テストも行います。答え合わせは生徒が自分で行います。間違ったところは直す。わからなければ教科書やノートを調べる。授業時とは別に終礼で行っている小テストは追試も行い、個別指導もします。

生徒が授業での学びを振り返ることは、自ら学ぶ姿勢を醸成するためには大切です。そこで、振り返りのチェックリストを用意しています。そこには「教える」「質問する」「チームに協力する」「傾聴する」「対話する」などの態度面と、「要素、有限集合、無限集合、部分集合を説明できる」などの学習面に分けてあるので、自分の行動や学びについて具体的に確認し、次に活かせるようにしています。

「集団の価値」を学びに活かす

写真今、なぜこうしたアクティブ・ラーニングが大事なのでしょう。
現代はインターネットでも授業が受けられます。しかも世界中の授業が受けられます。予備校の授業も受けられる。いつでも、どこでも個人で授業を受けることができる時代です。

そうした状況のなか、学校で学ぶことの意味とは何でしょうか。私たちは、それは「友だちがいる」ことだと考えます。一人で学ぶのではなく、友だちと協力し、刺激しながらともに学ぶことができる。そうした「集団の価値」という、すばらしいものを学校は持っています。

自分一人では学びに限界があります。数学だけでなくどの教科も、友だちの数だけ考え方、解き方がある。友だちが間違えたら、自分の間違いにも気づきます。みんなで共有することで、一人では学べない、広く深い学びが可能になります。
学校だからこそ持つことのできる「集団の価値」をフルに活かす授業が必要です。その一つが、アクティブ・ラーニングです。

大学入試で求められる力とは

アクティブ・ラーニングは社会状況や大学入試改革ともかかわっています。
21世紀の社会では、自ら課題を見つけ、自ら行動し解決する力が求められます。また、まわりの人たちと協働するためのコミュニケーション力も問われます。

大学入試も、これまではたくさんの問題を速く正確に解く力が求められました。しかし、これからの入試ではそれ以上の力が求められるようになる。自分の学んだことを総合して課題を解決する力が問われます。考える力、判断する力、言葉や文章で表現する力をみる記述問題が増えるのではないかと考えています。

こうした状況に学校も対応していく必要があります。それには従来型の授業ではなく、もっと生徒自身が考えたり、話し合ったり、書き表したりする活動を増やすことです。

生徒の「学びたい」気持ちを大切に

写真アクティブ・ラーニングを取り入れることによって、生徒の理解が深まり、授業進度が早まったとお話ししました。こうした授業で、遊んでしまったりする生徒はいません。本校の生徒は学ぶ姿勢ができており、授業にも意欲的に取り組みます。

もちろんたまにぼんやりとしている生徒もいますよ(笑)。そんなとき私は「きちんとやりなさい」とは言わない。「大丈夫?」と声をかけます。今なにをするべきなのか、自分で気づけるようなサポートを心掛けています。

生徒たちの様子を見ていると、小テストの直しや振り返りシートの記入も熱心です。授業が終わっても書いています。そうした姿から、生徒たちが「学びたい」と思っていることが伝わってきます。小テストやプリントのレベルも、アクティブ・ラーニングを取り入れたことで上がっています。
本校では、これからもより意義あるアクティブ・ラーニングを実践していきます。

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教頭 矢野 高史先生のお話

PBL(課題解決型授業)による企業研究

写真現在、高校1年生が取り組んでいる企業研究は、キャリア教育の一環として取り組んでいます。単に企業について調べるというものではありません。ひとつしかない正解を求めるのではなく、「正解が幾つもある問題に立ち向かう」ための力を養います。アクティブ・ラーニングを意識して、生徒たちが能動的に課題に取り組むものです。この活動ために、今回14の企業から協力を得ることができました。

まず1学期は企業選びから始めます。14の企業の主な業種は、旅行・航空・金融・製造・出版・食品など。生徒はこのなかから自分の興味ある企業を選び、数人単位のグループをつくります。高校1年生は15クラスだから、全クラス合わせて1つの企業につきおよそ10以上のグループが集まります。

さて1学期中に、各企業から生徒たちにお題が与えられます。それを1年間かけて遂行するというのが、企業研究の柱となります。
生徒へのお題は、企業からの正式な文書として、社名の入った封筒で届けられます。その段階から生徒たちは驚き、喜びます。そして、封筒を開けてまたびっくり。与えられたお題は、決して易しいテーマではありません。今1学期半ばとなり、生徒たちはちょうどお題を受け取ったところです。

企業からのお題

写真お題の例を挙げましょう。旅行会社からは「高校生が感動する『他に例を見ない修学旅行プラン』を作成せよ」、航空会社は「空港を活性化させ、乗客を増やし、それ以外のお客様にも来て頂けるような魅力的な空港の姿を提案せよ」、出版社からは「大阪の高校生1万人を集客するイベントを提案せよ」、製造会社からは「通天閣を使用した、今までにない自社の宣伝方法を提案せよ」……いずれも、生徒にとって挑戦しがいのあるお題です。また企業のほうも、手加減せず真剣に臨んでくれていることがわかります。

生徒たちは3学期の発表会を目標に、与えられたお題についてグループで研究します。


1学期途中にグループで企業調べを行うとともに、マーケティングやプレゼンテーションの仕方などについて、専門家を学校に招いて講演してもらいます。
夏休みには実際に企業を訪ね、お話もうかがいます。そのためのアポイントも生徒たちが取ります。

2学期から本格的な活動に入ります。マーケティングなどお題の遂行に必要な活動を自分たちで考え、実行します。
そして3学期、いよいよ各企業を招いての発表会を開きます。14の企業ごとにクラス対抗でプレゼンテーションを行います。企業の人たちが審査員となり、そのなかから最優秀グループを選んでもらいます。

生徒の挑戦する意欲を養うキャリア教育

発表会ではICTも活用するので、情報の学びにもなります。そこで、企業研究は主に情報の授業で行い、情報収集の仕方や、全員がパワーポイントを使えるようスキル指導を行い、企業研究の発表会用の資料を作成します。また、放課後なども生徒たちが自主的に集まります。

企業研究はまさにPBL型のキャリア教育です。この活動が生徒に大きな刺激を与え、社会で活躍するための力が育成されると信じています。本校の生徒たちは素直で真面目です。そのよさを大切にしながら、挑戦する意欲や活動力を養いたいと思います。

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