なぜ中学受験をするのか? ⑥偏差値の裏側

「中学受験の基礎知識」シリーズでは、「私立と公立の違いは?」「偏差値って何?」など、小学生のお子さんを持つ保護者の皆さんが気になる項目について解説していきます。

Vol.6では「偏差値の裏側」をテーマに、中学受験について解説します。

偏差値は試験を受ける集団によって変わる

学校の偏差値一覧表は、多くの場合、模試などのデータから、合格の可能性が80%となる偏差値を示しています。偏差値は、学校の序列を表す絶対的な数値ではなく、試験を受ける集団の学力レベルによって変わるものなのです。(Vol.5参照)

例えばある児童が、2つの塾が実施している模試を受けたとき、Aという塾の模試では偏差値が低めに出て、Bという塾の模試では高めに出るということがありえます。首都圏では、SAPIX(サピックス)、四谷大塚、早稲田アカデミー、日能研、首都圏模試センターなどが模試を実施していますが、SAPIXは低めに出て、首都圏模試センターは高めに出るといわれています。SAPIXは難関校を狙う層が厚く、首都圏模試センターは幅広い受験生が参加しているためです。また、中学受験と高校受験を比べると、中学受験の方が偏差値は低く出ています。それは、高校受験は受験生の層が幅広いのに対して、中学受験は教育に関心の高い家庭など、限られた層が受験するからです。

 

同じ学校でも試験日によって偏差値が違う!?

同じ学校でも、受験する日が違うと合格率80%の偏差値が違うことがあります。同じ日でも、午前と午後で違うこともあります。前述したとおり、偏差値は試験を受ける集団によって変わるからです。例えば、併願しやすい試験日は、合格率80%の偏差値が高くなる傾向があります。その学校を本命にしている受験生だけでなく、本命の層より学力の高い受験生が併願校として受けることにより、平均点が上がるからです。

しかし、併願で受験した生徒が全員、その学校に入学するわけではありません。平均点を上げた受験生たちは、本命の学校に合格すれば本命の方に入学するのです。このことからも、偏差値一覧表に書かれている数値は、学校の序列を表すものではないことがわかります。受験校や受験日を決める際に、合格率80%の偏差値はわかりやすい指標になりますが、偏差値だけで学校の価値を判断すると、ミスマッチが起きる可能性もあるのです。

偏差値一覧表上の位置が1年で急落!?

学校のカリキュラムや環境はまったく変わっていないのに、偏差値が急落することがあります。急落すると志願者が減る傾向があり、偏差値一覧表での位置が低い状態が数年続くこともあります。なぜそんなことが起きるのでしょうか?

例えば、生徒数を増やしたいという思いから、受験生全員を合格にすると、偏差値は低く出ます。すると、翌年の偏差値一覧表で急に低い位置に載ることになってしまうのです。その結果、「少しでも偏差値が高い学校へ行きたい」と思っている受験生からは選ばれにくくなり、志願者が激減してしまうこともあります。一度偏差値が低く出てしまうと「誰でも入れる」というイメージがついてしまうのです。

逆に、下位の受験生をたくさん不合格にすれば、偏差値は高く出ます。つまり、意図的に合格ラインを高くして合格者数を減らせば、偏差値一覧表に載る偏差値を高くすることもできるのです。

偏差値一覧表での位置は、塾の影響も大きいです。例えば、新設校の場合、前年の合格者がいないので、学校としては合格の可能性を表すデータがありません。しかし、塾が優秀な生徒に新設校を勧めて多数合格すれば、翌年の偏差値一覧表では上位に載ることもあります。つまり、偏差値一覧表というのは、その学校で行われている教育に対する評価ではなく、受験生の層によって変わるものなのです。

偏差値一覧表にない学校があるのはなぜ?

塾などの模試では、志望校を書く欄があります。多くの場合、志望校コードが決められているので、コード表から選びます。ところが、塾や模試によっては、志望校コード表に書かれていない学校や合格率が判定できない学校があるのです。それはなぜでしょうか?

まずあげられるのは、志望する塾生が少ないという理由です。サンプル数が少ないと正確な偏差値を出すことはできません。また、そのようなケース以外では、志望校選びの際、あまりにも偏差値を頼りに決めることが多いという事情も指摘できそうです。上述のように、偏差値は、さまざまな要因で変動するもの。また、場合によっては意図的に変動させることも可能なものです。にもかかわらず、塾も保護者も(時には学校も)わかりやすい指標だからという理由で偏差値に頼りすぎていると言うことができるのではないでしょうか。

もちろん、志望校コード表や偏差値一覧表に載っていない学校にも、魅力のある学校はあります。6年間の学校生活を楽しく、充実したものにするためには、広く目を向けることが大切です。

『中学受験スタディ』では、四谷大塚全国中学入試の80偏差値を使った、偏差値一覧を掲載。偏差値が出ていない学校の中にも、注目している学校があります。学校名のリンクから、ぜひ教育の特色などをご確認ください。

偏差値一覧ページはこちら

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