スクール特集
学業だけに偏らない全人教育
星野学園が掲げる教育理念は、リベラルアーツ - 全人教育。豊かな教養を身につけると共に、人を思いやる心や、社会で自立できる力を育成しています。学校創立から118年、教育の軸となっている「全人教育」について、教頭の松田友宏先生は次のように話します。
「中学校、高等学校の教育といえば、学業ばかりが注目されがちです。もちろん高い学力を身につけることは、将来、社会で自立するためにも、とても重要です。しかし、人は、偏差値など見える成果だけで、評価されるものではありません。実際、社会人になって求められるのは、コミュニケーション能力や問題解決能力、また集中力や、目標に向かって努力する粘り強さといった類のものです」
「力強く生き抜く力を養い、バランスのとれた人格を形成するのが、私たちの目指す全人教育。そして、このような教育は、集団の中ではじめて実現できます。本校が、学業と同等に、行事やクラブ活動に力を入れているのは、そういう理由からなのです」
学校行事や部活が生徒を成長させる
星野学園中学校は、年に2回、宿泊行事を設けています。なかでも、スキー実習(屋外体育実習)は、全学年で実施。宿泊期間中は、美化や保健、食事担当など、生徒全員が役割を分担して、それぞれの仕事を行います。「生徒たちは集団行動を通じて、規則正しい生活習慣や、協調性を自然に学んでいきますね」と松田先生。
クラス対抗の「合唱祭」も、大いに盛り上がる学校行事のひとつです。曲決めや練習をする際、生徒同士がもめることもありますが、最終的にはどのクラスも、息の合った合唱を披露。「よく仕上げたなぁと、私も毎回、感動しています。本番までのプロセスのなかで、生徒たちは人との折り合い方を学び、集中力も身につけていきます。仲間と協力して、ひとつのことを成し遂げたという充実感や達成感も体験できますね。合唱の後は、みないい表情をしています」
そして本校の部活は全入制をとっていて、生徒全員がいずれかのクラブに所属します。「自分が主役となって、コツコツ努力を重ねることは、大きな成長をもたらします。また、学年を超えた縦の関係を築くことも、社会性を育むうえで大切ですね」。
曜日によっては、系列小学校の児童が、部活体験に訪れることがあります。その時は、中学生が、ルールなどを優しく教えてあげるそうです。「年下の子に教えることで、『自分がこの子を支えているんだ』という自尊感情が芽生えます。教わる小学生よりも、教える中学生のほうが、よい勉強になるようです」
失敗を「許す」教育を実践
星野学園には、「教育は寛容であるべきだ」という創立以来の原則があります。「生徒たちは、学校生活のなかで、いろいろな失敗や間違いを犯しますが、反省すべきことを理解させ、しっかり反省をするならば、許すという教育を行っています。反省をしたら、すべてを受け入れるという姿勢で接すれば、子どもたちは真実を話し、次は失敗をしないように努力をします」。松田先生は、そう確信しています。
「失敗に対して、罰を与えるだけでは解決になりません。罰を恐れ、真実を隠そうとすれば、学校も踏み込んだ指導ができず、生徒自身もモヤモヤした気持ちを抱え続けることになります。いじめ問題も、事実を明らかにして、当事者が潔く反省することが重要です」
「校長は常日頃から、『親心になって、生徒と接しなさい』と、教員に声をかけています。そして私たち教員は、『学校で起きた問題は、学校の責任である』というスタンスで指導をしています。生徒と真剣に向き合い、保護者との信頼関係を築きながら、一人ひとりを伸ばしていく。星野学園の教育とは、まさに人間を育てることなのです」
子どもたちの将来を見据えた教育環境
星野学園中学校は、「全人教育」と共に、時代や社会の変化に対応した、様々な教育プログラムを打ち出しています。
理数選抜クラスを設置
2009年度から、個々のレベルに応じた内容や進度に応じて、「理数選抜クラス」「進学クラス」の2つのクラスを編成。習熟度別に学習指導を行っています。
理数選抜クラスは、将来的に難関国立大学や医学部を目指す生徒の育成を目指し、広く深い内容の授業を展開します。教材や授業プリントも進学クラスと異なり、定期考査では、論述問題を増やし、難易度の高い問題を出題。
中3になると、小論文講座や、センター試験問題の演習などを行う土曜講座が開講します。また、高1対象の夏期講習に参加することもできます。
次の学年に進級する時は、学業成績をもとに、クラス替えが行われます。進学クラスから理数選抜クラスに入ることも可能です。また、理数選抜クラスは、理系だけでなく、文系の進路にも対応しています。
クラスを2つに編成することで、一人ひとりの能力に沿った、きめ細かな学習指導ができるようになり、全体的に学力が向上したという結果が報告されています。
iPadを導入したICT教育
昨年度から本校は、iPadを入学した生徒全員に支給し、各教科の授業で、デジタル教材などを使い学習効果を高めています。
また、小テストの解答用紙としてiPadを使用すると、保護者は自宅のパソコンで、その内容や、子どもの学習状況を把握することができます。
ちなみにiPadは学校が一元管理し、必要なアプリは、全員に無料でダウンロードをしています。
生徒たちは授業以外でも、インターネットを使用した調べ学習をするなど、iPadを活用しています。英語や国語の辞書、学習アプリも豊富に入っているので、宿題や自学自習にも利用できます。たとえば数学の問題では、答えをiPadに入力して送信すると、その場で採点がされ、同時に正答率も見ることができます。また、英語の発音アプリを使うことで、リスニングの強化に役立ちます。
今後は、e-ラーニングを導入するなど、iPadの利用はますます拡大します。最先端の機器を使った学習が、どのような効果をもたらすのか、本校は検証を行いながら、ICT教育を推進しています。
グローバル社会に対応した国際人教育
現代はグローバル化が急ピッチで進み、ますます語学力が必要になるといわれます。そんな時代を見据え、本校では、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能をバランスよく取り入れた英語教育を行っています。ネイティブスピーカーによるオーラル・コミュニケーションも授業に組み入れ、実践的な英語力を育成しています。
中学3年生は、ホームステイを取り入れた7泊8日のオーストラリア修学旅行に参加します。英語に慣れるだけでなく、自国とは異なる文化や習慣に触れて、国際感覚を身につけます。最終日には、現地の人を交え、フェアウェルパーティーを開催。そこで生徒たちは、感謝の意味を込めて、けん玉や日本舞踊、武道などを披露し、日本文化を紹介します。
外国の文化を受けとめるには、自国の文化を知る必要があると、本校では日本の伝統文化を体験する機会を設けています。その効果もあり、生徒たちの「おもてなし」は、オーストラリアの人々に喜ばれているそうです。
また2年に1度、学校にドイツの演奏者を招き、「日独青少年交流コンサート」を催しています。コンサートではドイツの演奏者はもちろん、本校の吹奏楽部や筝曲部、音楽部なども演奏。生徒がドイツの人たちにインタビューをするなど、交流を図っています。
高校生になると、修学旅行でパリとロンドンを訪問。このように星野学園では、6年間を通して、国際理解を深める教育に力を入れています。