• HOME
  • 学校検索
  • スタディチャンネル
  • 特集
  • 説明会・イベントカレンダー
  • 入試カレンダー
  • 受験の基礎知識

工学院大学附属中学校
スペシャルレポート<第2回>

21世紀型教育の導入から6年目
自己変容型知性を磨く仕掛けとその成果

工学院大学附属中学校では、2013年から21世紀型教育を導入。グローバル化や技術革新が急速に進む世界で、柔軟に対応して活躍できる人材の育成を目指して教育改革を進めてきた。導入から6年目となり、大学合格実績に留まらない様々な形の成果が注目されている。

1/3

予測不能な時代に必要とされる力

21世紀型教育を提唱、実践している工学院大学附属中学校。同校が目指しているのは、創造的リーダーシップを発揮し、他者と協働して様々な限界を突破する自己変容型知性を持った人材の育成である。同校の教育改革を先頭に立って進めている平方邦行校長先生に、グローバル教育3.0や自己変容型知性を磨く様々な仕掛けについて話を聞いた。

20世紀型教育と21世紀型教育の違い

戦後から長きにわたり、日本の教育は教員が講義をする一方通行型で、知識をインプットすることにウエイトが置かれていた。インプットした知識をアウトプットする機会はほとんどない上に、インプットされた知識も過去のものばかりである。社会が安定している時代には、それでもよかったかもしれない。そのような教育を受けて社会に出ても、合理的に生産性を上げることができていた。しかし、「ベルリンの壁崩壊」(1989年)以降、混沌とした状況が生まれ、世界のあちこちで紛争が起きている。解決しなければならない難しい問題が多々生じるたいへんな時代となり、何が起こるか予測できない。「そのような時代に求められているのが、21世紀型教育です」と平方先生は語る。

平方邦行校長先生

「バブルの頃は、日本型経営が世界の中で一番素晴らしいと思われていました。しかし今は、世界の中で日本の経済的な評価も下がってきています。予測不能な時代に必要なのは、知識の量ではなくクリエイティビティとイノベーションなのです。欧米では早くからそのことに気づき、90年代から教育改革が進められました。時代が変わってきたのだから、日本の教育も変わらなければなりません。長く続いてきた一方通行型とは違う教育を21世紀型と呼び、本校でも教育改革を進めてきました。10代の生徒たちが、10年後、20年後に困らないような教育を6年間で行うことが、中学・高校の使命だと考えています」

2/3

グローバル教育3.0とは

世界が熱望する力を育てる「グローバル教育3.0」

同校が考える21世紀型教育とは、「グローバル教育3.0」のレベルである。「グローバル教育1.0」は一方通行型の20世紀型教育であり、「グローバル教育2.0」のレベルでもまだ21世紀型とはいえず、「グローバル教育3.0」のレベルで初めて21世紀型教育といえるのだと平方先生は説明する。では、「グローバル教育3.0」とは、具体的にどのようなものなのだろうか?

「大学入試を例に挙げると、知識の量だけで突破できるセンター試験は、グローバル教育1.0の段階です。2020年度から実施される大学入学共通テストは、英語4技能、国語と数学に記述問題が入りますが、まだグローバル教育2.0の段階。知識を習得して理解し、応用して分析することまでは入っていますが、世界で求められているクリエイティビティを測る問題は出題されません。グローバル教育3.0が目指す力を測るためには、グローバル高大接続テストが必要です。これは、今、世界が熱望しているクリエイティビティやイノベーションを測るものであり、クリティカルシンキングやクリエイティブシンキングができなければ突破することはできません。本校が目指すのはこのレベル。英語力でいえばCEFR*のC1レベルで、論理的思考力を問うだけでなく、創造的思考力を養うことが重要なのです」

* CEFR:ヨーロッパ言語共通参照枠。C1レベルは、優れた言語運用能力を有する者・上級者を指す。

同校では、グローバルネットワーク作りにも関しても、ラウンドスクエア**の正会員(現在は準会員)を目指すなど、積極的に取り組んでいる。2017年には、日本で初めてケンブリッジイングリッシュスクールとして認定された。世界中の同年代の生徒たちが共通のテキストを使って学ぶことが重要と考え、ケンブリッジ大学出版発行の教材“Uncover”を使用している。授業のスタイルは、PBL(問題解決型授業)とSTEAM教育。Webもただパソコンが使えるというレベルではなく、Office365を使いこなしている。

**ラウンドスクエアとは、6つの教育の柱“IDEALS”(Internationalism, Democracy, Environment, Adventure, Leadership, Service)に基づいて活動する国際規模の私立学校連盟

「STEAM教育」の要となる「哲学」

「STEAM」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Math(数学)の5分野を指し、「STEAM教育」は、デザイン思考と連動することにより、5分野を横断的に学んでいく教育方法である。5分野それぞれがバラバラのままでは意味がなく、統合するために必要なのが「哲学」だと平方先生は考えている。

「探究的な学習は、1つの教科だけでできるものではありません。1つの教科だけでできることは、世の中に存在しないのです。例えば、もの作りには、技術や工学だけでなく、デザインしていく力も必要になります。ですから、芸術という意味のアートではなく、デザインしていく力としてアートが重要になります。だから本校では、STEM教育ではなくアートが入ったSTEAM教育なのです。そして、STEAMを1つの学びとして統合するために重要な役割を果たすのが哲学。各分野の専門性を深めるだけではなく、それぞれを統合することが不可欠であり、統合する力となるのが哲学なのです。高校ハイブリッドインターナショナルコースでは、週6時間ある英語の授業のうち2時間、英語で哲学を学んでいます」

哲学の授業は、工学院大学新宿キャンパスで行われる。哲学のほか、高大連携プログラムや中国語の授業なども新宿キャンパスで実施。新宿キャンパス前からは、八王子キャンパスへの通学用シャトルバス(無料)も毎朝運行されている。バスの発車場所へは新宿駅から地下道がつながっており、八王子までの所要時間は約40分。座って通学できるので、車内での時間も有効に使える。

3/3

自己変容型知性を磨く様々な仕掛け

創造的な学びの場“Fab スペース”

予測不能な時代に社会で活躍できる、21 世紀型のスキルを身につけた人材を育てるためには、「批判力と創造性を備えた自己変容型の知性を磨く仕掛けが必要」だと平方先生は語る。

「柔軟にいろいろなものを吸収して、自分で考えて何かを生み出していく力は、座学だけでは養えません。例えば、本校の図書館内には“Fab スペース”という空間があります。映像編集ができるパソコンや大型モニター、プログラミングして動かせるロボットやレゴブロック、3D プリンターなどが設置されており、休み時間や放課後に生徒たちが自由に使えるスペースです。図書館が静かに本を読む場所だったのは、20世紀の話。生徒たちは創造的な学びのスペースとして活用し、自己変容型知性を磨いていきます

その成果は、様々な形であらわれている。例えば、3Dプリンターを使った創造的なものづくりを競う「FAB 3D CONTEST 2018」(主催:慶應義塾大学SFC研究所ファブ地球社会コンソーシアム)のカテゴリー3(中高生対象)で、優秀賞(第1位相当)と特別賞(第2位相当)を同校の中学3年生が受賞した。作品は、“Fab スペース”でプログラミングや3Dプリンターを駆使し制作され、コンセプトからモデリングまで全て生徒が行った。

創造的な学びの場“Fab スペース”

「このコンテストでは、できあがったモノだけに対して賞が与えられるのではなく、どのように作ったか仕様書を提出させて、制作の目的や意図なども審査します。高校生も参加する中で、中3の2名が1位と2位を受賞したのです。映像作品では、中2の生徒たちが製作した八王子空襲をテーマにした作品が国内の映像祭*でファイナリストに選出され、英語字幕を入れて再編集したものがアメリカで開催された映画祭**でもファイナリストに選出されています。英語字幕も生徒たち自身で入れ、アメリカでの質疑にもしっかり答えられていました。ほかにも、大人も応募しているコンテストでも上位に入賞するなど、様々な形で生徒自身が結果を出しています」

*「国際平和映像祭(UFPFF)2017」
**「Providence Children's Film Festival 2018」でファイナリストに選出。「Peace In the Street Global Film Festival2018」4位入賞。

同校では、日本の中学・高校で初めての試みという「Rakuten OverDrive(電子図書館)」も導入。電子図書館には洋書が充実。易しいレベルの本から本格的な文学作品までジャンルもさまざま揃っているので、自然とリーディング力も鍛えられる。IDとパスワードがあれば、自分のPCやタブレットで自由に読書を楽しむことができるのだ。このような様々な仕掛けによって、生徒たちの自己変容型知性は磨かれていく。

「FAB 3D CONTEST 2018」で優秀賞を受賞した生徒にインタビュー

慶應義塾大学SFC研究所ファブ地球社会コンソーシアムが主催する「FAB 3D CONTEST 2018」 のカテゴリー3(中高生対象)で、優秀賞(第1位相当)を受賞したSくん(受賞時中3、現高1)にコンテストや学校生活について聞いた。

幼稚園に通う頃からパソコンに慣れ親しんでいたというSくんは、iPadを導入していることに魅力を感じて同校への中学受験を決めたという。

「成績優秀というわけではなかったので、中学受験に合格できるか不安はありましたが、iPadを使った授業が面白そうだと思っていたので、他の中学は考えませんでした。iPadは、デジタルとして形になるところが面白いです。紙だとコピーを取ったりするのも手間がかかりますが、iPadならその場でデータを共有できるので煩わしさがありません。ロイロノート(授業支援ソフト)を使えば、クラス全員の意見が瞬時に電子黒板で共有できるので、授業も効率よく進められます」

Sくん

Sくんが3Dプリンターと出会ったのは、中学1年生のとき。同校では、デジタルものづくりを行う学内施設「Fabスペース」に3Dプリンターが設置されている。印刷されている場面を見て興味がわき、友人と一緒に作ってみることにしたというSくん。

「周りにいた友達から『プーさんを作って』と言われたのですが、初めてだったのでそれは無理だと思い、結局、立方体に『プーさん』という文字を彫り込んだものを作りました。それをきっかけに、写真から立体を予想して作ってみたりするようになり、本格的に作るようになったのは中2になってからです。まだ3Dプリンターはどこにでもあるものではないので、それが学校にあるということは、僕にとってとても大きな意味があったと思います」

そして中2のとき、3Dプリンターの技術と超音波距離センサーを使って「距離で音が変わる楽器」を作り、「FAB 3D CONTEST 2017」カテゴリー3(中高生部門)で特別賞を受賞。中3になり、リコーダーとトロンボーンを掛け合わせ、既存の楽器を新たな楽器へと生まれ変わらせた「リボーン(ReBone)」を作り、「FAB 3D CONTEST 2018」カテゴリー3(中高生部門)で優秀賞を受賞した。

受賞作品「リボーン(ReBone)」

「カテゴリー3のページを見ていたら、リコーダーの写真が目にとまったので、リコーダーの構造に注目してみました。リコーダーは掃除するために分解できますが、分解したものを拡張パーツの1つとして考えてみたのです。そして、リコーダーの音色はそのままで、トロンボーンのように伸び縮みさせて演奏する新しい楽器を考えました。デザインは20回ぐらい変更しています。音をどうやって変化させるかが課題でした。3Dプリンターを使うと熱で膨張してしまい、どれくらい膨張するかは部位によっても変わります。最適な大きさを見つけるために試行錯誤を重ねて、70回ぐらい印刷しました。それでも完成するまでやり遂げることができたのは、高校受験がなかったこともあり、何かを形にしたいという思いがあったからだと思います。前年に、特別賞を受賞していたことも励みになりました。高校生も応募している中で優秀賞を受賞することができ、認めてもらえたことはとても嬉しかったです」

小学生のころは、パソコンに興味が集中していたので、Googleなどで働きたいと思っていたというSくん。中学3年間で動画編集や3Dプリンター技術、プログラミングなども経験し、興味の幅が広がっている。そんなSくんに、AIと人間との関係についてどう考えているか聞いてみた。

「AIが人間を支配するようになるとは思っていません。人手が足りないような地域では、人間の代わりに単純作業をしてくれて、人間の役に立つものになると思います。AIが生活を守る仕事をしてくれるようになったら、僕らができるのは創造性を発揮する仕事ではないかと考えています。それは今のところ、AIにはできません。例えば、動画を作ることもその1つです。動画は、自分が思ったことを形にできるところが面白いと思います。将来は、プログラミングの仕事をしたいという気持ちもありますが、動画編集も面白いので、まだ1つに決めずにいろいろなことをやってみたいです」


取材を終えて

教育の成果としては、大学合格実績に目を向けられがちであるが、同校の教育は、それ以外の部分にも多くの成果を出していることに注目したい。現状では、創造的思考や自己変容型知性を磨かなくても国内の難関大学に合格できるため、大学合格実績だけでは見えない部分があるのだ。取材の中で平方先生が紹介した、“パーソナル・コンピュータの父”と呼ばれる科学者アラン・ケイの言葉に、同校が目指すものが集約されていると感じた。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツにも影響を与えたアラン・ケイは、“The best way to predict the future is to invent it.”と語ったという。未来を自ら創造したいと思う児童たちに、ぜひ学校や授業を見学していただきたい。

【第1回に戻る】工学院大学附属中学校のスペシャルレポート<第1回>

所在地

〒192-8622
東京都八王子市中野町2647-2

TEL 042-628-4914

マップ