【連載|人を数学する】第0回 人生の折り返しは何歳? 〜人体・人間社会を数学の眼差しでみる〜

はじまりは0なのか1なのか

1ではなく0。第1回ではなくあえて第0回としました。

なにせ本連載は数学ですから。日本では、はじまりは一です。漢字の一の読みには「はじめ」があります。日本の建物の階数も1階からはじまります。これが英国に行けば、地上は「グランドフロア」その上すなわち日本での2階が「ファーストフロア」となります。英国では0階、1階、2階、…となるわけです。

日本の階数の数え方、地下2階、地下1階、1階、2階、…
英国の階数の数え方、地下2階、地下1階、0階、1階、…

日本の0階はどこに消えたのでしょうか。大地の地面を0と考えることができます。その上の居住空間が1階、下の居住空間が地下1階ということです。

はじまりは0なのか1なのか。

いい問題です。人類が0を発見するまでにはとてつもなく長い時間が必要でした。

なにせ「無い」ものを表す考え方なのですから。そもそも見える「有る」ものですら、その背後に1、2、3、…という数が潜んでいることに気づくのに私たち人類は地上で長く生きる必要がありました。アウストラロピテクスといった猿人が300万年前です。人類が数の存在に気づきはじめたのが数万年前です。そして数が概念にまで成長したのは今からたった2000年前のことです。見える葉っぱ、石ころ、動物をすべて同じ1と数えることができることを発見した時から文明は始まったと言っても過言ではありません。世界中のさまざまな文明は独自の文字と数字を発明しました。ローマ数字I,II,III、漢字一、二、三からも分かるように見えるものとの対応で数字の形がデザインされています。そしてようやくインドで0という数が発見されます。宗教の中で無の概念が醸成されていたことが考えられます。

しかし、0が古代ギリシャをはじめ多くの国で悪魔の数として恐れられ普及することがありませんでした。ヨーロッパに渡り、グーテンベルクの活版印刷技術が発明され、それまでの手書き数字が鉛で印刷されるようになりようやく普及するようになりました。このようにインド数字が世界中を旅して現在のアラビア数字と呼ばれる数字に成長しました。数の成り立ちを振りかえると、はじまりを一とする日本の考え方は自然なことと言えます。日本の階数の数え方は米国でも同じです。

これ以外にも日本独自の数字の呼び方があります。0をゼロと零(れい)の2通りに呼ぶことです。気温は0(れい)度、希望者は0(ゼロ)人、というように区別します。希望者を0(れい)人と呼ぶと違和感を感じるはずです。日本人は無意識に2つを使い分けているようです。ここで問題です。ゼロと零(れい)の呼び方の違いは何でしょうか。

ゼロは絶対的に数値が0である場合に用います。人数や個数がそうです。それに対して零(れい)は、0の前後幅がある数値の場合に用いられます。気温0度は正確に0ではありません。測定誤差があり四捨五入した数値として0という意味です。降水確率も5%未満を0%としています。なるほど漢字の零は小さい水玉「しずく」のことです。

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