天文を通して出会い、新たな気づきを生み出す 桐朋女子自然科学部天文班

中学生と高校生が一緒に活動する自然科学部天文班

校舎の屋上に設置された直径5mほどの天体ドーム。今から40年以上前に設置された歴史のある設備だが口径15cmの屈折望遠鏡は今なお健在で、2022年11月8日の皆既月食・天王星食においても自然科学部天文班により見事な観測が行われた。

部長の和田さん(高2)によると、当日は望遠鏡にカメラを接続して部員みんなで代わる代わるシャッターを切ったり、文化祭に向けて制作した自作の望遠鏡を使って観測してみたり。なかには自宅から望遠鏡や双眼鏡を持参した部員もいて、それぞれ思い思いの観測を楽しんだようだ。

天文班には現在17名の部員が在籍し、中学生(9名)と高校生(8名)が一緒に活動を行っている。中高一貫の「桐朋女子」ならではの活動スタイルで、学年を超えて交流できるのも特色のひとつだろう。天体班の主な活動内容は天体観測と文化祭での発表と言う大きく2つがあるようで、活動の実際について部長の和田さんと中学生の近藤さん、飯田さんにそれぞれ話を伺った。

構造を理解するところから始めた望遠鏡の制作

文化祭の発表に向けて望遠鏡の制作に取り組んだ天文班。発表テーマがなかなか決められずに最初は単なる思いつきだったものの、顧問の志賀先生に相談したところ「できますよ!」と熱意のこもったひと言に後押しされ、初めて望遠鏡の制作に取り組むことになったと言う。

和田さん「はじめは市販の工作キットを取り寄せるところから始めました。簡単な工作キットはレンズが最初から合わさった状態で入っているので、凹レンズと凸レンズの2枚を合わせるところなど、構造を理解するのにとても役立ちました。メーカーによって望遠鏡の作り方や仕様も違っていたので、いろいろなキットを作りながらこういったところは自分たちで作る時にも役立つかもしれないといったことを常に考えながら研究レポートとしてもまとめました」

1年間に及ぶ制作期間を経て最終的に3種類の望遠鏡を制作。部長の和田さんは同じ学年の部員2名とともに空気望遠鏡を制作し、近藤さん、飯田さんはそれぞれ別のグループを主導して口径の異なる大小2つの屈折望遠鏡を完成させた。自分たちでイチから設計図を描き、材料も学校の近くにある100円ショップやホームセンターに足を運んで調達したと言う。

近藤さん「私は大きい方のレンズのグループで、焦点距離が長いこともあって鏡筒に合う入れ物ってなんだろうと筒を探すところから始めました。いろいろと試した結果、ポテトチップスの容器がぴったりでいくつかつなぎ合わせて筒にしています。何度か試作するなかで強度が足りないこともわかり、内側に分厚い筒を入れるなど工夫もたくさんしています」

飯田さん「私たちはレンズの小さいものを作りました。ポテトチップスの容器だと大き過ぎたので画用紙を2枚重ねて丸めたものを筒にしました。あとは強度を高めるために硬めのクリアファイルを巻いてあります」

すでに来年度の文化祭に向けて反射望遠鏡の制作にもチャレンジしてみたいといった話も出ているようで、活発な活動の様子がうかがえる。

クラブ活動を通して気づく知識よりも大切なこと

天文班の部長として入部の相談なども受けることがあるという和田さんだが、和田さん自身入部するまで天文には全く興味が無かったと言うエピソードが興味深い。

和田さん「大人数での人付き合いが苦手なところもあって、もともと部活はやらないつもりでした。天文にも全く興味は無かったんですけど、当時、物理の授業を受け持っていた志賀先生が顧問をしているというのを知り、軽い気持ちで見学に行ったのが入部のきっかけです」

当時の天文班は今よりも人数が少なく、顧問の先生も知っていたことが和田さんにとって居心地が良かったようだ。

和田さん「先輩たちと一緒に文化祭の準備を進めていくうちに、調べものとかだんだん楽しくなって、知らないことを調べたり、先輩の役に立ちたいという気持ちもあったりして、気がつけば私も天文の知識が増えていったという感じです。天文は私にとってゼロからスタートでした」

志賀先生「もともと天文に興味があって自分の望遠鏡を持っているという子もいれば、なんとなく良いかなという感じで入って来る子もいますので、はじめから天文の知識や専門的な何かを必要としているわけではありません。むしろクラブ活動という集団生活のなかでおたがいにやりとりをしながら学んでいったり、わからないところは他の人に聞いたり、ふと思い浮かんだアイデアをみんなで調べてみたり。知識があることよりも関心を持ってみずから動こうとする気持ちが大切だと思います」

コロナ以前は春に4泊5日の校内合宿を行ったり、夏も八ヶ岳高原寮という学校の寮に泊まって夜空を観測したりと、普段の学校生活では経験できないような非日常の場面にたくさん出会えるのも天文班の魅力だろう。

志賀先生「今の時代はモノや情報が溢れていて、夜星を眺めることってなかなか無いですよね。でも空を眺めていると私たちが宇宙の中の一員であることを感じることがいっぱいあって、生徒たちにはそういうことに気づいて欲しいというのがありますね。あと星の観察は一人でできちゃうこともたくさんあるんですけど、文化祭の発表ともなると一人でできることには限界があるので、一人ではできないような研究とか、みんなでひとつのものを作ってみるとか。アイデアも自分一人では思いつかないようなことが、みんなと一緒にいると思い浮かぶことってありますよね。天文班の活動を通してそういうことも経験してもらえると良いなと思います」

桐朋女子中学校の詳しい情報は、こちらからどうぞ。

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