【連載:数学と言葉】第3回 論理の言葉使いその1「かつ」と「または」

数学用語と日常の言葉のズレ

数学では基本的に日常の言葉が用いられます。しかし、数学では「正確さ」が極端に要求されます。それに対して、日常の言葉では「あいまいさ」が要求されます。数学と日常の言葉使いには正反対の性質があります。

数学での議論で重要なのは正確さ。あいまいさは議論の妨げとなります。
日常の言葉では、あいまいな表現であることが円滑なコミュニケーションには必要になります。もし日常の言葉使いを数学のように正確なものにしてしまえば会話すること自体が難儀になるでしょう。

結果として同じ言葉でも数学と日常生活では使い方・意味が異なる場合が生じることになります。

2つの集合AとBについて、「AかつB(A∩B)」、「AまたはB(A∪B)」
2つの命題PとQについて、「PかつQが成り立つ」、「PまたはQが成り立つ」
のように使われます。この「かつ」と「または」について数学と日常での言葉使いをくらべてみます。

「かつ」はどちらも同じ意味

「PかつQが成り立つ」の「かつ」は「PとQのどちらも成り立つ」「PとQの両方成り立つ」という意味です。
「集合Aかつ集合B」とは「集合Aと集合Bの両方に含まれる要素を持つ集合」を表します。例えば、A:2の倍数の集合、B:3の倍数の集合とした場合、6はAかつBの要素である、といいます。

日常での言葉使いとくらべてみましょう。
「彼は頭がよく、かつ運度神経もいい」「よく学び、かつよく遊ぶことが大切」
の例からもわかるように「かつ」は「両方」という意味で用いられます。

数学の「または」は「少なくともどちらか一方」

では「または」はどうでしょうか。
「PまたはQが成り立つ」の「または」は「PとQの少なくともどちらか一方」という意味です。

集合であれば図(ベン図)で説明できます。
いま、集合A={a,b,c}、集合B={b,c,d,e}とします。
AまたはB(A∪B)={a,b,c,d,e}
AかつB(A∩B)={b,c}
ということです。

ここでのポイントは、「AまたはB」には「AかつB」も含まれていることです。

▶︎次のページ「日常の「または」は「どちらか一方だけ」」
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