第2回 これからの数学力は「私の数学」「非点数化力」 〜100点に何の意味があるのか〜

世界は数学でできている。

筆者が主張する新しい数学力のポイントは、学校以外で取り組む数学です。
前回第1回でも紹介したように、世界を牽引する多くのシステムは数学によってデザインされています。

基礎学問(物理学、天文学、化学、生物学、経済学)、コンピューター、インターネット、セキュリティシステム、地図、AI(人工知能)、フィンテック(金融技術)・金融工学、ビットコイン(仮想通貨)、ロボット、宇宙工学、数理気象学、量子コンピューター。

枚挙にいとまがないとはこのことです。まさしく「世界は数学でできている。」「世界が数学を必用としている。」ということです。

数学の絶大なる偉力を知るのに早ければ早いことに越したことはありません。残念ながら学校の数学は入学試験の内容に大きく依存するのが現実です。何度も申しあげますが、それを悪くいうつもりは毛頭ありません。

テストのためにある学校の算数・数学のおかげで、受験を突破し目的の学校に進学することができます。

しかし、もはや時代はいい学校に進学しただけではなんともならない状況になっています。社会に出て、もっと数学をやっておけばよかったではもったいなさすぎです。

テストの点数以外の目的意識を持って数学と取り組むことが大切です。それは学校では難しいことです。必然的に学校外で数学に取り組むことになります。もちろん、学校によってはそういった意識で数学に取り組んでいるところがたくさんあります。

2月16日に筆者が監修した『楽しい算数365』(SBクリエイティブ、416ページ)
が刊行されました。

1話1ページの数学ショートショート、365の物語。タイトルは算数でも中身はガチ数学です。

シンギュラリティ、パラドックス、完全数、絹盗人算、16進数、ASCIIコード、フィールズ賞、アクチュアリー、トポロジー、AI、データサイエンス、統計、計算機科学、単位、物理学、和算、数学者。

世界が数学でできていることを小学生のうちから知ることできる楽しい本です。

これからの数学力は「非点数化力」

テスト・受験のための算数・数学は、数値化・他人による評価に価値があります。第三者により公正・公平・客観的に評価・選抜されることは社会的に大きな価値があることは言うまでもありません。

それに対して自己目標達成のための「私の数学」では、他人に評価されません。評価は自己評価です。自己評価はすべてが数値化できるわけではありません。

・どれだけ数学に興味・関心を持っているか
・どれだけ数学を深く理解しているのか

といったことに点数をつけることは難しいということです。それだけではありません。

・数学にどれだけのリアリティを持っているか
・数学をどれだけ信じているか
・様々な現象を数学に翻訳する力
・数学を他人に教える・伝える力
・数学の問題を見つける力
・数学の現象を発見する力
・数学を活用する力
・数学を発見する力

こういった数学力はもはや試験の点数ではかることができません。

それでも自分自身の中では分かることです。実は、自分自身が納得しているか否か、この単純な自己評価は他人による試験の点数よりも厳しいです。

点数化できないけれど自分自身の中では評価できる自己評価。自己評価が意味を持つのは他人に対してではなく、自分だけです。他人にはウソがつけても自分にはウソはつけません。

学校の数学と「私の数学」

学校の数学に対して、学校外の数学を筆者は「私の数学」と呼んでいます。学校の数学──教科書、カリキュラム、テストといったものは、他人がすべてを準備してくれた数学です。

「私の数学」はまさしく私がすべてを準備します。教科書、カリキュラムそして数学の目的も。テストという他人による評価ではなく、数値化できない自己評価。

学校における数値化は他人との相対評価です。偏差値はまさに相対評価するために発明された指標です。それに対して「私の数学」では、他人と比較するための数値化自体が意味をもちません。厳しい絶対評価です。

学校の数学では100点満点を目指しますが、「私の数学」では100点には意味がありません。思い存分「他人と比較するための100点に何の意味があるのか!」と思いながら取り組むことができます。

こうして、学校の点数力と「私の数学」の非点数化力の合わせ技が社会に出た時に仕事に結実していきます。はたして、仕事の結果は数値化され他人(社会)に評価されることになります。

「私の数学」で得られる最大の報酬は「真なる喜び」です。すべて自分が準備し目標が達成された時、自分だけが味わえる達成感、感動が得られます。これが筆者が考える「私の数学」です。実際に桜井進の算数・数学教室では「私の数学」を実践する子供たちがたくさん誕生しています。

次回は「私の数学」の中身をさらに詳しく見ていきます。

執筆者プロフィール

桜井 進(さくらい すすむ)

1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。東京理科大学大学院非常講師。東京工業大学理学部数学科卒。同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書に『雪月花の数学』『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。
サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
桜井進WebSite

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