なぜ中学受験をするのか? 12 女子校御三家、それぞれの魅力

「中学受験の基礎知識」シリーズでは、「私立と公立の違いは?」「偏差値って何?」など、小学生のお子さんを持つ保護者の皆さんが気になる項目について解説していきます。Vol.12のテーマは、「女子校御三家」です。

女子校御三家とは?

首都圏の中学受験において「御三家」と呼ばれる3校は、受験生や保護者、そして塾にとっても特別な存在です。男子校御三家と呼ばれているのが、前回紹介した開成・麻布・武蔵。そして、女子校御三家と呼ばれているのが桜蔭・女子学院・雙葉です。3校とも伝統校であり、首都圏での模試による偏差値でも上位にランキングされています。東大合格者数に注目が集まりがちですが、決して大学受験指導に特化した授業を行っているわけではありません。今回は、女子校御三家と呼ばれる3校それぞれの特色を紹介します。

【桜蔭】驚異的な知力の裏側にあるのは、伝統の「水泳」で培う体力

関東大震災の翌年、1924年に創立された桜蔭中学校高等学校は、建学の精神である「礼と学び」の心を大切にし、自立した女性を育成。礼法の授業では、立居振舞や作法を学ぶことを通して、相手を知って尊重し、異なる価値観を持つ人とも協働しようとする心を育みます。他の2校がキリスト教系であるのに対して、桜蔭は宗教色がありません。

2022年の東大合格者数は77人で、女子校では唯一トップ10内にランキング。理系の生徒が多く、難関大学の医学部に多数の合格者を出しています。2022年の東大理Ⅲ合格者数は、灘高を抜いてトップです。理系が多い要因の1つとして、理系クラブが充実していることが挙げられます。数学部、化学部、物理部、生物部、天文気象部があり、文化祭ではこれらが並ぶ「サイエンスストリート」が人気です。例えば物理部は、電子工作やロボットなどを展示・実演。数学部では、部員の自作問題にチャレンジできるコーナーがあり、解けるまで粘り続ける来場者も多くいます。理系の部員による実演や展示のレベルが高いことも、理系の受験生を集める要因になっているのでしょう。卒業生では、2021年に東大の副学長に就任した藤垣裕子教授が物理部のOGです。

進学校としては意外な授業が、中学から高校まで全学年で実施している水泳です。学校のホームページにも、年間行事としてプール開きが5月、プール終了は11月と書かれています。創立当初から水泳の授業を行っており、卒業までにはクロールや平泳ぎだけでなく、背泳ぎやバタフライまで泳げるようになるそうです。水泳部とは別に、アーティスティックスイミングの技を取り入れたリズム水泳部という部活もあります。創立100周年記念事業として、温水プールがある東館の建て替え工事が行われ、体育館やプールはより充実した施設にリニューアル。これからも、水泳の授業は続きます。女子校の中で東大合格者数トップを誇ることから、勉強ばかりしているイメージがあるかもしれませんが、体力の育成も重視し、体育の授業も大切にしているのです。
※2023年秋頃までは、建て替え工事のため水泳の授業はありません。

【女子学院】自由な校風の中で、状況を見極めて自分で判断できる力を育む

1870年に創立された女子学院中学校・高等学校は、プロテスタントに属するキリスト教主義の学校です。日曜礼拝を大切にしているため、入試日の2月1日が日曜日の場合、過去の事例では入試日を2月2日に変更しました。通常、御三家の入試日はすべて2月1日なので併願できませんが、この場合だけ併願が可能になります。この事象はサンデーショックと呼ばれ、次に起きるのは2026年です。女子学院は、細かい校則がなく、制服もありません。メイクをしたり、髪を染めている子もいますが、校則で縛ることなく、聖書を軸として自律の精神を育みます。社会が求める人材を目指すという受け身の姿勢ではなく、社会が間違った方向に進んでいないかを見極め、正しい判断ができる力を身につけることを目指しているのです。

創立当初からリベラルアーツを追求し、大学入試に必要な科目だけでなく、すべての学びを大切にしています。週1回行う聖書の授業は、聖書の内容だけでなく、倫理、哲学、芸術、宗教問題など、聖書やキリスト教と絡めたトピックを広く学びます。そのような学びを通して、自分のやりたいことを見つけ、それができる大学へ進学。東大に合格する学力があっても京大を選ぶ生徒もいますし、藝大などの芸術方面へ進む生徒もいます。卒業生は、弁護士や医師、外交官、小説家、漫画家など、様々な分野で活躍。泌尿器科の医師・今井通子氏は、女性として初めてマッターホルンに登頂した登山家でもあり、予防医学的な効果が期待される森林セラピーを広める活動などもしており、彼女のように多方面で活躍している卒業生も少なくありません。

文化祭(マグノリア祭)は生徒たちが企画運営し、当日は、校内に教員の姿はほとんど見られません。生徒たちが元気に呼び込みなどを行い、その自由で活発な雰囲気に惹かれて「ここに入りたい!」と思う小学生も多くいます。展示部門で人気を集めるのが、折り紙建築や切り絵などの紙作品をつくる数楽班です。来場者に無料配布する折り建カードは、下級生が1年かけて数千セット制作。この作業でカッターの使い方や技術を向上させ、高2で作るお城などのジオラマサイズの作品は、ハイレベルな仕上がりで来場者を魅了します。

【雙葉】英語とフランス語で国際的な視野を養い、自分の使命を模索する

1909年に雙葉高等女学校として設立され、戦後の教育改革により1947年に雙葉中学校、翌年に雙葉高等学校が発足。教育方針として、カトリックの精神に基づく全人教育を掲げています。他の2校と異なる点は、雙葉には併設の小学校・幼稚園があることです。中1の1年間は内進生と中入生はクラスが分かれ、中2から混合クラス。お嬢様学校のイメージがありますが、校則はそれほど細かくなく、「品位を保つように」という指導のもとで、自分たちで考えて行動しています。

全学年で行われる「宗教」の授業は、キリスト教の考え方を知ることから始めて、キリスト教の視点から視野を広げていきます。貧困問題などから様々な人の生き方を知り、一人ひとりのかけがえのない生き方を考えていくことを目指しています。同校の卒業生であり、ノートルダム清心学園の理事長だった渡辺和子氏は、シスターでもあり、『置かれた場所で咲きなさい』などのベストセラーを生み出しました。著書『目に見えないけれど大切なもの』の中で、自身が中学生だったとき、当時の校長だったシスターの言葉から自分が大切にされていることを感じとり、その後の人生が大きく変わったというエピソードが綴られています。

雙葉学園は、17世紀にフランスのニコラ・バレ神父によって創設された「幼きイエス会」という修道会が設立母体となっており、全員がフランス語を学びます。中3で基本的な表現やフランスの社会、文化について学び、高校では英語の代わりに第1外国語としてフランス語を選択することも可能です。同校の卒業生である寺田朗子氏は、医療とは関係のない分野からフランス語が縁で、非営利の医療・人道援助団体「国境なき医師団日本」の会長となり、その後認定NPO法人「国境なき子どもたち」の会長に就任しています。卒業後に医療分野へ進む生徒も多く、2022年の大学合格者数(既卒者含む)は医学部が96人、歯学・薬学・看護・獣医系が41人。要因の1つに、親が医師という環境が多いことが挙げられます。また、ボランティア委員会が中心となり、募金や施設訪問などのボランティア活動にも力を入れているので、そういった活動や「宗教」の授業、卒業生からの話などを通して、「医療分野で人の役に立ちたい」という思いが強くなる生徒が多いのかもしれません。

女子校御三家の共通点

3校とも、テストの順位を出しません。大学受験のサポートも、学校側から積極的には行っていません。生徒の方から質問したり相談すれば親身に対応してくれますが、自分で志望校を決めて、そこに向けて必要な勉強を自分ですることが基本です。それができる生徒が多く集まっているということですが、一方で、早くから東京大学受験指導を行う専門塾に通う生徒も多くいます。お子さんのタイプによっては、学校からの手厚いサポートがあった方が伸びる場合もあるので、どちらが合うか考えることが大切です。

オープンスクールや文化祭は、生徒たちの様子を直接見ることができる貴重な機会となります。複数の学校を訪問するためには、早めにスケジュールを立てておく必要があるので、開催日を調べる際には『中学受験スタディ』の「説明会・イベントカレンダー(首都圏版)」「説明会・イベントカレンダー(関西版)」をぜひご活用ください。

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