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スクール特集(昭和学院中学校の特色のある教育 #4)

研究者として本気で研究に取り組む、サイエンスアカデミーコースを新設

昭和学院中学校では、2023年度からサイエンスアカデミー(SA)コースがスタートする。サイエンスに特化したコースの特色とは?

創立80周年を迎えた2020年に、コース制をスタートさせた昭和学院中学校。既存のIA(インターナショナルアカデミー)コース、AA(アドバンストアカデミー)コース、TA(トップグレードアカデミー)コース、GA(ジェネラルアカデミー)コースに加え、2023年度よりSA(サイエンスアカデミー)コースを新設する。SAコースのコース長・榎本裕介先生に、コースの特色などについて話を聞いた。

2023年度、サイエンスアカデミーコース始動

2020年度にコース制を導入した同校では、飽くなき科学への探究心を育むSAコースを2023年度に新設。入学時には、日本人とネイティブによる2人担任制のIAコース、ゆるぎのない高い学力の育成を目指すAAコース、好きなことから学びを見つけて自分をデザインするGAコース、そして新たに加わるSAの4コースでスタートし、中3からは一人ひとりに合わせたハイレベルな学習指導を行うTAコースを加えた5コースに分かれて学ぶ。

「中1の段階でコースを決めると選択肢が狭まるイメージがあるかもしれませんが、コースによって将来が限定されるわけではありません。IAコースを選んでも、必ず英文学や国際関係の学部に行くということではありませんし、SAコースを選んでも文系に進むこともできます。何か1つに特化した環境だからこそ見える景色がありますし、特化した方が学びも面白くなると思うのです。理科の授業をしていると、各クラスに何名かは理数に特化した環境の方がより輝けると感じる生徒がいることも、SAコースを新設した理由の1つです」(榎本先生)

コース長の榎本先生は、前任校の広尾学園中学校・高等学校で「医進・サイエンスコース」の立ち上げから10年間携わった経験を持つ。植物遺伝子工学の研究者として博士号も取得しており、研究者としての経験も活かしながら、昭和学院中学校・高等学校でSAコースの準備を進めている。SAコースの特徴は、中学生や高校生としてではなく、一研究者として、一科学者として研究活動を行うことだという。

「中学生で研究などできるのかという疑問を持たれるかもしれませんが、前例を見ているので『できます!』と自信を持って言えます。前任校で、中1の担任を6回経験しましたが、中1の生徒がだんだんと研究分野にのめり込み、熱中していく様子を見てきました。医進・サイエンスコースで中1から高3まで過ごした子たちは、最初はごく一般的な中学生でしたが、何かの分野で特化していくと、いろいろな分野で成果を出し、大学も東大や京大といった難関校にどんどん受かっていったのです。広尾学園は、今でこそ偏差値も上がっていますが、10年前は今ほど高くありませんでした。ですから、優秀な生徒だからできたということでもないのです。中学生が研究の世界で輝くのを見てきたので、本校でも実現できると思っています」(榎本先生) 

▶︎SAコースのコース長・榎本裕介先生

研究の面白さがわかるまでには3年必要

SAコースでは、8人の教員が担当し、2~3人のチームで週1単位の研究活動を行っていくという。各教員の研究領域として、植物遺伝学、食品化学、量子力学、動物行動学、音響工学、地域環境生物学、発生学、風力発電などが挙げられている。生徒たちはこれらの中から研究テーマを選ぶことになるが、興味を持っているかどうかは度外視すると、榎本先生は明言する。

「理科教育に特化したコースの前例を見ていると、生徒たちが興味を持つテーマが多岐にわたると、教員のキャパを超えてしまうという問題が発生しているのです。大学のゼミに配属された学生の場合は、その教授が専門にしている分野から研究テーマを選びます。何でも自由に研究してよい、という教授はいません。ところが中高生の場合、どこに興味を持つかわかりません。1人の教員が複数の生徒を担当するので、生徒がテーマを自由に選び、研究にのめり込むほど教員のキャパを超えていくのです。本校では8人の教員が担当し、それぞれの専門分野からテーマを選ぶことになります。最初はそのテーマに興味を持てない子もいるかもしれませんが、2~3年やっていくと面白さがわかってくるものです。前任校でも3年目ぐらいになると、『こんなに面白いなら、最初からそう言ってください!』という声をよく聞きました」(榎本先生)

多くの生徒は馴染みのない分野で研究に取り組むことになるが、「将来役に立つ」「社会に役立つ」ということをモチベーションにするのではなく、大人がまず楽しんで取り組むところを見せて、学問や研究は楽しいものだと全力で伝えていきたいと、榎本先生は語る。

「例えば、私は植物遺伝学が専門ですが、主に植物の根が栄養素である鉄をどうやって吸収しているか、あるいは制御しているかを研究しています。植物遺伝学に興味がある子がいたとしても、このようなテーマにピンポイントで興味を持って入学してくる生徒はいないでしょう(笑)。しかし、研究はピンポイントでやるからこそ、新しい発見があります。生徒たちは、一体これは何なのかと、最初は全くわからないでしょう。ですから、教員がこの研究が楽しくてしょうがないことを熱く語ったり、『これ、すごいことだよね?』などと楽しく会話できる空間を作ることが大切だと考えています。大学の場合は、入った研究室のテーマ次第で就活の方向性が決まります。しかし、中高生は就職と直結しているわけではありません。将来、どんな分野に進むにしても、中高時代に熱中して何かに取り組んでおいて損はないと思います」(榎本先生)

特化した活動により才能を開花

榎本先生の前任校では、大人と同じフィールドでエントリーして、研究成果を学会で発表した高校生もいるという。

「実は明日も、前任校で植物の研究をみてきた生徒が『植物バイオテクノロジー学会』で発表します。スーツを着た大人たちに混ざって、女子高生が口頭発表を行うのです。発表するのは彼女で4例目ですが、学会も応援してくれていて『学生優秀発表賞』まで新設してくれました。学会側も『科学に年齢は関係ない』と応援してくれているので、いい追い風だと思ってもっと踏み込んでいきたいです」(榎本先生)

科学的な思考を極めると、理科の世界にとどまらず、様々な分野で使える力がつくことは、社会的にも立証されているという。だからSAコースで、そのような場を作ることに意義があると、榎本先生は説明する。

「埋もれてしまっている才能は、何かに特化した活動をしないと見えてこないと思うのです。たまたまあることを専門に研究している先生と出会い、それに特化した研究活動をしていくうちに才能が開花した子たちを見てきました。将来とは分けて考えて、中高時代に熱中して取り組めるものが見つかればいいのです。万が一、将来を決めるほどのテーマになったら、それはそれで幸せだと思いますが、それを願っているわけではありません。明日学会で発表する生徒も、純粋に『すごいな!』『不思議だな』という気持ちが原動力となって取り組んでいます。彼女が目指す進路は、植物とは全然関係がない分野ですが、やってみて面白いから続けてきたのです。東大理Ⅲの学生でも、医師にならずにコンサルティング業界の仕事に就くケースも増えています。私自身も研究で培ってきた考え方や物の見方は、教育分野でも活かせる部分がたくさんあると感じています」(榎本先生)

中高時代は純粋に学問や研究と向き合える時期

研究職に就くと、「役に立つ」ことを求められるようになってしまい、本来あるべき研究の形と乖離してしまうという。学問や研究とは、純粋に「興味があるから追求している」「面白いから研究している」という理由で取り組んでよいはずだと、榎本先生は語る。

「大学教授などは、社会からのプレッシャーもあり、社会にどう役に立つかをアピールしなければ予算をもらうことができません。しかし中高生は、役に立つかどうかを問われることはほとんどありません。ですから、純粋な研究活動をしやすいのです。6年という長い期間をかけて研究できますし、中高生の柔軟な発想も研究にはプラスになるでしょう」(榎本先生)

熱中できるテーマが見つかった生徒が研究にのめり込んでいくと、「受験と関係ないことばかりしていて大丈夫?」と心配する保護者もいるのではないだろうか。

「そういったケースも出てくると思います。しかし、研究活動をしていく中で、英語ができた方が情報収集しやすくなりますし、パソコンを使えたり、数学的な思考があればデータ処理や収集に役立つでしょう。研究の発表を行う際には、研究の背景を考えることも必要です。地理的なことや地政学的なことなど、社会の分野もわかっていた方が研究意義をうまく語れるでしょう。そうやって、自分の興味から派生して学ぶきっかけが生まれてくるのです。研究活動が突破口となり、理科や数学の1つだけでも『やらされるからやる』から『楽しいからやる』に切り替われば、国語の古典も楽しいかもしれないと思うようになるかもしれないのです」(榎本先生)

SAコースを選んでも、他の教科を減らして研究活動を行うわけではなく、他のコースとは1コマしか変わらないという。その1コマと総合的学習の時間やホームルーム、放課後などを使って研究活動を行っていくので、他の教科を学ぶ時間数は変わらない。

「もしテーマに興味が持てなかったとしても、最初の1~2ヶ月で合わないと思ってしまうのはもったいないと思います。どんなテーマでも、研究の楽しさは続けてみないとわかりません。他のコースは2年ごとにコース変更の機会があるのに、SAコースは変更できないのはそのためです。中高6年間SAコースで過ごしてみて、SAを選んだのは間違いだったと後悔することはまずないと、自信を持って言えます」(榎本先生)

知らない分野の夢を持つことはできない

2023年度からスタートするコースなので、SAコースの希望者がどれくらいいるかはまだわからない。しかし、説明会などでは保護者からの関心の高さを感じているという。

「何かに夢中になれることも、才能だと思っています。ですから、ゲームやアニメなどには夢中になれるのに勉強には力が入らないという子などに、ぜひSAコースに来てほしいです。今ゲームやアニメに夢中なのは、退屈だからだと思います。もっと楽しいものがあれば、きっとそちらに気持ちが向かうでしょう。私は長風呂なのですが、お風呂のフタに専門書を置いて読むのが好きなんです。しかし月曜日になると、読むものが専門書から『少年ジャンプ』に代わります(笑)。私にとっては、専門書もジャンプも同列なのです。読んで新しいことを仕入れることが楽しいので、この2つが違うものという気がしません。ですから生徒たちにも、新しい知識を得られることは楽しいことなのだと伝えたいです」(榎本先生)

将来の夢は、出会った人や場所によって変わっていってもよいのだと、榎本先生は語る。

「中学生の頃は、犬を飼っていたので獣医になりたいと思っていました。その頃は、他の職業をあまり知らなかったのです。高校生の頃には、遺伝子工学の世界に興味を持ちました。獣医として目の前の犬を助けるより、遺伝子レベルで治療できればもっと多くの動物を助けられると思ったからです。もともとジブリが好きで、『風の谷のナウシカ』に出てくる腐海のシーンから、土中の浄化にも興味を持っていました。その2つから、植物による環境浄化(ファイトレメディエーション)分野にはまっていって、植物の遺伝子工学に進んだのです。当初はカドミウムの浄化を研究しようと思ったのですが、研究室で『これからは鉄の研究が進みそうだ』と言われて、面白そうだったから鉄の栄養素について研究するようになりました。夢や研究テーマは変わっていきましたが、楽しく研究を続けられています。知らない分野の夢を持つことはできませんし、出会いによって夢は変わっていくのです。知らなかった分野を知るきっかけになるような、教員や研究との出会いがあるのがSAコースの魅力だと思います」(榎本先生)

<取材を終えて>
同校には、6つの理科実験室のほか、プラネタリウムもあり、理科教育に関する設備が充実している。インタビューを行った実験室には、クリーンベンチ(ゴミやホコリ、浮遊微生物などの混入を防ぐために管理された作業台)など、大学レベルの装置も設置されていた。このような施設・設備を使い、榎本先生のような研究者としてのキャリアを持つ教員がコース長を務めるSAコースに、どのような生徒が集まるか注目したい。

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