私立中学

共学校

しょうわがくいん

昭和学院中学校

この学校をブックマークする

この学校の資料請求をする

デジタルパンフレット

スクール特集(昭和学院中学校の特色のある教育 #5)

サイエンスの世界で生徒と教員が本気になって遊ぶ「研究活動」がスタート!

コース制を採っている昭和学院中学校・高等学校は今年度、サイエンスアカデミーコースを開設。同コースの一番の特色である「研究活動」について、コース長の榎本裕介先生に話を聞いた。

指導教官の専門分野に特化した研究チームで活動

2020年度にコース制を導入した同校には、実践的な英語力と国際感覚を身につける「インターナショナルアカデミー(IA)」、最難関国立大学を目指す「トップグレードアカデミー(TA)」、総合的に学ぶ力で文武両道を極める「アドバンストアカデミー(AA)」、好きなことを掘り下げ、目指す道を自らデザインする「ジェネラルアカデミー(GA)」の4つのコースがあり、この4月に新しく「サイエンスアカデミー(SA)」コースをスタートさせた。

同コースの目的は「生徒も教員も飽くなき科学への探究心を育む」こと。その手段として、週1時間、科学研究に没頭する「研究活動」の授業を設けている。榎本先生によると、週1時間の授業というのは、指導教官が一緒に活動するという位置づけで、生徒は放課後などの空き時間も利用して自由に活動しているという。

研究活動は、1.風力発電、2.発生学、3.地球環境科学、4.動物行動学、5.音響工学、6.食品化学、7.理論物理、8.植物遺伝学という8つの領域チームに分かれて行う。1つのチームは、中1・高1合わせて5~7名、それぞれに1名の指導教官(教諭)が付く。

「研究テーマは、よくある“生徒の興味関心”や“社会に役立つ”などではなく、指導教官が持っている専門領域の自然科学研究に振り切っています。その狙いは3つあって、1つは、中1・高1という短い人生経験の中からテーマを決めてしまうのは、視野が広がらずにもったいないということです。2つ目は、指導教官が共同研究者の一人として出し惜しみなく議論をし、生徒とも一人の研究者として接することが狙いです。これにより生徒も教員も当事者意識が高まり、教員自ら研究を楽しんでいる姿を生徒に見せることもできます。3つ目は、指導教官の専門領域であれば、きちんとした研究の成立が実現しやすいからです」(榎本先生)

▶︎榎本裕介先生

8つの専門領域の研究内容

次に、榎本先生に8領域の研究内容について簡単に解説してもらった。

1.風力発電 
「風力発電の装置の形や、どのように風を受ける装置があればよいかを考えます。巷で見る風力発電の3本の羽根は、私のような素人からするともっと大きいほうがよいように思えますが、流体力学から考えるとこの形や大きさが最適なのです。一方、もっと小さなスケールの風力発電だったらどのような形がよいのだろうか? 学校には3Dプリンターもあるので実際に装置を作って考えていきます」

2.発生学
「受精卵から成体になるまでの過程を『発生』といいます。受精卵からどうやって細胞分裂をして1個体になるのか、そのメカニズムを研究します。たとえば、ある1つの遺伝子を壊したら左右が逆になるなどの変化があったとします。そこから、この遺伝子にはこういう役割があるということを突き止めていきます」

▶︎風力発電

▶︎発生学

3.地球環境科学
「本校の近くに真間川という川があり、そこの生態系に注目した研究活動です。具体的には、雨量や風速、空気中の二酸化窒素などを測定し、この条件だとこんな生物の層が多くなるというように地域に根付いた生態系の研究を行います」

4.動物行動学
「野生に近いフィールドの動物の生態を解明するのがメインの研究です。準備段階として学校内にビオトープを作り、生物の活動の観察などを行います」

5.音響工学 
「音をテーマにした研究をします。たとえば車のドアの開閉音は高級車だと重厚感があり、軽自動車は軽快です。これも『この音だったらユーザーは高級感を感じる』というように分析をして音を作るそうです。音の違いによって人間が心理的に感じることなどを分析します」

6.食品化学 
「指導教官は、年間にラーメンを300杯食べるほどラーメンをこよなく愛する人間です(笑)。自家製麺などは、職人の技による部分も大きいですが、それを科学的に分析し、ゆくゆくはラーメン屋さんと協力して実験をしたいと考えています。実際、茹でた麺を切って電子顕微鏡で見ると、茹で方によってでんぷんの要素が変わってきます。Aの条件とBの条件で、どちらがどう変化するかを実験して検証します」

7.理論物理 
「分子や原子よりももっと小さい量子の世界を扱い、数式を書いて計算し、理論が成立するかどうかを証明する理論科学を学びます。実験科学系のほうが注目されやすいですが、その根底には理論科学があり、理論の成立が証明されて初めて、実験科学の研究を進めることができるのです」

8.植物遺伝学 
「私(榎本先生)の担当です。実は前任校(広尾学園中学・高等学校)の研究を引き継ぎ、さらに元をたどれば、東大農学部の研究材料の一部をもらってきたものを研究しています。分野としては、ある遺伝子を壊すとこんなふうに植物体の様子が変わる。だからこの遺伝子はこういう役割を持っている、ということを解明します。私の専門は植物栄養学なので、植物が根から栄養を吸い取るメカニズムや遺伝子の機能を明らかにする研究をシロイヌナズナというモデル植物を使って行います」

▶︎植物遺伝学

▶︎地球環境生物学

興味がなかった分野も研究することで面白さを発見

4月から始まった研究活動は、まず4週間にわたり、8領域それぞれの研究内容の説明を体験授業という形で実施。その後、生徒に希望調査をして、チーム分けを行った。「一応、第3希望まででグループ分けをすることができました。ただ、第2、第3希望で入ったとしても、研究を始めると楽しくなり、熱中していくものです。前任校で経験したことですが、中学で第3希望のチームになった子が、3年間が終わって高校から元の第一希望に変わりたいか聞いたところ『ここまでやってきたのだから、今の研究を続けたい』という生徒が大半でした。ですので、本校の生徒にも『研究領域を知らないだけだから、むしろ第2、第3希望のほうが視野を広げるチャンスになるかもしれないよ』『どの研究チームに入っても、君たちの将来につながるわけではないので、安心して研究に取り組もう』と話しています」と榎本先生は語る。

取材した9月6日は「研究活動」の授業の3回目で、各チームともまだ研究の準備をしている段階だった。中には夏休みに自主活動をしたチームもあり、たとえば「動物行動学」のチームは、市川市動植物園を訪問し、ビオトープの作り方やゲンジボタルの飼育、ニホンアカガエルの研究などについてヒアリングをしたそうだ。また「風力発電」チームの1人の中1生は、夏休み中も学校に通い、指導教官にアドバイスを受けながら3D CADを使って風車を設計。授業でその発表をしていた。

榎本先生担当の「植物遺伝学」のチームも夏休みに3回実験を実施。残念ながら失敗に終わったそうで、この日はリベンジの作業を行っていた。「生徒が私の専門範囲内で研究をするのなら、みな植物体からDNAを抽出し、PCRをかけて確認するという実験をすると思います。ですので、スキルの習得の練習を夏休みに行いました」

知識を得る楽しみを知り、その先の知識を作り出す側の人へ

研究活動について榎本先生は、成果の縛りは設けていないと話す。「3年、6年間で成果が出なくても、後輩へ引き継げばよいのです。研究というのは、正しいことをやっても仮説が外れて成果にならないことはあります。もし運よく自分の研究が成果として出たら外部で発表する機会があるよ、というスタンスをとっています」

研究活動は成果が目的ではないが、結果として科学リテラシーの向上や実験のスキル、スケジュールや情報の管理能力、プレゼン資料の作り方などさまざまな力が身につくと榎本先生は言う。「進路の実現もその一つです。また、前任校の話になりますが、2014年に東大の推薦入試が始まった年に、2人の生徒が合格しました。2人とも研究ではいい結果が出せませんでしたが、研究に向き合う真摯な姿勢が評価されたのだと思います」

「それとまた違うエピソードですが、昨年、高校を卒業した人が書いた研究論文を、現在、本校の中学1年生が読んでいます。それは、葉と茎の間にある『葉柄』という棒状の部分がある変異体で育てると長くなり、その実験から葉っぱの形態形成に関わる遺伝子について生徒たちが6年間かけて研究し、まとめたものです。テーマ選びを生徒の興味関心に合わせないと言ったのは、こういう理由からです。中1で『葉柄』に興味を持っている生徒なんていないでしょうからね。でも、サイエンスの分野では、植物の形態形成というのは重要な要素の1つであり、研究テーマだと理解すれば面白くなります。興味のない分野だと思っていたことが、実は面白いんだということが、世の中にはたくさんあるんですよ。ちなみに『葉柄』を研究した生徒の1人は、筑波大の医学部に総合型選抜で、もう1人は東大農学部に推薦で合格しました」

さらに榎本先生は、研究活動が他の教科の学びにもつながっていければよいと話す。「学ぶというのは新しいことを知ることであり、本来は楽しいことなのです。しかし、やらされている感があると途端に面白くなくなってしまう。ですので研究活動を皮切りに、全科目の学びの見方を変えてほしいと思っています。また、研究を通してわかるのは、授業で使っている教科書はとても素晴らしい書籍であるということ。知識を得るために情報を探したり、得た情報をまとめるのは大変な作業です。それをたくさんの専門家がコンパクトにまとめてくれ、校閲もしているので間違いがありません。教科書を使えば、こんなに効率的に学べるんだということを実感してほしいですね」

最後に榎本先生は研究活動の抱負と受験生へ向けてメッセージを語ってくれた。「まず生徒たちには、世の中にはわからないことがたくさんあることを理解し、知らないことに対して謙虚になってほしいと思います。そして新しい知識を得ることの楽しさを感じ、さらに知識を得る側ではなく、作る側が楽しいと思えるようになるとよいですね。小学生の皆さんに言いたいのは『科学は遊ぶ道具』だということ。小6では勉強になっているでしょうが、もう一度、幼い頃の気持ちに戻り、科学の世界で本気になって遊びませんか。それが研究成果として、知識を作る側になれるということをこの学校で体験してほしいと思います」

<取材を終えて>
研究活動は、最初は興味のなかったことに興味を抱いたり、知らないことを知る楽しさがあることが、榎本先生の言葉から伝わってきた。とかく学校の学習は、大学進学のため、将来に役立つから、という理由が求められるが、本来は学びというのは楽しいことなのだということを改めて教えてもらった。今年始まった研究活動に生徒たちがどう取り組んでいくのか、来年また取材をしてみたい。

  • この学校をもっと詳しく知る
  • スクール特集トップに戻る

この学校の