スクール特集(東京成徳大学中学校の特色のある教育 #7)

子どもの心と体に寄り添う養護教諭 保健室を“安心できる居場所”へ
東京成徳大学中学・高等学校には2名の養護教諭が在籍し、生徒たちが毎日、安心して学校生活を送れるよう見守りサポートしている。同校の保健室の取り組みを取材した。
生徒の訴えを否定せずに受け止め、対応にあたる
近年の保健室は、けがや体調不良の時に行く場所だけではなく、心のケアなども行われ、生徒たちの学校生活を支えていると言われる。同校ではどのような取り組みが行われているのだろうか。石神茉衣先生と甲斐美佐緒先生、2人の養護教諭に話を聞いた。なお、石神先生は病院の看護師を経て、昨年、養護教諭として同校に赴任。甲斐先生も看護師、保健師、養護教諭の経歴を持ち、介護等で退職した後も児童相談所、大学の保健管理センターに勤め、4年前より非常勤で同校に勤務している。
保健室の1日は、全学年で出欠を取った後、「感染症の生徒はいないか」「長期間休んでいる生徒はいないか」など、欠席状況を確認する作業から始まる。そしてほぼ毎日、1限目の前から、生徒が保健室を訪ねてくるという。その対応にあたり、合間にはスポーツ振興センター(学校の災害共済給付)の事務作業や、先生やスクールカウンセラーと情報を共有したりしている。
石神先生は、「保健室を訪れる大半の理由は、けがや体調不良ですが、メンタルの不調や、用はないけれども『保健室は居心地がいいから』と来る生徒も一定数います」と言う。
「『おなかが痛い』『頭が痛い』と言って保健室に来る生徒も、表情を見ていると、『他にも何か理由がありそうだな…』とわかるケースも多くあります。特に目の表情に表れるので、注意して見ています。石神先生と共に看護師の経験があって良かったと思うのは、体調不良かどうかの見極めができることでしょうか。顔色やバイタルサイン(体温や脈拍、呼吸、血圧などの生命兆候)をチェックして、異常がないか2人で確認し、正常な場合でも何となく保健室に居残りたい子には、そのように対応しています。石神先生は、『その生徒にどういうケアをしてあげるのが良いのか』、その判断と安心できる場をつくるのが上手だと思いますね」と甲斐先生は言う。
その言葉を受け、石神先生は、「まずは生徒の訴えを否定しないように心がけています。例えば、『おなかが痛い』と言っている生徒に対して、医学的に問題がないと判断しても、『大丈夫だから、授業に戻りなさい』などとは言いません。もちろん、その子を長く見ていて、そういう対応が良いこともありますが、そうでない場合は生徒の言葉を受け止め、『それでどうしたいの?』と、本人に尋ねます。『保健室で休みたい』と言えば、休ませますね。ただ、長時間ずるずるといかないように、時間は決めるようにしています」と語る。

▶︎石神茉衣先生
メンタルの不調をいち早く察知し、必要なところにつなげる
生徒たちの体調不良にはメンタルから来ていることも多いと、石神先生は言う。「そういう時は、いろいろな話をして原因を探っていきます。話したくない、話すことができない生徒もいますが、1回目は話せなくても、何か伝えたいことがあれば、また保健室に来ます。2、3回目に、もう少し踏み込んで聞いてみると、自分の事情や悩んでいる事を話してくれたりします。場合によっては、スクールカウンセラーの先生に相談してより良い方法を探ったり、担任の先生に話して、そこから生徒指導の先生につないでもらったこともありました」
甲斐先生は、「私の経験上、メンタルの不調を持つ子どもは確実に増えていますね」と話す。「家庭環境や社会の状況が変化し、子どもたちも忙しくなりました。また、コロナ禍もあって、コミュニケーションをする機会も減っています。そうしたなか、言いたいことがあっても自分の中に留めたり、SNSに頼ったりするようになっていきました。でも、そこにも限界を感じて苦しくなると、体調不良を訴えに来ます。石神先生が言うように、生徒が保健室に来るのは、何かを求めているから。それをいかに早く察知できるか、また必要なところにつなげてあげられるか。それが、今の保健室の役割なのかなと考えています」
一例として過去に、メンタルがつらい時、トイレに閉じこもってしまう生徒がいたという。そのことを担任から聞いた石神先生は、その生徒に「つらい時は保健室においでよ」と声をかけたそうだ。「最初の頃は、保健室に来ても寡黙でしたが、それでも回数を重ね、世間話などもしていたら、『自分は今、こういう状態で…』と心を開いて話してくれるようになりました。そうして、生徒を診ているスクールカウンセラーともやり取りをして、保護者の方とも連絡をとって、医療へつなげました」
また、「保健室で休みたい」と要望する理由も様々で、ある生徒は特定の授業の時だけ保健室を訪れていたそうだ。そのことに気づいた石神先生が理由を尋ねると、「私は授業中もマスクを外すのが嫌なんです。でも、音楽でリコーダーを吹く時は外さなくてはいけないから、授業に行きたくない」とのことだった。そこで、音楽の先生と話をして、「マスクをしたままでもリコーダーを吹ける」ことを生徒に伝えたら、授業に参加するようになったという。

▶︎甲斐美佐緒先生
保健室を生徒が成長するための一時的な避難場所へ

同校の保健室は、 生徒たちにとって “学校の安心基地”のような存在だ。そのことを踏まえつつ、石神先生は、「保健室は誰が来ても良いし、相談にものりますが、一時的な避難場所としての役割でありたい」と話す。「ですので、『頭が痛い』、『なら、ベッドで休もうか』といった対応ではなく、生徒自ら『私は頭が痛いので、こうしたい』と伝えてほしい。言えない場合は、こちらから選択肢を提示して決めてもらっています。明らかに体調が悪い場合は別として、生徒が保健室でワンクッション置いて、学校生活に戻っていけるように後押しをしたいと考えています」
「悩みの内容も発達段階で変わってきますね。高校生になると単位の問題もあるので、より自分で決めることが重要になってきます。『保健室でここまではできるけれど、これはできないよ』と線引きをしてあげないと、返って生徒が悩んでしまいます。自分で決めてやっていけるようにトレーニングしていくのが、私たちの関わり方の目標であり、生徒も自分で決められるようになると成長できますね」と、甲斐先生も認識をそろえる。「また、この学校は教職員みんなで子どもたちを見守る、温かな学校だと感じています。先生たちとも話がしやすく、一緒に生徒を育てようという協力関係が築かれています」
そして、石神先生と甲斐先生は、「中高時代は多感な時期で、生徒も多様です。一人ひとりに寄り添い、本人に何かしら気づきがあったり、行動変化が現れた時は嬉しいですし、養護教諭としてのやりがいを感じます。これからも生徒たちが安心して学校生活が送れるよう支援をしていきます」と、力強く語った。

<取材の補足と感想>
以前から養護教諭は、けがや体調不良の応急処置、健康診断や感染症対策、心のケアなど、さまざまな役割を担っていたが、近年は特にメンタルヘルスの対応が大きくなっているように感じる。今回、2人の先生へのインタビューからも、「同校の生徒たちは家族や先生に言いづらいことも、保健室では本音で話ができるのではないか」と感じた。ちなみに、同校のスクールカウンセラーは週3回、学校(保健室)に来ており、予約でいっぱいだそうだ。石神先生は、「保健室に来る生徒が自分で予約するには壁が高いだろうから、『ちょっと活用してみる?』と話をつなげたり、担任の先生と情報を共有して事を進めたりしていることが、予約の多さの理由ではないか」と分析している。中高生のメンタルの不調は、どの学校でも増えていると思われるが、同校は保健室と先生との関わりも深く、しっかりと対応していることが伺える。子どもを預ける保護者にとっても、大きな安心材料になっているのではないだろうか。
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