スクール特集(中村中学校の特色のある教育 #6)

成長を実感! 米コロラド州・デンバーで過ごす「海外サマースクール」
中村中学校では、2・3年生の希望者を対象とした「海外サマースクール」を実施。独自プログラムの狙いや参加した生徒たちの変化を取材した。
中村中学校では、英語の発表会(English Day)や国内ウィンタースクール、海外サマースクールなど、授業以外でも英語に触れる様々な機会を用意している。昨年度、海外サマースクールに参加した生徒2人と、引率した森にこ先生に話を聞いた。
教員引率型の独自プログラム
同校では、夏休み中にアメリカ・コロラド州のデンバーで10日間過ごす海外サマースクールを実施(2年生・3年生の希望者)。コロナ禍では中断せざるを得なかったが、10年以上前から実施している同校の独自プログラムだ。同校の教員が引率し、プログラムの内容は国際教育部の教員が考えているという。
「中学生だと、まだ旅行などで海外に行く機会はそれほど多くないと思います。ですから、学校のプログラムとして異文化や生活習慣の違いなどを体験する機会をつくり、体験を通して実践的な英語力の向上をはかることが目的の1つです。2人1組でホームステイをして、友達と協力しながらホストファミリーと英語でコミュニケーションを取っていきます。2つ目の目的は、他国で過ごすことで自国を見つめ直し、日本の文化を再認識することです。そのために、滞在中に日本食を作ったり、日本の遊びをホストファミリーに紹介するなど、日本の文化を伝えるプログラムも組まれています」(森先生)
同校の高校は、「先進コース」「探究コース」「国際コース」の3コース制となっており、「国際コース」は全員が英語圏の国(アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド)の高校に原則1校1名で留学する。
「他国の文化やよさを知って世界に目を向け、高校で国際コースに進むなど、自己の可能性を広げることが3つ目の目的です。海外サマースクールの定員は24名で、昨年度は18名が参加しました。10日間という短い期間ではありますが、生徒たちの成長は十分に実感できます。初日にホストファミリーと対面したときは、とにかく笑顔で『Thank you!』と言うのが精一杯でしたが、少しずつ会話が楽しめるようになっていきました。午前中に参加する語学の授業でも最初はあまり発言できていなかったのですが、日を追うごとに英語で発言できるようになっていったのです。サポートしてくれている学生ボランティアとも、段々と打ち解けて話せるようになっていきます。サヨナラパーティーではホストファミリーや先生方が集まりましたが、そこでも積極的に楽しく会話をしている様子が見られ、初日と比べるとそれぞれの成長が感じられました」(森先生)
▶︎森にこ先生
2024年度海外サマースクールに参加した生徒にインタビュー
Kさん(参加当時2年生 写真右)
Bさん(参加当時3年生 写真左)
――海外サマースクールに参加しようと思った理由を教えてください。
Kさん 英語を学んでいて、リスニングがあまりできていないなと感じていたんです。本場ではどうか試してみたいという気持ちがあり、アメリカの文化にも興味があったので、いい機会だと思って参加しました。
Bさん 2年生のときも希望したのですが、抽選で外れてしまいました。3年生が優先なので、2年生の枠が定員オーバーとなってしまったのです。行った人からは、ホストファミリーとの会話が楽しかったとか、食事は日本とは違う美味しさがあるなどと聞いたので、私も実際に体験したいと思って3年生でもう一度申し込みました。
▶︎Kさん
――デンバーの印象を教えてください。
Bさん 東京のような大きなビルはなく、滞在したのは住宅が集まっている地域で、飲食店は店内席よりテラス席の方が多かったです。多くの住宅には庭があり、庭にブランコがある家もありました。私のステイ先には小さいプールがついていて、アメリカと日本では家のつくりも広さも全然違います。滞在してみて気づいたことは、ほとんどの家に地下室があったことです。私が滞在したのも地下室でしたし、友達が滞在した家も訪問しましたが、やはり地下室がありました。
▶︎Bさん
――滞在先はどのような家庭でしたか?
Kさん お父さんと16歳の息子、10歳の娘の3人家族でした。お兄さんが妹の面倒をよく見ていたことが印象に残っています。
Bさん お父さんは仕事で他国へ行っているので、お母さんと16歳の長男、2歳の次男の3人で暮らしている家庭です。お母さんはスクールカウンセラーとして働いているので、小さい弟の世話や家事はほとんどお兄さんがやっていました。お兄さんが作ってくれた料理は、とても美味しかったです。パンの中にミートボールみたいなお肉が入っていたオリジナルのレシピは、辛めのソースがとても美味しい料理でした。レストランにも連れて行ってもらいましたが、それが一番印象に残っています。
――滞在中に困ったことはありましたか?
Kさん 標高が高いので水をたくさん飲むように言われたのですが、友達はステイ先の水が合わなくて困っていました。日本の水よりかなり硬度が高かったようです。友達は、日本の水に近い軟水をスーパーで探して買って、それを飲んでいました。
Bさん 私のステイ先は快適でしたが、友達のところは虫がいっぱいいて大変だったそうです。
――楽しかったことを教えてください。
Kさん 休日にいろいろなところに連れて行ってもらいました。テーマパークではトランポリンのような遊び場を体験したり、伝統的な馬のショーを見たことが印象に残っています。チュロスの歩き売りも、日本ではあまりないなと思いました。
Bさん 私も休日にはテーマパークなどに連れて行ってもらいました。私は子どもと遊ぶのが好きなので、2歳の弟とテーブルの周りで追いかけっこをしたり、お絵かきをしたのも楽しかったです。やんちゃな子でしたが、一緒に折り紙もしました。最後にホストファミリーから手紙をもらったのですが、2歳の子が私のことを「ベストフレンドと呼んでいた」と書いてあって嬉しかったです。
――滞在中にどのような日本文化を紹介しましたか?
Kさん 10歳の妹と一緒に折り紙をしました。一緒に鶴を折ったりしましたが、英語でやり方を教えるのは難しかったです。身振り手振りを使いながらなんとか完成できたら、とても喜んでくれて、棚に飾っていました。
Bさん 事前学習で、iPadを使って日本の文化を紹介するスライドを英語の字幕を付けて作ったので、それを見せながら5分程度のプレゼンをしました。私が選んだテーマは、男女別のランキングで紹介する人気のお菓子です。お花の形などをした和菓子(練り切り)の写真を見せて作り方を説明したときには、「こんなものを作れる人がいるんだ!」と驚いていたことが印象に残っています。兄弟は金平糖の写真にも、「綺麗だね」「食べてみたい!」と言っていました。
――英語力の変化は感じましたか?
Kさん 最初は話すスピードも速いなと感じていたので、聞き取れるのは単語だけでした。 10日間なのでそれほど劇的な変化はありませんが、初日よりは会話としてのやりとりができるようになったと思います。
Bさん 私も最初は単語しか聞き取れませんでしたが、単語と身振り手振りの状態から、文法は少し間違っていたとは思いますが文章で話せるようになりました。ホストファミリーも、簡単な文法で話すように気遣ってくれたことがありがたかったです。
――サマースクールに参加する前後で、変わったことはありますか?
Kさん ネイティブの先生の授業で、前より積極的に話せるようになったと思います。行く前は、間違ったらどうしようという気持ちがあり、縮こまっていたのですが、参加後は そのような怖さがなくなってのびのびと会話をしようという気持ちになれました。
Bさん 行く前は、ニュースなどで銃の問題なども聞いていたので、少し怖いイメージもありました。幸い、危ない目にあうこともなく、みんなフレンドリーに話しかけてくれたので、現地ではのびのびと過ごせました。いろいろな体験を通して現地の生活なども知ることができたので、サマースクールに参加しなかった人に、デンバーのことを具体的に説明できるようになったと思います。
――英語学習に対する意識の変化はありますか?
Kさん もっとたくさんの人と話せるようになりたいと思うようになりました。私は今年も、海外サマースクールに参加します。今年はステイ先が多く確保できて、何人かシングルステイができるそうです。友達に頼らずに乗り切ってみたいと思って、シングルステイに申し込みました。去年はどうしてもわからないときに翻訳機能を使ってしまったので、今年は使わないようにして、もっと成長したいです。今回は、現地の学校と絵本プロジェクトも行っていたので、その生徒たちともサマースクールで初めて対面します。メールでやりとりしながらグループでストーリーを考えて、デンバーの生徒がストーリーに合った絵を描いてくれました。
Bさん ステイ先でお兄さんは、音楽をよく聞いていました。マイケル・ジャクソンの曲やクラシックなど、選曲は幅広かったです。私は作詞・作曲をするのが好きなので、英語の歌詞も考えてみたいと思うようになりました。
――アメリカの家庭に滞在したことで、何か変化はありましたか?
Kさん 行く前は家事の手伝いなどはあまりしていませんでしたが、16歳のお兄さんがいろいろと手伝っているのを見て、私も自然に食後の後片付けなどを手伝うようになりました。帰国してからも家事を手伝うようになったので、両親はとても喜んでいます。
Bさん お兄さんは私と年齢も近いのに、家事をたくさんやっているのですごいと思いました。私も洗濯をしたり、お弁当箱を洗うなどの手伝いはしていましたが、お兄さんと比べたら少ないです。ステイ先で家事の手伝いをしてみて、日本での家事ができないとアメリカの家事も手伝えないと実感しました。一番苦労したのは、洗濯機が英語表記だったので使い方がよくわからなかったことです。お兄さんに何度も教えてもらいましたが、日本の洗濯機とはかなり操作方法が違っていました。ホストファミリーが気に入っていた料理を家でも作ったら、家族から美味しいと喜んでもらえたことが嬉しかったです。
――海外への興味は広がりましたか?
Kさん 日本とは景観がかなり違っていたので、アメリカ以外の国も見てみたいです。例えば、フランスは街並みが整っているイメージがあるので、いつか行ってみたいと思っています。
Bさん ずっとアメリカへ行ってみたかったので、行けたことが嬉しかったです。ホストファミリーと過ごす中で、日本との文化の違いも実感できました。英語にもっとたくさん触れて、英語漬けの環境で過ごしてみたいという思いもあり、アメリカの他の都市にも行ってみたいです。
<取材を終えて>
Kさんはネイティブ教員の授業で失敗を恐れずに話してみようという気持ちになれ、Bさんは英語の歌詞を考えてみようという気持ちになったことも、プログラムの成果といえるだろう。ステイ先の環境にもよるが、16歳の少年が中心となって家事をこなしている姿を見る機会なども、日本にいてはあまり体験できないことかもしれない。そういった面での成長も、可能性を広げることにつながっていく。10日間という短い期間ではあるが、ホームステイや現地校での授業などが組まれているので、様々な面での成長が期待できるプログラムだと感じた。