私立中学

女子校

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しょうなんしらゆりがくえん

湘南白百合学園中学校 

スクール特集(湘南白百合学園中学校の特色のある教育 #1)

アクティブに楽しく学び「心」を育む授業

キリスト教の精神に基づいて、中高一貫の女子教育を行っている湘南白百合学園中学高等学校。6年間を通して週1時間行われている「宗教倫理」の授業とは?

湘南白百合学園中学高等学校では、6年間を通して宗教倫理の授業を週1時間実施している。心の成長にとって大切な時期に、キリスト教の普遍的価値観に触れることで、他者を尊重する姿勢や社会に奉仕する心を育んでいく。今回、宗教倫理の授業を担当している山田千夏子先生に話を聞き、中1の授業を取材した。

一人ひとりが「かけがえのない存在」

同校では「愛ある人として」を教育理念として掲げ、キリスト教(カトリック)の精神に基づいて中高一貫の女子教育を行っているが、意外にもキリスト教の信者は少ないという。

「キリスト教の信者は、各学年で多くても10人ぐらいです。併設小学校でキリスト教に触れてきた生徒もいますが、学年の半分弱はキリスト教のことを知らずに入学してきます。入学式の日からお祈りが始まるので、所作などを知らないと不安があるかもしれませんが、クラス担任はもちろん、併設小学校で学んだ生徒たちが教えてくれるので心配はいりせん。教員たちは『間違っても大丈夫』と声をかけていますし、生徒たちはあっという間にできるようになります」(山田先生)

「一人ひとりがかけがえのない存在であること」に気づいてもらいたいという思いをこめて、中1から高3まで週1時間、宗教倫理の授業を行っている。

「中1の授業では、キリスト教とはどんな宗教か、どんな考え方をしているかについて学び、中2、中3と学年が上がると、聖書のたとえ話や有名な聖人の生き方を見ながら、自分の生き方を模索していけるような授業を展開しています。自分の夢や理想をかなえることも大切ですが、人は一人で生きているわけではありません。人と助け合うこと、支え合うことの喜びを感じてほしいと思っています。高3になって進路を決めるときに、宗教倫理での学びから『誰かのために』という選択肢が生まれてくることもあります。自分の将来を考える上で、助けとなる役割を果たせるような授業にしていきたいと思っています」(山田先生)

▶︎山田千夏子先生

全員で心を合わせて行うミサ

学校全体で行うミサは年に3回、それ以外に近隣の教会へ行って神父様の話を聞く修養会を年に1回実施している。お祈りは、朝礼、昼食、終礼の3回、教室で日常のあいさつと同じように生活の一部として行っている。

「学校全体で参加するミサは、学園記念日、クリスマス、卒業感謝の3回、講堂で行います。修養会では、教会に初めて行く生徒もいるので、家や教室とは違う雰囲気であることを感じながら自分を見つめ、自分の生き方を考える時間を持ちます。宗教の時間やミサなどを通してキリスト教を信じているかいないかは関係なく、誰かが大事にしているものを大切にする姿勢を身につけてほしいと思っています」(山田先生)

校内でのミサは、全員でモーツァルトのミサ曲を歌うことはもちろん、侍者(司祭に付き添う奉仕者)などの役割を生徒たちが担う。カトリック信者しかできない部分は信者の生徒が行うが、聖歌隊などは信者ではない生徒たちも手伝う。

「みんなが心を合わせないとミサではないと伝えてあることもあり、どの生徒も受け身ではなく、積極的に手伝ってくれます。ミサの奉仕をする生徒は、学年を越えて行うので、部活動とは違う縦のつながりも経験します。ミサは厳かなイメージがありますが、間違えたり失敗したりしても大丈夫と伝えているので、中1は伸び伸びと参加しています。月に1回、有志で集い、ミサを行っていますが、信者でなくても参加できるので、気軽に参加する生徒もいます」(山田先生)

宗教倫理の授業ではコミュニケーションが大切

宗教倫理の授業は、中学に入学してから初めてキリスト教に触れる生徒たちでも、親しみやすく楽しく学べるように様々な工夫をしている。

「中1の1学期は、人とつながることやコミュニケーションの楽しさ、協力することの大切さを実感できるような授業を行っています。私たち人間はそれぞれに得意なことと苦手なことがあるので、お互いに助け合い、一人でできることでも協力するともっと楽しくなることをゲームなどを取り入れて体験します。ゲームの一部に聖書を使うなどして聖書の使い方、開き方を学び、その後、『神様』のイメージについて班ごとに話し合います。仏教を知っている生徒は、大仏みたいな神様を描いたり、Tシャツを着た神様がいたり、今年度もいろいろな神様が出てきて盛り上がりました。そこから『では、キリスト教の神様はどうかな?』と、聖書から神様の存在について学びます」(山田先生)

宗教倫理の授業では、「人を傷つける発言はしない」「話を聞く時間はきちんと聞く」という約束があるが、驚いたり感動したりしたときは、思ったことをどんどん口に出してよいことになっている。

「それぞれの考えを尊重した上で、本校の教育の根底にある価値観としてキリスト教のことを知っていてほしいと考え、授業を行っています。宗教倫理の授業では、たくさん話して、たくさんコミュニケーションをとることが大切だと思っています。授業中は『すごい!』『面白い!』など感想や驚きの声があがって、とても賑やかです。どのような考え方をしても、評価には関係ありません。例えば、神様はいないと思っているなら、それはその人の考え方だと思います。宗教倫理の授業は、心の種まきだと考えています。今すぐに芽が出なくても、何かのときに思い出して、どこかで芽生えればいいのです。迷ったときや人生の岐路に立ったときに、助けや支えになればいいなと思っています」(山田先生)

宗教倫理の授業(中1)を取材

今回取材した中1の授業では、「多様な生き方を考える」というテーマの中でマザー・テレサを取り上げた。マザー・テレサがどのような生き方をしてきたか、インドで貧しい人々のためにどんなことを行ってきたかを学んでいく。

修道院を出たマザー・テレサは、スラム街で青空教室を開き、文字の読み書きを教え、衛生的な生活習慣を整えた。現在でもスラム街では水洗トイレの普及率が低く、屋外で穴を掘って用を足さなければならないと説明した山田先生は「もし、学校にトイレがなかったらどうしますか?」と生徒たちに問いかけた。すると生徒たちは「布を巻く!」「コップを使う!」など思ったことを自由に発言。山田先生は、遠いインドの話ではなく、自分たちのこととして考えさせた。その後生徒たちは、プライバシーが守られない環境では女性は用を足すことが難しいため、我慢してしまうという現実を知る。我慢した結果、病気になってしまうことも多かったので、マザー・テレサはそのような環境を少しずつ改善しようとしたのだ。

後半は、日本にも「相対的貧困」という見えにくい貧困があることを説明。例えば、テニス部に入ってラケットが必要になったとき、ラケットが買えないわけではないが、多くの生徒が2万円のラケットを買う中で、5千円のラケットしか買えない生徒もいる。金銭的に余裕がない家庭では、他の生徒より選択肢が少なくなり、体験できることも少なくなってしまうのだ。その結果「何で私だけ?」という気持ちになり、自己肯定感が低くなってしまうことが日本で問題になっていることを伝えた。

最後に、マザー・テレサが日本人に向けた「日本人は心の中にぽっかり穴があいているのではないでしょうか。貧しい人たちの体をケアする必要があるように、寂しい思いをしている日本の人たちには、ちょっとした言葉をかけてあげてください。温かい笑顔を見せてあげてください。それは私がインドで貧しい人々にしているのと同じことなのです」というメッセージを紹介。山田先生は、小さなことでも、いいことを積み重ねられる人になってほしいのでマザー・テレサを取り上げたのだと説明して、マザー・テレサの話を締めくくった。

宗教倫理の授業は4人の教員がそれぞれのアプローチで工夫

宗教倫理の授業では、授業の中で学んだこと、感動したことなどを振り返り、思ったことや自分の経験を書いて提出するリアクションペーパーが用意されている。

「授業のまとめとしての役割がありますが、中には『入学前に辛いことがあったけれど、この学校に入学して友達ができて、今日の授業を聞いてすべてがつながりました』と書いてくれた生徒もいました。悩みや自分の気持ちを吐き出すきっかけになることもあるようで、コミュニケーションツールとしても使っています。宗教倫理の授業でも学期ごとに期末テストがあり『宗教の授業で成績がつくの?』とビックリされることもありますが、テストの点数だけで成績がつくわけではありません。授業への取り組みや、前述のリアクションぺーパーも評価の参考にしています。テストは、授業で学んだことを確認する問題や、自分の考えを書く問題など、授業をきちんと受けていれば解ける内容です」(山田先生)

同校では、山田先生のほかに、校長先生と男性教員2名が宗教倫理の授業を担当している。

「どの教員も、一人ひとりが大事な存在であり、一人ひとりに価値があることを伝えたいと思って授業をしていますが、それぞれ切り口が違います。それぞれの経験に基づき、ビデオ教材を使ったり、修学旅行で行く北海道と絡めてアイヌの話を入れ、マイノリティーの存在について学ぶなど、アプローチ方法も様々です。担当は学年ごとに変わるので、それぞれの授業を受けた後、振り返ってみたら『どの先生も、言いたいことは同じだったね』と気づいてくれると思います。宗教科の教員は少ないので、本校だけでなく、他校の先生とも情報交換しながら、それぞれがオリジナルの授業を展開しています」(山田先生)

ひとりの「人」としてのつながり

山田先生は、生徒たちに「実体験」の機会を与えることを大切にしている。

「昨年ローマ教皇が来日したとき、私はお花を渡す役を頂戴したので、教皇様から記念にロザリオをいただきました。その話を生徒たちにしたら『ロザリオを見たい!』と言われたのですが、入れ物もロザリオも白だったのでこれを200人近い生徒たちが触ったら……と躊躇したのが、正直な気持ちです。生徒たちにも正直に『私は小さい人間だから、本当は触ってほしくなかったけれど、教皇様だったらどうするか考えて、嬉しかったことはみんなで分かち合うことにしました』と話してから見せました。自分が大事にしているものは独り占めしておきたい気持ちもあるのが人間ですが、大切なことは嬉しいことや楽しいことを分かち合うこと。この気持ちをロザリオを通して生徒たちに知ってほしかったのです。生徒たちはとても喜んで、頬ずりする子もいたりして、とても愛おしそうに触っていました」(山田先生)

同校の卒業生でもある山田先生は、中学・高校生活を送った環境も同じなので、生徒たちとの距離もより近く感じられるという。

「以前、卒業生から『〇〇ちゃんが、あの人は本当に人間らしいって褒めてたよ』と言われたことがあります。『人間らしいね』という言葉は、『すごい先生』『立派な先生』と言われるより私にとっては誉め言葉です。生徒と先生という関係だけでなく、人としてのつながりを感じてもらえたのだとしたら、とても嬉しいです」(山田先生)

入学してからキリスト教に触れた生徒たちからも、日々のお祈りや宗教倫理の授業を通して様々な変化が見えてくる。

「以前中2を教えていたとき、生徒から突然『私のことを愛していますか?』と聞かれたことがあります。『愛する』ということは、ドラマなどで見る恋愛のイメージとは違い、キリスト教の価値観においては、『愛することは大切にすること』です。生徒からこのようなことを聞かれるのは初めてだったので驚きましたが、『もちろん愛しているよ』と答えました。すると、それまでは人との間に壁を作っているような生徒だったのですが、それを機に少しずつ自分の話をするようになってきたのです。自分が大切に思われていることに気づき、自分も誰かのために何かしようという気持ちになったのでしょうか、高校生になったら私が担任をしているクラスの生徒たちの面倒をみてくれるようになりました。その変化には驚きましたし、とても嬉しかったです。宗教倫理の授業を通して、『苦手なことがあってもあなたはそれでいいんだよ』ということが伝わったのかなと思います」(山田先生)

中1の生徒2人にインタビュー

山田先生が担任をしているクラスの生徒2人に、同校に入学してから触れたキリスト教や宗教倫理の授業などについて聞いた。

▶︎写真左から、Oさん、Kさん

――この学校を選んだ理由は?

Kさん 最初にこの学校がいいなと思ったのは、制服がかわいかったからです。母が通勤電車で湘南白百合の小学校や幼稚園の子たちと一緒になることがあり、雰囲気がいいということも聞いていました。中学では茶道部に入りたいと思っていたので、文化祭で茶道部の先輩方にいろいろなこと質問したら親切に教えてくれたのが嬉しかったです。ブースから当時中1だった先輩を呼んできてくれて、受験のことなども教えてくれました。展示物なども凝っていて、頑張っている感じが伝わってきたので、この学校だったら私も頑張れそうだと思いました。オープンスクールのときには片瀬山駅から学校まで案内の人が立ってくださって、私は方向音痴なのでその親切が嬉しくて、なおさらこの学校に入りたくなりました。

Oさん 以前母が外出していたとき急に雨が降ってきて、母は傘を持っていなかったのですが、この学校の生徒が傘に入れてくれたそうです。その話を聞いて、優しい先輩がいる学校だなと思っていました。志望校を決める時期になり学校案内を見たら、優しそうな雰囲気だと感じました。文化祭に来てみたら、先輩方に「ごきげんよう」と挨拶されて嬉しかったです。みんなとても礼儀正しくて、いいなと思いました。

――お祈りや宗教倫理の授業など、キリスト教に触れてみてどうですか?

Kさん キリスト教はお祈りも一言一句間違えてはいけないような、堅苦しいイメージを持っていましたが、そんなことはありませんでした。入学して初めてお祈りをする場面では、周りのみんながやり方を教えてくれたので、わからなくても大丈夫でした。聖書の言葉は難しいですが、宗教倫理の授業では先生がわかりやすく、現代風の言葉に置き換えて教えてくれるのでとても楽しく学べます。

Oさん 宗教倫理の授業では、先生と生徒が対話をしながら授業が進められるのでとても楽しく学べます。他の教科と違って、難しい問題を解いたりすることもありません。毎週、前日になると授業が楽しみです。

――今まで受けた宗教倫理の授業の中で楽しかったことは?

Kさん 「神様ってどんな人?」というテーマで、班ごとに神様のイメージを描いた授業が楽しかったです。「性別はどっちだろう?」とか「どっちでもないのかな?」など、いろいろイメージを膨らませて、班ごとに神様の個性が出ていました。スカートをはいた女子高校生風の神様などもいて、いろいろな神様が見られて面白かったです。

Oさん 「思いやり」「ユーモア」「誠実さ」など、24個のキーワードが書かれた紙に、クラスのみんながその人のいいところを選んで1枚ずつシールを貼るという授業がありました。自分のいいところを見つけてもらって、みんなからシールを貼ってもらえたのが嬉しかったです。 

――この学校のいいなと思うところを教えてください。

Kさん 授業でわからないところがあっても、先生に質問すれば親身になって教えてくれます。教科書通りではなく、わかりやすい言葉にして説明してくれるので、授業もわかりやすくて面白いです。内部生と外部生がいますが、内部生の子がいろいろと教えてくれたり、話しかけてくれたりして、あっという間にたくさん友達ができたので、中学から入学しても心配ありません。

Oさん 入学したばかりの頃、お祈りの仕方などがわからないとき、内部生の友達がいろいろと教えてくれました。私立の女子校なので、鬼ごっこなどはできないと思っていましたが、昼休みや放課後に中庭でおにごっこなど、いろいろな遊びができて楽しいです。お天気がいい日は、中庭から富士山が見えます。富士山をバックにポーズをして、先生が写真を撮ってくれたのが嬉しかったです。

<取材を終えて>
宗教倫理の授業というと堅苦しいイメージがあったが、生徒たちは自由に発言し、笑いもあり、とても活気のある授業だった。今回取材した授業は、マザー・テレサの生涯を通して、カースト制度の残るインドで暮らす人々についても学び、トイレや教育の問題などはSDGsとも重なる内容である。教科名は「宗教倫理」となっているが、国際理解教育でもあり、キャリア教育でもあると感じた。キリスト教的価値観を身近に感じられるように工夫されているので、入学するまでキリスト教に触れる機会がなかった生徒でも楽しく学べるだろう。

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