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和洋九段女子中学校
スペシャルレポート 10

自分の興味あるテーマを1年かけて研究!
理数的思考力を育てる「理数探究」授業

公開日:2022.7.-

2020年度、和洋九段女子中学校高等学校は、先端理系、医歯薬獣医系の大学進学を目指すサイエンスコースを高校過程に設置した。当コースの学びを充実させているのが、理数の論理的なアプローチを学び、自分の決めたテーマで研究、発表をする「理数探究」の授業だ。その取り組みを取材した。

Index

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理数の基礎知識と論理的アプローチを習得

和洋九段女子中学校高等学校では、生徒の志望する進路に合わせて、高校から本科、グローバル、サイエンスの3つの種類からなるコース制を採用している。そのうちサイエンスコースでは、理数的思考力の育成を図るために、1,2年で「理数探究」の授業を展開。この取り組みについて、理科主任の狐塚智康先生に話を聞いた。

理科主任の狐塚智康先生

理数の教員が順番で「理数探究基礎」の授業を担当

同校が2020年度のサイエンスコース設置と共に「理科探究」の授業を導入した理由について狐塚先生はこう述べる。「本校は以前から、PBL*(Problem Based Learning)という問題解決型の授業に力を入れてきました。しかし、どちらかと言えば文系的な課題を扱うことが多かったため、今回、サイエンスコースの新設にともない、コースの学びを深め、際立たせるために理数探究の授業を行うことにしたのです」

「理数探究」の授業は、まず高1の1年間で基礎知識や実験技能などを学ぶ。「理科と数学の6名の教員が交代で、それぞれの専門分野をテーマに授業を行います。理科では生物や化学、物理の分野、数学は確率や統計学などを学習します。たとえば、ある課題に対して『ぱっと見た感じではAが正しいと思えるけれど、確率で計算するとBのほうが妥当であるよね』といった思考トレーニングも取り入れています」

PBL型の授業は、生徒の知的好奇心を喚起するトリガークエスチョンを投げかけるところから始まる。「理数探究」も、普段の授業では扱わないような課題を提示し、それに対して理科的、数学的なアプローチをしていく。
生物が専門の狐塚先生は「ダンゴムシの交替制転向反応の習性をどういう実験や手法で明らかにできるか」というトリガークエスチョンを提示したことがあると話す。「ダンゴムシはモノに突き当たると、右、左、右、左と交互に向きを変える習性があります。その動きをどういう状況のもとで検証できるか、個人やグループで考え、実験の方法を組み立てていきました」

また、化学の専門家である中込校長先生も教壇に立ち「反応の条件をそろえ、反応がちょうど10秒で起こる条件を考えて実証してみよう」というトリガークエスチョンを出して仮説を立てて実験し、そこから考察するという授業を行った。

「通常の理科の実験であれば、教員が定めた方法や手順で行いますが、『理数探究』では生徒自ら実験方法を考えるところから始まります。未知の課題に対してどう論理的に取り組んでいくか、また、理数系なので、実験などを行う際になるべく数値化し、分析・考察するトレーニングを行っています」と狐塚先生は言う。

*PBL(Problem Based Learning)…自ら積極的に参加して、課題に対する最適解を生み出す授業スタイル。1時間の授業内では、トリガークエスチョンの提示→個人による意見構築→グループによる討論→プレゼンテーション→共通認識の獲得という流れで行われる。

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現象を数値化し、分析・考察する力を育成

高2は自分の選んだテーマで研究、発表

高1で理数探究の基礎を身につけ、高2は自分の興味関心のあるテーマを選んで研究し、最後にプレゼンテーションを行う。原則、生徒が主体となって活動し、教員は質問の対応やアドバイスをするなどサポートに徹する。
「ただし、一番重要なテーマ決めは、きちんと説明するようにしています。基本的にテーマは自由に決めてよいのですが、なかには1年間という期間では研究が終わらないものや、壮大過ぎるテーマを選ぶ生徒もいて、学校や自宅など、身近な場所で研究できる形に落とし込むように伝えています」と狐塚先生。

「サポートとしては、昨年は菌の研究をしていた生徒がいたので、菌を培養する寒天培地の作成を手伝ったり、学校内で菌を採取する時にアドバイスをしたりしました。菌を増やして数えるというのはよくある手法ですが、その生徒は学校と自宅で採取を行い、身近な場所の現状を把握できるという点でオリジナリティがあり評価できました。しかし、途中の経過を見ていると、より詳細なデータがあったほうが、根拠がしっかりして良い研究になると思ったので『もう少し、いろいろな数値が取れると思うよ』と生徒の考えを引き出していくように声がけをしました」

生徒たちは夏休みなども利用しながら研究を続け、10月には一度、中間発表を行う。その時に教員から受けた指摘やアドバイスをもとに、研究や考察を修正したり練り上げたりして、3月に最終発表を行う。

大学の学びにもつながる「理数探究」授業

昨年度の個人研究を振り返り、狐塚先生は「初めての取り組みだったので、試行錯誤した部分もありましたが、面白い研究をしていたり、その中でしっかり検証、考察をしている生徒もいて成果があったと見ています。『理数探究』の学びは、生徒たちの理数的な思考力を養います。今後も、現象を数値化するところの手法の工夫や、得られたデータを数学的に処理して、グラフにしたり考察したりすることへ結びつけるといった思考の枠組みを作っていきたいと考えています」と抱負を語る。

「また『理科探究』で取り組んだことは、大学入試の総合型選抜や学校推薦型における志望理由書や面接などのアピールポイントにもなります。さらに、自分で仮説を立て、科学的な論拠で検証し、結論を出すという研究活動は、大学進学後の学びにもつながっていきます。先取り学習ではないですが、高校でデータサイエンスなどの基礎を身につけておくことで、大学での学びがより充実するのではないでしょうか」

一方で、反省点もあると言う。「なかには研究をしているうちに行き詰まり、別のテーマに変えたいと言ってきた生徒もいました。よって今年度は、テーマや方向性について複数の教員が面談し、それぞれの専門の視点からアドバイスを送ったり、生徒と一緒に考えながら研究を進めるようにしています。また、昨年は研究テーマの大半が理科的なもので、数学的な探究が少なかったのも気になりました。高2で0から数学系のテーマを考えるのが難しかったようなので、高1でのアプローチを変えていく必要があるのかもしれません。このように反省点を踏まえ、ブラッシュアップをしていきたいと考えています」

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サイエンスコースの生徒にインタビュー

サイエンスコースの1期生として、2年間、「理数探究」の授業を受けてきた現高3の生徒に、授業の感想や個人研究の取り組みなどについて話を聞いた。

Cさん(高校3年生)・Sさん(高校3年生)

――「理数探究」の授業の感想を教えてください。

<Cさん> 高1の「理数探究基礎」は、苦手な分野もありましたが、先生が授業を工夫してくださったので、楽しく学ぶことができました。高2の個人研究は、自分で考えた実験をすることができて面白かったです。

<Sさん> 私も高2で自由に研究や実験ができたのが楽しかったです。高1の時に学んだことが前提にあったから、自分の興味の対象が明確になり、個人研究へと進めたのだと感じています。

Cさん(写真左)とSさん(写真右)

―― 高2では、どんな研究に取り組んだのでしょうか。

<Cさん> 身近にある“菌”について研究しました。新型コロナウィルスが流行ったことと「働く細胞シリーズ」という漫画にはまり、自分で菌を調べたり実験をしたいと思い、菌をテーマにしました。

<Sさん> 研究テーマは「亀には嫌いな味があるのか。嫌いな味を色で記憶することができるのか」というものです。生物の授業で生き物の色の識別について学習し、その時に先生が「この生き物はこれくらい見えるんだよ」といろいろな生物を取り上げて説明をしてくれました。友だちに亀を飼っている人がいて「亀も色の記憶できるのかな?」と疑問を持ったのがきっかけです。

―― どのようにして研究を進めたのでしょうか。

<Cさん> 寒天培地を作って菌を培養させ、写真を撮り、それを見ながらコロニーの大きさや数を数えました。途中で先生から「湿度や温度の条件はどうしているの?」「観察したものを数値化したほうがいいと思うよ」と指摘やアドバイスを受け、気づいた点を修正していきました。

<Sさん> 1学期は主に亀に関する情報収集と、実験の計画や準備をしました。亀について調べると、動体視力が高いことがわかり「色の識別もできるのではないか」と考えました。実験は夏休みに友だちから亀を借りて行いました。最初に赤、白、緑、青、白の5色の団子を使って、色の識別ができることを確認し、次に、わさびや砂糖、抹茶、梅など、苦い、辛い、甘い、酸っぱい食べ物を団子に混ぜて食べさせて、嫌いな味を探しました。一番苦手としていたのはわさびで、食べた後に必ず吐き出していました。次に、緑色の団子だけにわさびを入れ、他の色の団子には何も入れず、1週間与え続けました。そして、「今度は別の色の団子にわさびを入れたらどうなるか?」という実験をしました。結果は、いつもの通り緑色の団子は食べず、これまで食べていた他の色の団子を口にして、すぐに吐き出していました。味と色の識別と記憶ができることが実験で明らかになりました。

―― 研究で大変だったことは? また、研究を通じて身についたことを教えてください。

<Cさん> コロニーを数えて数値化をすることが大変でした。本当はExcelを活用したかったのですが、使いこなすことができず、いちいち計算機で計算をしていたので、時間がかかりました。また、夏から冬にかけて6回実験をしたのですが、場所は同じでも季節によってコロニーの大きさや数が変わり、中間発表の時の考察を最終発表では変える必要が出てきて、それをまとめるのが大変でした。
研究を通じて身についたのは、実験のやり方やレポートのまとめ方、発表の仕方などです。また、プレゼンテーションのスライドや台本を作る時に、どういうふうにしたら伝わるか、ということも考えるようになりました。

<Sさん> 亀の飼育が大変でした(笑)。実験に支障が出ないように、友だちから教わりながら水を頻繁に変えるなど飼育環境を整えました。中間発表の時に、先生が「室温や水温の条件をどうしていたのか?」と痛いところを突かれ、その部分を踏まえて考察をまとめるのが難しかったです。個人研究は、実はテーマを探すのが一番大変で、身近な現象に自分から興味を持ちにいく姿勢が身につきました。

―― 希望の進路や、将来の夢を教えてください。

<Cさん> 小学生の時から薬剤師になりたいと思っていました。サイエンスコースを選択したのも薬学部に進学するためです。昔からの夢を実現したいです。

<Sさん> 幼稚園の時から看護の仕事に興味がありました。親が医療系の仕事に就いていたこともありますし、その後、医療ドラマにはまったのも大きいてす。卒業後は看護系の大学、学部に進み、将来は看護師になりたいです。


取材を終えて

「理数探究」は、まさにコースの特性を活かした取り組みだと感じた。高1の「理数探究基礎」で6人の先生がそれぞれの専門分野で授業を行って、生徒たちの興味の幅を広げ、それと同時に生徒自身も「自分はどんな理数分野に関心があるのか」を知ることができる。そして、高2の個人研究では、興味を絞って掘り下げるという学び方が、理にかなっていると思った。まだ始まったばかりの取り組みなので、今後、新しい展開も期待できそうだ。

【 Back number 】和洋九段女子中学校のスペシャルレポート 9

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