スクール特集(大妻嵐山中学校の特色のある教育 #7)

バレーボール部が初の全国大会で第3位! 2025年夏の快挙
大妻嵐山中学校バレーボール部は、2025年8月に全国大会に初出場して第3位という快挙を達成。それまでの道のりや今後について監督と生徒に話を聞いた。
2025年8月、「全日本中学校バレーボール選手権大会」で初出場ながら第3位という快挙を成し遂げた大妻嵐山中学校バレーボール部。それまでの道のりや今後について、顧問の弓削拓人先生と生徒2人に話を聞いた。
初の全国大会出場で第3位
8月17日に長崎県で「第55回全日本中学校バレーボール選手権大会」が開催され、3年生チームが「初の全国大会出場」「全国大会第3位」という快挙を同校の歴史に刻んだ。
「指導者として日本一になりたいという夢を抱いてチームを育ててきましたが、幾度となくレベルの高い関東の壁に阻まれ、全国大会に行けると思ったチームでも勝てないことがありました。今の3年生と同じくらい力があったチームでも、関東大会で東京のチームに負けてしまったこともあります。そういった負けの経験もよい指針となり、この時期にこの力ならここまで行けるだろうという感覚など、経験値の中で測れるものが増えてきました」(弓削先生)
弓削先生が今大会で日本一を目標に掲げ始めたのは、今年3月末に開催された「第21回町田市近隣中学生大会」で優勝してからだという。同大会には、関東圏を中心とした延べ60チーム(中学やクラブチーム)が参加。強豪校との戦いの中で、同校は昨年の全国大会でベスト4となった文京学院大学女子中学校をストレートで下して優勝した。
「新チームになったばかりの9月、10月頃は、まだ日本一を目指せるほどの力はないと思っていました。3年生が2人抜けただけで、ほとんどメンバーが変わらなかったので周囲の期待は大きかったです。しかし、たとえ2人でもメンバーが変わればチームは大きく変わるので、先行きの見えない部分がありました。11月の新人戦前ぐらいには、新人戦で優勝できるかなというレベルにはなっていましたが、まだ目指したいレベルと現状とのギャップがあったので、そこを埋めていかなければなりませんでした。埼玉県の学校と戦う新人戦では優勝できましたが、3月末の大会は関東大会のような位置づけです。新人戦後からさらに力をつけて、レベルの高い関東勢と十分戦えた結果を見て、この調子で伸ばすことができれば全国大会に行けるだろう、行けるなら日本一も目指せるだろうと考えるようになりました。生徒たちにも折に触れて少しずつ日本一を意識させるようにしていったので、初出場の喜びだけでなく、日本一になれなかった悔しさも残る大会だったと思います」(弓削先生)
▶︎バレーボール部顧問 弓削拓人先生
経験値のないメンバーでの新たなチームづくり
9月からは2年生と1年生による新チームとなり、全国大会に出場した3年生12人は後輩の練習をサポートしている。試合を経験しているメンバーがいない状態でのスタートは、監督として初めての経験だという。
「公立の学校と違い、本校では日曜日しか休日がありません。土日に練習試合ができる学校と比べると、試合経験としては年間何百セットという差が出てしまいます。圧倒的にゲーム感が足りないので、平日に新チーム対3年生チームで試合や試合形式の練習を行っています。身近で一番高い壁が3年生チームなので、3年生チームとの対戦は一番負荷のかかる練習です。今の新チームには、生きたボールで全国レベルを体感することが必要だと考えています。3年生チームに対して決まる攻撃なら、他校の新チームにも通用するでしょう」(弓削先生)
今年度は全国大会3位になれたが、新チームに対しても同じ指導方法でいいというわけではない。チームのメンバーが変われば、伸ばし方も変わってくる。そこが難しい部分でもあり、やり甲斐を感じる部分でもあると弓削先生は語る。
「新チームは2年生が2人、1年生が8人ですが、キャプテン、副キャプテンはまだ決めていません。2年生だからキャプテンになるのが当たり前というわけではなく、チームを勝ちに引っ張っていける力が必要です。3年生チームが全国大会であそこまで戦えたのは、キャプテンや副キャプテンの力があったからだと思います。新チームでもそのような存在になれたときに、キャプテン、副キャプテンとして認められるのです」(弓削先生)
バレーボール部の活動を通した成長
バレーボール部での活動を通して、周りからの協力が得られることのありがたさに気づけることが大切だと弓削先生は語る。
「バレーを頑張ろうと思って入部してきているので、バレーの練習を頑張るのは当然として、用意された環境が当たり前ではないことに本当に気づけるかが重要だと考えています。例えば、練習試合の相手がいること、遠征に行くための移動手段があること、学校で体育館を使わせてもらえることなど、どれも周りの協力がなければできないことです。寮生活をしているわけではないので、部活動以外の時間の方が長いかもしれません。プロとして活動しているわけではありませんが、本当に勝ちたいなら、部活以外の時間でも勝ちに直結する行いができるようになっていきます。今年全国大会3位という結果が出せたチームは、そこに気づけるアンテナを持った生徒が多くいたからだと思います」(弓削先生)
中学校の3年間では、様々な経験が出来る。しかしバレーボール部の生徒たちは、自らバレーボールを頑張ることを選び、遊ぶ暇もなく練習に力を注ぐ覚悟を持って入学してきた。
「全員がバレーボール選手になるわけではないですし、バレーボールが直接将来につながるかもわかりません。しかし、人との関わりや仕事をする中で、部活動を通した経験やバレーで身につけたスキルを活かすことはできるでしょう。本校のバレーボール部での3年間を経験した生徒たちは、高校、大学、社会人といった先のステージでも頑張れ、力を発揮できる人間に成長していけると思っています」(弓削先生)
全国大会に出場した生徒2人にインタビュー
Aさん(中3 キャプテン・アウトサイドヒッター)
Tさん(中3 副キャプテン・リベロ)
▶︎Aさん(写真左)とTさん(同右)
――バレーボール部に入った理由を教えてください。
Aさん 小学生のときからバレーをやっていたので、中学校でも続けたいと思っていました。入学前の体験会はありませんが、顧問の先生に連絡すれば練習に参加できます。実際に参加してみて、ここで頑張りたいと思ったので入部しました。
Tさん 私も小学生のときからバレーをやっていたので、練習に参加して入部を決めました。
――全国大会の感想を教えてください。
Aさん 緊張もありましたが、試合自体は全員で楽しめたと思います。全国大会出場までには辛い練習やトレーニングも多かったですが、それらの経験が点数や1つのプレーにつながった瞬間に楽しさが感じられました。
Tさん 2対1のフルセットが多く、辛い試合もありましたが、全員が1点を目指して本気になって楽しく最後までやり遂げました。試合中は、全員が頑張ってつないだボールで1点が取れたときなどに、楽しさが感じられます。
――全国大会初出場で3位という結果はどのように受け止めましたか?
Aさん 日本一を目指していたので悔しさもありますが、全国大会で3位を取れたことは嬉しいです。
Tさん まだ全国大会に出場したことがなかったので、自分たちの代で歴史を作りたいと思って頑張ってきました。目標の日本一に届かなかったことは悔しいですが、3位になれたので嬉しい気持ちもあります。
――準決勝で戦った金蘭会中学校が優勝して6連覇を達成しましたが、どこに差を感じましたか?
Aさん 技術の差はあまり感じなかったです。ただ、相手の方がボールを追う気持ちが強かったなど、技術以外の部分に差があったと思います。
Tさん 私も技術にはあまり差がないと感じました。あとちょっとのところで、突き詰めきれていない部分があって負けたのだと思います。
――キャプテンや副キャプテンとして大変なことはありましたか?
Aさん 中3は12人いるので、まとめるのは難しい部分もありましたが、みんな仲が良かったのでそれほど苦ではありませんでした。
Tさん 1、2年生の頃は3つぐらいのグループに分かれてしまい、意見の違いなどでちょっとしたケンカもありました。3年生になったらケンカもなくなったので、それほど苦労は感じなかったです。
――3年生になる頃に、どのようにして1つにまとまっていきましたか?
Aさん 練習後にはいつも円になって話し合いをするのですが、3年生になる頃にその日にあったことや直してほしいことなどを言い合うようにしました。不満をため込まずに口に出して、言い合った後には全員でハグをして引きづらないようにしたらまとまっていきました。
Tさん チームメイトから案が出て試してみましたが、効果があったと感じています。不満をいつまでも引きずらないようにして、みんなで共有できるようになったら、余計なストレスがなくなっていきました。
――3年生チームはどんな雰囲気ですか?
Aさん 全員で声を出したり、声をかけ合ったりしていい雰囲気を作って、自分たちの流れに持っていけるチームです。
――新チームとなる後輩たちにはどのような思いがありますか?
Tさん 自分たちに続いて、横断幕に書かれたモットー「努力に勝る天才なし」を心に刻んで頑張ってほしいです。
――バレーボール部の活動を通してどんな成長を感じますか?
Aさん 学校生活だけでなく、家での過ごし方もバレーを一番に考えて、日本一を取るために一番適したことをするようになりました。例えば、テストで補習対象にならないように勉強を頑張ったり、早寝早起きをして万全な体調でいられるように心がけています。
Tさん 先生方や校長先生から許可がいただけているから体育館なども使えるので、先生方に感謝の気持ちを込めて挨拶したり、何か困っていたら手伝うなど、いつも意識しています。
――今後の目標を教えてください。
Aさん 高校でもバレーは続けたいですが、中学バレーで経験してきたことはバレー以外にも活かせると思うので、他の面でも頑張りたいです。
Tさん 高校でもバレーを続けて、もっとレベルを上げて春高バレーを目指したいです。
<取材を終えて>
インタビュー後に練習の様子を撮影したが、やはり3年生チームと新チームの差は歴然だった。新チームは試合経験のないメンバーでのスタートとなったが、全国レベルの3年生チームと練習試合を重ねられるのは恵まれた環境ともいえる。3年生との練習試合を重ねて、まずは11月の新人戦までに新チームがどこまで成長できるか注目したい。