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スクール特集(東京立正中学校の特色のある教育 #1)

新学校長“梅ちゃん先生”の学校改革

2019年4月、東京立正中学校・高等学校の新学校長として梅沢辰也先生が就任。生徒たちを幸せにするために、5つの目標を掲げて進めている学校改革について取材した。

新学校長として就任した梅沢辰也先生は、中村中学校・高等学校で学校改革や入試改革を進め、数々の成果が注目された。東京立正中学校・高等学校では、「生徒たちを幸せにする」という強い思いのもとで、5つの目標を掲げて学校改革に着手。改革のねらいや具体例について、梅沢辰也校長先生に話を聞いた。

新学校長・梅沢辰也先生が掲げる5つの目標
・「全員レギュラー」補欠は1人もいない学校
・「挑戦と失敗」を応援する学校
・「なぜ」を追求する学校
・「教室から世界を変える」と挑戦する学校
・「文部両道の極み」*を希求し、授業が面白くて部活動が楽しい学校

*文部両道の「部」は部活動の「部」。

▶︎「梅ちゃん先生」こと新学校長 梅沢辰也先生

「今あるもの」を見直すことからスタート

2019年4月に同校の学校長として就任した梅沢辰也先生が、最初に着手したことは「チャイムをなくすこと」だったという。

「私は『タイムイズライフ』、つまり時間とは命そのものだと考えています。例えば、私が生徒たちの前で話をするなら、生徒たちの時間をもらっていることになりますし、私の時間を生徒たちにあげていることにもなります。生徒たちが、自分の時間も相手の時間も大切に扱う習慣を身に付けることが必要だと考えて、始業や終業のチャイムをなくしました。チャイムに反応して始まる授業と、『何時何分から始まる』のだと生徒たちの意志で判断して始まる授業は、大きく違います。学校改革というと『新校長は何を始めるのか?』と期待されますが、何か大きなことを始めようとしているわけではないのです」(梅沢校長先生)

今あるもの、行われていることの中に素晴らしいものがあり、それを素晴らしいものだと気づくためには、「したほうがよいこと」と「しないほうがよいこと」を見極めることが必要になると梅沢校長先生は語る。

「今やっていることを教員と生徒が意識して取り組めるように、1つ1つ見直しながら言語化して際立たせたいと考えました。授業もその1つです。生徒たちが自ら学び取っていけるように、これまで以上に充実させたいと考えています。まずは、行事を減らさずに、授業ができる日を1日でも増やせないか考えました。そして日数は変えずに、宿泊行事の実施日を動かしたところ、しっかりと授業ができる日が増えたのです。授業が午前中だけだったのが1日できるようになっただけでも、大きく違ってきます。これはほんの一例ですが、新たに何かするのではなく、やり方を変えたほうがもっとよくなることが他にもあると思うので、様々なことを各部署で検証していきます」(梅沢校長先生)

月曜日に「梅ちゃん先生の幸せになる授業」を実施

同校では、毎週月曜日に「瞑想」の時間があり、その中に「校長講話」の時間が15分ほど設けられている。

「講話というと堅苦しいので、『梅ちゃん先生の幸せになる授業』と名付けました。私が一方的に話すのではなく、マイクを持って生徒たちのところに行き、生徒たちからも意見を聞きます。一学期は、『ものを見る』をテーマに話をしました。コップを例に、コップ以外の名前や役割を考えてみたのです。私たちは、知らないうちに名前に縛られていて、そこから解放されないと1つの見方しかできません。人に対しても同じです。自分が貼った「〇〇さんは〇〇な人」というレッテルから離れられないと、それ以外のいいところも悪いところも見えません。いくらグローバル社会になっても、自分が見たいと思った側面しか見なければ、何も変わらないのです」(梅沢校長先生)

この話を聞いた生徒たちからは、「コップの話からそうくるか!」などと様々な反応があったという。「梅ちゃん先生の幸せになる授業」で出した宿題の答えを言いたい生徒は、校長室に来ることになっており、そこでも生徒たちの声を直接聞くことができる。

「赤ちゃんが写っている写真を見せて、この写真から何が見えるか考えてみなさいという宿題を出したことがありました。写真に写っているのは赤ちゃんだけですが、見えていないものを見るという視点を持ってほしかったのです。すると期待通りに『写真を撮っている家族の幸せそうな姿が見えます』と答えてくれた生徒がいました。目の前にあるものだけでなく、見えていないものについても考えることが大切です。そして、「当たり前」や「常識」といわれるものに対しても、「なぜ?」と考えてほしいと思っています」(梅沢校長先生)

「気づき」と「チャレンジ」を繰り返してよりよいものへ

『「挑戦と失敗」を応援する学校』という目標には、生徒に対してだけでなく、教員に対しても失敗を恐れずに挑戦してほしいという思いが込められている。

「これまでは1年に1回、授業に関する研究活動発表を行っていましたが、今年度から年に3回行うことにしました。チャレンジしてみて失敗したとしても、どこに問題があったのか考えることが重要です。失敗を経て気づきとチャレンジを繰り返していくことで、よりよい授業をつくりあげることができると考えています。ですから、教員たちにも失敗を恐れずにチャレンジしていってほしいです」(梅沢校長先生)

「授業月間」には、教員たちがファシリテーターになり、オリジナルの授業に取り組んでいく。例えば、高2の社会科では、グループに分かれてマルクス、ケインズ、アダム・スミスについて調べた後、それらを踏まえてSociety 5.0*についてどう考えるか話し合うという授業が行われた。
* Society 5.0は、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指す。

「グループ内で、マルクス、ケインズ、アダム・スミスのそれぞれを担当して予習した生徒が、他のメンバーにわかるように説明します。そこから、世の中がどう変わっていったか考え、Society 5.0についてどう考えるのかを話し合いました。税金の話なども出るほど活発に話し合いができているグループもあれば、発言者が偏っているグループもあります。ふり返りの時間も必要になるので、50分の中では収まりませんでした。授業時間内に収めることに関しては失敗でしたが、問題点に気づいて改善できればとても面白い授業になると思います。今後は全校でこのような授業を取り入れていけるようになるでしょう」(梅沢校長先生)

教室で「理想的な世界」を体感

生徒主体の授業というのは、自分の考えを言葉や文字で発信していくことで成り立つが、それをしっかりとキャッチしてもらえない場では成立が難しい。表現力を育むためには、どんな発信も受け止めてもらえるという安心感があることが大切だ、と梅沢校長先生は語る。

「声が大きい子や大人数の言葉だけを聞くのではなく、おとなしい子の声も、ノートに書かれた声にならない声も拾える教室でありたいと思っています。そして、それが理想的な世界だと自覚した生徒たちが、ふと世間を見て『これは理想の世界じゃない!』と感じたときに、そのギャップをどうすれば埋められるかを考えるのです。社会に出てからふり返ってみたら、『世界がどうあるべきか、教室で教わったんだね』と思えるような教室を目指しています。それが『教室から世界を変える』ということです。そして教室が、性格や得意・不得意といった個の違いを認め合える場であることで『全員レギュラー』にもつながります」(梅沢校長先生)

好きなことを頑張っている生徒・受験生に期待

部活動の場で、上手な生徒が他の生徒を教えるような場面は、アクティブラーニングの授業と重なる。そういった部活動での経験を授業に活かしてくことが、授業を充実させることにつながる、と梅沢校長先生は考えている。

「部活動を選ぶとき、嫌いなことは選ばないでしょう。部活動ではやりたいことをやっているので、気持ちが前向きです。しかし、授業は違います。勉強が嫌いな生徒もいる中で、力を伸ばしていかなければなりません。ですから、教員たちには部活動で生徒の力を伸ばすことができた経験を、ぜひ授業にも活かしてほしいと思っています。部活動と同じような感覚がつかめれば、部活動を頑張っている生徒たちは学力も伸ばせるはずなのです。本校では、勉強を頑張る生徒と部活動を頑張る生徒がいるという意味ではなく、1人の生徒が両方頑張る『文部両道』を目指していきます」(梅沢校長先生)

同校の中学入試は、2科目入試、AO入試(作文+自己PRプレゼンテーション+面接)、得意科目選択2科入試(国・算・英のうち2科目選択)に加えて、来年度から適性検査型入試が導入される。

「AO入試は、スポーツや習い事など、何かを頑張ってきた児童にぜひチャレンジしてほしいです。習い事などをしている児童は、級や段の取得、試合などの目標に向かって、段階を追って1つ1つクリアするという経験をしていると思います。発表会や試合では、成果を人に見られるという経験もしているでしょう。そういった経験をしてきた児童は、勉強に時間をかけてこなかった場合でも、環境が整えば学力も伸びていくと考えています。基礎から1つ1つ積み重ねて、成果を見せるという経験は、勉強にも活かせるはずなのです。2020年度からは適性検査型入試も導入し、国語と算数以外で受験する選択肢が広がりました。得意なこと、好きなことを頑張ってきた児童が、文部両道を極めて活躍してくれることを期待しています」(梅沢校長先生)

<取材を終えて>
新学校長として就任後、梅沢先生は誰でも入室できるように校長室のドアを開放しているという。お弁当持参で訪れる生徒たちも多く、様々な意見交換が行われている。5つの目標が実現すれば、生徒たちを必ず幸せにすることができると確信している梅沢校長先生の学校改革が、今後どのような展開を見せるか注目したい。

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