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近畿大学附属中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(近畿大学附属中学校の特色のある教育 #9)

自分で夢を描く力が育つ、実学教育の近畿大学と連携した多彩な体験実習

2002年より中高大連携教育に力を入れてきた近畿大学附属中学校。2023年度も、近畿大学の全面的なバックアップのもと14のプログラムを実施する。その目的と成果について、2人の先生に話を聞いた。

近年、中高大連携教育に注目が集まっている。近畿大学附属中学校はその先駆けとなる存在で、2002年の医薬コース設置を機に近畿大学との連携教育を開始。20年以上に渡り、中高大連携教育を進めてきた。実学教育と人格の陶冶(とうや)を建学の精神とする近畿大学の附属校だからできる中高大連携教育とは? 入試企画部長の原隆博先生と入試企画主任の田代 悠先生に語ってもらった。

医療の現場を中1から知る、医薬コース限定の体験実習

約20年に渡り、中高大連携教育を展開してきた近畿大学附属中学校。2023年度は全部で14の体験実習を実施する。医学部・薬学部などの医療系大学への進学を目指す医薬コースでは、近畿大学医学部・薬学部・大学病院と連携し、以下のような体験実習を行う。

・1年生:奈良病院見学と薬学部医療薬学研修センターの見学と実習
・2年生:医学部の見学と実習、薬学部薬用植物園見学
・3年生:奈良病院看護体験実習
・4年生:医学部での体験実習

これらの体験実習は医療現場の見学から始まり、段々と命そのものに近づいていく内容となっており、生徒の生命倫理観や使命感を育てていく上で非常に大きな役割を果たすと原先生は言及する。

「3年の看護体験では、朝のカンファレンス(一日の看護計画をスタッフで共有するための会議)に参加させてもらいます。専門用語が飛び交うので生徒にはまだ難しいところもありますが、それに参加した上で、実際に病室に行って患者さんの診察を手伝います。理論的な学びはもちろん大切です。しかし、このように現場に入って、現場の方から話を聞き、実際に体験することで、生徒は自分の将来をよりリアルに描けるようになります」(原先生)

▶︎入試企画部長 原隆博先生

みかん栽培に、マグロの養殖。近畿大学ならではの身近な研究テーマ

2022年度に新しく始まった体験実習が、1年生の全コースを対象とした農学部体験実習と2年生の全コースを対象とした和歌山県の湯浅農場での体験実習だ。特に湯浅農場での実習は、年間3回にわたって行われる通年プログラムとなっている。この実習では、5月にみかんの枝の剪定、7月に摘果(果実の一部を幼果のうちに間引くこと)、翌3月に収穫を行う。通年で実施する実習であることに加え、班ごとに担当する樹木が決められており、生徒は自分たちの樹木がどのように育っていくかという視点を持てるのも同実習の特徴だ。この5月には2023年度の実習がスタートし、中学2年生全員が初めて湯浅農場に足を運び、みかんの枝の剪定をしたという

2022年度の湯浅農場での体験実習を1年間見守り、先日も同行した田代先生は以下のように話す。

「先日の枝の剪定時には花が咲いていて、至る所でハチがぶんぶん飛んでいる様子が見られました。7月には花が散って代わりに小さな実がなっていて、3月には自分たちが知っているみかんが実っている風景を見られるでしょう。1年を通して、みかんの成長を追っていくので、理科の授業で習った受粉から実がなるまでの流れを体感できます。また最後には収穫したみかんをもらえるので、昨年度の生徒は非常に喜んでいましたね」

湯浅農場はみかんを始めとする柑橘類の種を保存したり、マンゴーの栽培研究をしたりする研究農場だ。それだけを聞くと、非常に難しい実験をしている自分たちには縁遠い場所だと、生徒たちには感じられるかもしれない。しかし、その印象も体験実習を通して変わるという。

「現場に行って、一度は食べたことがあるみかんをお世話したり、研究が成功に至るまでの経緯や失敗について実際に研究にたずさわっている方々から直接聞いたりすることで、研究とはどのようなものかのイメージが湧いてきて、研究をとても身近に感じることができます。」(田代先生)

原先生も、生徒に人気の南紀体験学習を例に上げて、以下のように話します。

「南紀体験学習のテーマは『実学に触れる』。クロマグロの完全養殖に世界で初めて成功した和歌山県・近畿大学水産研究所浦神実験場で色々な魚の養殖生け簀を見学したり、講義を受けたりします。見学の帰りに実験場で養殖されている魚を買って、宿泊先のホテルで刺身にしてもらい、皆で食べます。生徒は口々に『うちの魚はおいしい』と言いますね。また、実験場で地域の方々が働く姿も目にします。食べるとおいしく、雇用の創出にも一役買っていると、さまざまな意味で研究が生活に役立っているのだと知ることができます」

▶︎入試企画主任 田代 悠先生

体験実習を通して、学びへの原動力を得る

実際の生活に寄り添う研究を経験することで、生徒は「大学はどんな所か」「研究とはどのようなものか」を知り、そして「今、自分たちが勉強していることが大学の研究という難しそうなテーマにも繋がっている」と教科学習の意義を理解するのだという。

「今、さまざまな所で何事でも自分ごとに落とし込んで考えなければならないと言われています。近畿大学の研究はテーマが身近で、自分ごとに落とし込みやすく、イメージしやすい。大学での研究を身近に感じることで、自分の可能性に気づきそこから将来の姿を想像してほしいと思っています。」と原先生。

続けて「最近の子どもたちはがんばる理由が理解できなければ努力しません。しかし逆に言うと、がんばる理由が理解できた時はものすごく強い。自分の中で目標を確立することができれば、そこに向かって努力していきます。その明確になった目標に向かうことこそが医薬コース、英数コースアドバンストの生徒たちにとっての受験に向かっていく原動力となります。英数コースプログレスの生徒も、近畿大学に進学するためには小さなハードルをたくさん越えていかなくてはなりません。しかし、体験実習を通して『大学でこんな勉強をしたい』という気持ちが出来上がっていけば、希望する学部・学科を自分の力でしっかり見つけられると思います」と語る。

総合学習×体験実習が将来の夢を生む

また同校ではキャリアデザイン教育に力を入れており、2020年度から新たな総合学習をスタートさせた。体験実習での経験が総合学習にリンクすることで、より大きな原動力となると原先生は指摘する。

「総合学習で身につけるプレゼン力やディスカッション力、論文を書く力は、ものごとを深く考える力につながります。本校の総合学習の最終目標はこの考える力で自分自身を探究することにあると考えています。自分自身を深く知ることと体験実習がうまくかみ合えば、生徒は自分の将来をより明確に描けるようになります」(原先生)

同校では、進路保証と同時に成長保証もしなければいけないと考えている。成長保証とは、大学入学後にその生徒が自信を持って学んでいけるようにすることである。

原先生は「そのためには生徒が将来のヴィジョンをしっかり持った状態で送り出すことが大切です。生徒たちが自身で希望や目標を作っていく過程で、総合学習と体験実習は非常に大きな役割を果たしてくれると感じています」と語る。

上記以外にも、同校では理工学部や生物理工学部での実験実習、近畿大学英語村での「E-Challenge」などの体験実習を設けている。多彩で学びの多い体験実習を実施できる理由に、近畿大学が総合大学であることや大学が隣接しており物理的に距離が近いことがあげられる。

大学合格実績に表れる体験実習の成果

多くの取り組みを通して、生徒たちの興味や関心を養い、将来のヴィジョンを描けるようになることを目指してきた同校。その成果は、大学進学実績にも如実に表われる。2023年大学受験の中高一貫生の実績では、国公立大学は京都大学・大阪大学・神戸大学・大阪公立大学などに32名(内、浪人生6名)、関関同立では同志社が一番多く20名(内、浪人生2名)が合格している。

「本校で他大学を受験するのは、医薬とアドバンスの2コースとプログレスの一部の生徒です。2023年の他大学入試を受験したのは100名前後。その中から現役で国公立大学26名、関関同立42名のほか、医歯薬保健系学部にも多くの合格者が出ています」と原先生。

原先生はこの合格実績は、やはり体験実習や総合学習を通し、自分で自分の進路を決めたことが大きいと分析する。また、国公立大学の現役合格者26名の内、7名は総合型選抜・学校推薦型選抜での合格だという。もちろんこの合格に体験実習や総合学習での経験が寄与する部分は非常に大きい。

「今の大学受験は一般の学力試験だけでなく、総合型選抜などの推薦方式も増えてきています。体験実習や総合学習で学んだスキルは当然そこにつながっていきます。また、これらの経験を通して生まれた自分の夢や目標が、学力を培う上での堅い土台になってくれます」(原先生)

最後に原先生は、以下のように語ってくれた。

「体験実習を作っていくのは、教員にとって実は非常に負担が大きい業務です。それでもコツコツと20年以上積み上げてきたことに大きな意味があったと感じています。こんなに真面目に体験実習に取り組んでいる学校はそうないんじゃないかなと胸を張れます。これからも、法学部や経済学部、情報学部など多くの学部と連携した体験実習を模索していくつもりです。生徒たちの自分の将来を創造する力を育むために、より一層充実した体験実習を追い求めていきます」

<取材を終えて>

同校の体験実習は、1・2年生で実施するものは全員参加が多い。これもさまざまな研究に興味を持ってチャレンジしていく土壌を育むには、まずは体験させることが大事と考えるから。その一方で希望者のみ参加できる体験実習も大切にしていると原先生は指摘する。

「自分で手を挙げて初めてその景色を見られるっていう体験も非常に重要です。全員参加の多い1・2年の間に面白いと感じると、3年生以上は自分でやりたいことを見つけて積極的に参加するようになります。毎回参加する生徒も少なくありません」(原先生)

このように、まずは2年間かけて生徒の興味や関心を養い、最終的には自分の夢を描ける所まで育てていく。そして、その夢のために必要であれば、4年生までコース変更可能という体制も同校は敷いている。この生徒の成長に寄り添った教育が、社会に出てからも活躍する人材を育てるのだと取材を通して感じた。

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