スクール特集(雲雀丘学園中学校の特色のある教育 #13)

「行ってみなはれ」精神が育む学び。タンザニア研修・生徒インタビュー。
「やってみなはれ」で知られる雲雀丘学園中高。グローバルプログラムも全9か国と生徒の挑戦を後押しする魅力的なラインナップだ。2026年度始動のタンザニア研修に参加した生徒3人の話から、その真価を紐解く。
海外研修というと、英語を学ぶ語学研修を思い浮かべる人も多いだろう。雲雀丘学園中学校・高等学校では、語学にとどまらず、異文化理解やビジネスなど、目的に応じた多彩なプログラムを展開している。2026年度にスタートした「タンザニア研修」もその一つだ。
参加したのは中高生15人。現地では学校訪問を通じて同世代の生徒と交流したほか、JICA職員へのヒアリング、世界遺産でもあるンゴロンゴロ自然保護区やマサイの村への訪問など、日本では得がたい貴重な体験を重ねた。
今回は参加生徒の中から3人に、応募のきっかけや現地での気づき、帰国後の変化について話を聞いた。さらに、グローバル探究部副部長で留学アドバイザーの森川先生に、タンザニア研修に込めた想いと、同校が目指すグローバル教育の未来について伺った。

▶︎写真左から中石さん、山田さん、小林さん、森川先生
初開催のタンザニア研修。三人が一歩を踏み出したそれぞれの理由
--今回のタンザニア研修に参加しようと思ったきっかけを教えてください。
中石さん:昔タンザニアを訪れたことのある両親からサファリの素晴らしさを聞いていたので、いつか一度は行ってみたいと思っていました。そんな時に学校で研修が始まると知ったんです。学校の研修であれば、現地の方やJICA(国際協力機構)の職員の方々との交流など、通常の旅行とは異なる角度から文化を深く学べます。アフリカという土地柄への不安もありましたが、先生方が同行してくださる安心感もありましたし、トラブルも含めて貴重な経験になると考えて参加を決めました。
山田さん:もともと日本とは全く文化の異なるアフリカに興味がありました。研修の開催を知ってタンザニアについて調べてみると、120以上の民族が暮らしながらも、近年は大きな紛争がほとんど起きていないことを知ったんです。争いが続く周辺国との違いはどこにあるのか、その背景を知りたいと思ったことが大きなきっかけです。また、アフリカの豊かな大自然を直接体験してみたかったことも理由の一つです。
小林さん:動物園ではなく、大自然の中で生きる野生動物の姿を直接見たいと思ったことが一番の理由です。実は幼い頃から動物が好きで、将来は獣医師を目指しています。これからの人生でもタンザニアへ行ける機会なんてそう滅多にないですし、母からも「高校生のうちに行ける機会があるなら挑戦した方がいい」と背中を押してもらい、参加を決意しました。


人との出会いから知った、文化の違い
--今回の研修で、特に印象に残っていることを教えてください。
山田さん:私はリゾートであるザンジバルの市場の様子が印象に残っています。かごに詰められた生きた鳥がたくさん並べられ、お客さんが足を掴んで買っていったり、その場で捌いたりする光景もたくさん見ました。自分は生き物を殺して食べているんだと実感し、食べ物への感謝の気持ちをより強く持つきっかけになりました。
中石さん:やはり、タンザニア研修の一番の目的だったサファリです。今回訪問したンゴロンゴロ自然保護区は、火山の噴火によってできた巨大なカルデラの中にあり、日本の動物園とは規模感がまったく違いました。動物が自然のまま暮らしていて、大自然の中に人間が入らせてもらっているような感覚でした。また、前日にジラフセンターで、人間の暮らしの発展と動物の生態を守ることを両立させる難しさを聞いていたので、この自然を維持することの難しさも実感しました。
小林さん:協定校のさくら女子中学校での交流です。英語での交流でしたが、お互い第二言語だったので思った以上にスムーズに意思疎通できました。育った環境や暮らしは全く違うものの、話してみると本当に楽しくて、時間が足りないと感じるほどでした。
特に驚いたのは、みんなの勉強に対する熱量の高さです。さくら女子中学校は理数系教育に力を入れていて、高2の私よりも物理の授業が進んでいました。理由を尋ねると進級するために国家試験があるとわかり、日本の環境との違いに大きな衝撃を受けました。彼女たちの勉学への真剣な姿勢に触れ、私ももっと頑張らなければと強く刺激を受けました。
※さくら女子中学校:タンザニア連合共和国アルーシャにある全寮制の女子校。高等課程も2026年7月に開設。女性の自立と貧困削減を目指し、理数教育やリーダーシップを養う教育に力を入れる。


--現地の人との交流を通して、どんなことを感じましたか?
山田さん:ンゴロンゴロ自然保護区でガイドしてくださったドライバーのゴディさんがとっても陽気な方で、歓迎の歌を歌ってくれたり、友達という意味の言葉を教えてくれたりしました。「僕たちはもう友達だよ」と言ってくださり、本当に優しくて素敵な方だったので、友達になれてうれしかったです。
小林さん:確かに、ガイドさんたちはとても親しく接してくれました。また、移動中にも街の方が手を振ってくれることが本当に多くて、日本との違いに驚きましたし、私も自然と明るい気持ちになれました。
中石さん:現地の方は「ポレポレ」とよく言うんですね。ポレポレとは「ゆっくりゆったり行こうよ」というような考え方で、何かあっても「まあ、別にいいやん」という感じで、みんなおおらかでやさしい。何事も時間をきっちり守る日本で育ったので、こんなふうにゆったり過ごしてもいいんだと衝撃でしたね。

タンザニアで出会った「新しい価値観」と、描く未来
--先ほど、小林さんはタンザニア研修を経て、勉強をがんばろうと思うようになったと話されていましたが、中石さんと山田さんは考え方に変化はありましたか?
中石さん:さくら女子中学校で現地の同年代の子たちと交流したとき、授業のことや彼氏のことなど、話している内容が日本の同年代の子たちとほとんど変わらなかったんです。「世界中どこでも、同年代ならみんな変わらないんだな」と感じました。
一方で、教育環境には日本との大きな違いがあることも知り、私が今、充実した環境で勉強できることはとても貴重なんだと。これまでは「自分で勉強をしている」と思っていましたが、「勉強をさせてもらっているんだ」と感じるようになりました。だからこそ、勉強はもちろん、普段の生活も大切に過ごさないといけないと思っています。
山田さん:JICA訪問で、タンザニアの小学校で教師をしている日本人職員の方の話を伺ったとき、「異なる文化や宗教の子どもたちの間で、考え方の違いによる衝突はないのか」と質問しました。すると、「ありません」という答えが返ってきました。
タンザニアには、文化や宗教に関係なく、人は皆平等であるという考え方が根底にあり、文化や宗教はその人の個性として捉えられているそうです。実際にその方が子どもたちに「日本には物一つ一つに神様が宿っているという考え方がある」と話すと、「面白い」「もっと教えて」と反応したそうです。それを聞いて、私は文化や宗教をデリケートなものだと考え過ぎていたのかもしれないと気づきました。相手を知りたいという気持ちで、趣味について聞くように文化や宗教について尋ねてもいいのかもしれないと思うようになりました。


--今回の経験を通して、将来の学びや進路について変化はありましたか。
中石さん:私は、医療系の進路に興味を持つようになりました。車窓から見える街の風景や市場での様子を見て、もし自分に医療の知識があり、それをきちんと伝えることができたら、感染症などで亡くなる人を減らせるのではないかと感じたからです。
山田さん:現地では、整備されていないインフラや日本との治安の違い、貧富の差などを目の当たりにしました。今後はそうした現状の改善に向けて、自分に何かできることがあれば取り組んでいきたいと考えています。
初海外で知り合いもおらず、参加にかなり悩んだものの、一歩踏み出したことで本当に多くの学びを得られました。だからこそこれからも、自分らしくやりたいことにまっすぐ挑戦していきたいです。
小林さん:実際に保護区で生きる野生動物や、現地で暮らす犬猫の姿を間近で見て、獣医師を目指す意志がより強くなりました。もともと保護犬や保護猫の活動に関心があり、殺処分を減らしている海外の先進的な取り組みを学んで日本に還元したいと考えていましたが、今回の研修を経て「将来は海外で活動したい」という目標がより明確になりました。今回の学びを総合型選抜などに活かすことも視野に入れ、夢を実現したいと思います。



多様な海外研修から、自分だけの学びを見つける
--雲雀丘学園のグローバルプログラムの魅力はどんなところにあると思いますか。
小林さん:とにかく研修の種類が豊富なことです。さらに、事前研修で歴史を学んだり、現地で同世代と交流したり、帰国後にはポスター作成やプレゼンを行ったりと、前後の学びも充実しています。私は以前、学外の海外研修に参加したこともありますが、それと比べて雲雀丘の研修は訪れた国についてより深く学べると感じました。
また、学校の先生が付き添ってくださるので、気軽に質問や相談ができる点も良いところだと思います。
山田さん:日本の中高でアフリカで研修を行っている学校は滅多にないので、そうした貴重な機会が得られること自体が大きな魅力です。
アフリカに対して「トラブルが多そう」というイメージを持つ方も多いかもしれません。実際、私たちも現地空港で荷物が届かないトラブルに見舞われました。不安もありましたが、不思議とみんなワクワクしていたんです。それも、事前研修を通してメンバー同士の仲が深まっていたことや、学校への強い信頼感があったからこそ、ポジティブに受け止められたのだと思います。
中石さん:海外研修というと語学学習が中心になりがちですが、雲雀丘にはビジネスを学ぶプログラムや、タンザニアでの異文化理解研修など、多彩な機会が用意されています。まさに「そこでしかできない特別な体験」ができる点が大きな魅力です。
特にタンザニア研修では、他では決して味わえない貴重な経験がたくさんできました。想像以上の学びと感動が得られるので、少しでも興味があるなら、ぜひ積極的に挑戦してほしいです。
海外研修は全9か国。「行ってみなはれ」の精神で展開
--先生から見て、生徒たちはどのように成長しましたか?
森川先生:さくら女子中学校をはじめとするさまざまな交流を通して、生徒たちの視野は大きく広がりました。そして何より、本当にたくましくなったと感じています。体調不良や寒暖差、荷物が届かないといったトラブルもありましたが、「まあ、なんとかなるよね」と前向きに話し合い、その場で柔軟に対応していました。
もともとは学年も違い、接点もなかった生徒たちですが、9日間をともに過ごす中で互いに協力し合い、とても素晴らしいチームへと成長してくれました。

--そもそも、なぜタンザニアで研修を行おうと考えたのでしょうか?
森川先生:日本で暮らしていると、アフリカに関する情報は、飢餓や紛争、栄養失調など、ネガティブな内容が多いと思います。しかし、54カ国あるアフリカは、地域ごとに文化も国民性もまったく異なります。だからこそ、まだ先入観の少ない中高生のうちに、実際の姿を自分の目で見てほしいと考えました。
数ある国の中でタンザニアを選んだのは、調査を重ねる中で、生徒を連れて行ける場所だと判断したからです。もちろん、衛生面や感染症、治安など考慮すべき課題は多くありました。そのため、事前に現地を下見し、JICAの元事務所長や現地駐在員など、タンザニアに関わる方々からお話を伺いました。
その上で、保護者や校内に対しても研修の目的や安全面について丁寧に説明し、理解を得て実施に至りました。今回は15名の生徒が参加。全日程、私と校長、添乗員の3名体制で同行し、見守りました。
--雲雀丘学園では、グローバル教育をどのように広げているのでしょうか?
森川先生:本校のグローバルプログラムの強みは、まず種類の多さです。現在は9カ国で研修を行っていて、それぞれ目的が異なります。語学を学ぶものもあれば、異文化理解を目的としたもの、企業家精神を学ぶものなど、さまざまなプログラムがあります。また、対象となる学年も研修によって異なり、中学1年生から高校3年生まで、自分に合ったものを選べるようになっています。
生徒によって興味や関心は違いますから、すべての生徒に同じ経験をさせるのではなく、「この研修なら自分に合いそう」と思えるものを選んでほしい。そのためにも、種類の多さと目的の幅広さは、本校の大きな強みだと思います。
さらに、2025年度には韓国の学校とも協定を結び、2026年度は韓国の生徒たちが本校を訪れる予定です。今後は、こちらから韓国を訪問する機会もつくれたらと考えています。
--今後、研修に参加した生徒たちにどんなことに挑戦してほしいですか?
森川先生:タンザニアに限らず、とにかくさまざまな世界を見てほしいと思っています。今回初めて海外へ行った生徒の中には、当初は留学や海外研修に興味がなかった生徒もいました。しかし一度現地を訪れると、「タンザニアはこんな国だった。でもアフリカはあと53カ国もある」「次はヨーロッパやアジアにも行ってみたい」と興味が広がっていくかもしれません。
実際に現地へ行かないと分からないことはたくさんあります。だからこそ「まずやってみる」という姿勢を大切にしてほしいですね。挑戦する前から諦めて、知らないまま生きてしまうのは本当にもったいないことですし、ある意味怖いことでもあります。知ることで、自分の世界は間違いなく広がります。一度きりの人生だからこそ、「行ってみなはれ」の精神で色々な世界に飛び込み、自分の興味を広げながら多様な人々と出会っていってほしいです。

<取材を終えて>
今回のインタビューで、タンザニアでの経験を熱く楽しそうに語ってくれた生徒たち。その姿からは、この研修がどれほどかけがえのない時間であったかが伝わってきた。学校行事における安全面への配慮が厳しく問われる中、タンザニア研修の導入には学校側の大きな苦労や決断があったはずだ。それを実現できたのは、「生徒の可能性を広げる機会を届けたい」という強い想いが、常に雲雀丘学園の教育の根底にあるからだろう。生き生きとした3人の表情に、学校の挑戦が大きな実を結んだことを実感した。

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