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芝浦工業大学附属中学校 

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スクール特集(芝浦工業大学附属中学校の特色のある教育 #7)

2021年度から共学化!未来創造力を育む探究型授業がスタート

芝浦工業大学附属中学校では、2021年度から共学化と新カリキュラムをスタート。理工系の知識で社会課題の解決を目指す、探究型授業の特色とは?

芝浦工業大学附属中学校では、2021年度から共学化と新カリキュラムをスタート。新たな探究型授業の特色や探究することの大切さについて、校長の大坪隆明先生、探究GC担当の金森千春先生(数学科)、探究IT担当の岩田亮先生(技術・情報科)、総合探究担当の斎藤貢市先生(広報室室長/国語科)に話を聞いた。

GCとIT、2つの探究型授業

新カリキュラムでは、これまで5~6単位だった国語、数学、英語の授業数がすべて4単位になった。それらを減らして余裕ができた時間に、学んだことを確実に身につけるためにSD(定着・アウトプットする時間)を授業枠として新設。さらに、自ら問題を発見して解決する力を育てるために、「総合的な学習の時間」を基準時間より増やし、2つの探究型授業(GC、IT)を実施する。

「私立の一貫校では、教科書の先取りをして高3では演習を行うのが一般的です。本校では、その部分に問題点を見出し、新カリキュラムでは文科省の標準授業数に戻しました。今年度は新型コロナウイルスの影響で様々な制限がありましたが、スリム化されたことにより、生徒たちが豊かに学校生活を送れるようになった部分もあります。生徒たちが疲れ果てていない様子などを見て、必要なことを身につけるにはこの授業数で十分だと考えました。新設したSD(Self Development)は、学校の勉強を授業時間内で完結できるように、中1~中2は2時間、中3は3時間確保してあります。宿題をしたり、英単語の学習をしたり、レポートの課題が出ていたらそれをやってから部活に行くなど、それぞれに必要な学びを教員が指針を示しながら指導していきます」(金森先生)

探究型授業として、GC(Global Communication)とIT(Information Technology)の2本を並行して実施していくのが新カリキュラムの特徴である。

「本校は芝浦工大の附属校なので、テクノロジーや情報技術に力を入れています。そこにプラスして、グローバルな視点を持って国際性と多様性を身につけることを目指して、2本の探究型授業を実施することになりました。例えば、何か作りたいものは見えていても、その後ろにあるニーズやどんなことで困っているかなど、人がどう思っているかまで思いをはせられないことがあります。生徒たちは、知らないから想像できないのです。新カリキュラムでは、知ることから始めて、立場の違う人や異なる環境にいる人のことまで考えていける生徒を育てていきたいと考えています」(金森先生)

共学化と新カリキュラム導入に合わせて、入試改革も行った。来年度から始動するカリキュラムをうまく引っ張り、活性化させることができる生徒に入ってきてほしいという狙いがあると、斎藤先生は説明する。

「2009年度に導入した言語技術の授業を入試に取り入れ、英語入試も導入しました。言語技術の試験では、答えが1つに定まらない問いに対して、文章で自分の考えを説明する問題を出題します。国語と算数にリスニングを入れたのは、これから主体的な学びが深まっていく中でより必要になる力だからです。例えば、算数は得意なのに、耳に入ってくる情報から頭に図形が描けないという生徒がいます。そういった子はどこかの単元でつまずき、高校生になってから文系に転向することもあるので、理系に進むうえで重要な力だと考えています」(斎藤先生)

▶︎金森千春先生

▶︎斎藤貢市先生

身近なところから国際性と多様性を身につける「探究GC」

探究GCでは、「湾岸プロジェクト」(中1)、「日本プロジェクト」(中2)、「世界プロジェクト」(中3)というテーマを設定し、身近なところから世界へと探究のエリアを広げていく。この授業で大切にしていることは「わくわく感」だと、金森先生は語る。

「探究の授業は、テーマが難しすぎると発表のための準備で疲れてしまうこともあります。それでは継続していくことは難しいので、中1では“知る”ことや“人とつながる”ことの楽しさを知ってほしいです。中1は、豊洲エリアを歩いて探検したり、スカイダック(水陸両用バス)に乗ったりしながら豊洲を深く知って、SDGsの観点から問題解決を考えていきたいと考えています。その中で、地元の企業や伝統工芸の町工場などと連携も行う予定です。中2は協働性の育成を目指し、長野県の芋井地区で行っている農村体験をブラッシュアップします。これまでは、農家に泊めていただいて、農業体験をして帰ってくるという宿泊行事でした。それを発展させて、地域や日本社会の課題に目を向けて、解決するために何かをしたいと思って動けるような行事にしていきたいです。中3のアメリカへの教育旅行も、事前学習をしっかり行い、現地で過ごすことで気づける多様性の部分に力を入れたいと思っています」(金森先生)

中1の「湾岸プロジェクト」では、豊洲エリアが発展した理由を調べたり、伝統工芸について知ることから始めるという。

「生徒たちは他のエリアから通っているので、このような授業がなければ、豊洲について知らないまま家と学校を往復するだけになってしまいます。知ったうえで、外国人観光客が来られなくなってしまった今、外にアピールする方法などを生徒たちのアイデアで働きかけられたらいいなと思っています。伝統工芸の小さな町工場の技術をどうやって未来に伝えるか考えることは、SDGsの入り口でもあります。中2の芋井地区での農村体験にしても、これまでは文化祭で、シンボルマークと合格の文字が入った『芝浦合格りんご』を販売していましたが、これは芋井の方と父母の会が考えた商品です。そこに生徒が関わって考えていけたらいいなと思っています。何か芋井地区の発展のためにできることがあればいいですし、夢は大きく、クラウドファンディングで生徒が作った商品をアンテナショップに置いてもらうなど、いろいろ考えています」(金森先生)

中学3年間で探究スキルを定着

探究GCの準備は、約1年前から始まった。探究チームを立ち上げて、ワークショップに参加したり、SDGsのカードゲームなども何種類も試してみて、教員が面白いと感じるものを選んでいったという。

「取り入れたいことはたくさんありますが、生徒たちが考える時間を十分とりたいので、チーム以外の先生たちの意見も聞きながら精査しました。生徒のやる気を維持できるような仕掛けを考えながら、“やらされ探究”にならないことを重視しています。何もないところで問いを立ててと言われても、そもそも彼らの世界が狭すぎて、問いを立てる材料も持っていません。ですから、例えば豊洲の産業遺稿を語りついでいくにはどのような工夫が必要かなど、最初はある程度枠がある中で、やってみようと思えるところから徐々に問いを広げていきます。SDGsに関しても、いきなりアフリカの貧困について考えても、遠すぎてアイデアは出せてもどうアクションしていいかわからないでしょう。身近にあるSDGsから少しずつ広げて、3年生になったときに自分の探究テーマに結び付けられることを目指します」(金森先生)

中学3年間の探究は、高校生になったときに自分で問いを立てて課題を見つけて解決できるように、基本的なスキルを定着させるための土台になると、金森先生は語る。

「テキストとして『学びの技』を使い、論文の書き方や参考文献の引用の仕方などが、いつでも自分で調べられるようにしておきます。探究は調べ学習で終わってしまうこともありますが、中学3年間で探究のスキルを身につけて、高校生になったときに自分で進めていけることを目指します。来年度から中学にも女子が入ってくるので、女子ならではの視点が加わると思います。それぞれ立場が違うから気づくことがあると思うので、多様性という面でも期待しています。やってみてダメだったら、修正できるのが探究の面白さです。修正しながらブラッシュアップしていくことに、面白さを感じてほしいと思っています。それが学びにつながっていくので、男子も女子もみんなで楽しく取り組んでほしいです」(金森先生)

技術とプログラミング・デザイン思考で未来を創る「探究IT」

技術と「Arts and Tech」の授業を担当し、電子技術研究部(以下、電技研)の顧問を務めている岩田先生は、官公庁や企業との共同企画などにも積極的に参加している。電技研は、2017年から経済産業省とのコラボレーションで、「全国IT部活活性化プロジェクト」を進行中。探究ITを導入した経緯には、顧問を務める電技研の存在が大きかったと、岩田先生は語る。

「電技研でやっていることが授業になったらいいなと、ずっと思っていました。本校に入学してくる生徒たちは、ものづくりや情報技術にとても詳しい子もいれば、初心者もいます。そのため既存の『技術』という教科では、広く浅く学んでいるので、木材加工も金属加工も基本的なところまでです。パソコン技術は、Office系のWordやExcel、PowerPointに加えて、ビデオエディターなども学びます。プログラミングは、レゴのパネルプログラミングから中3でRuby、高校でC言語を学びますが、それだけでは面白くないと思っていました。それで、まずは教育方法の研究をはじめたのです」(岩田先生)

どうしたら子どもたちのモチベーションが高くなるか研究しはじめると、男子と女子では面白いと思うものに違いがあることがわかったという。

「面白いと思わせないと続かないので、男女ともに面白いと思えるかが重要なポイントです。いくつか試した中で、男子と女子の両方が面白いと思えるものがドローンでした。新カリキュラムで探究ITをやると決まってからは、他の教員たちとも議論しながら、電技研でやってきたことを一般生徒向けにしたカリキュラムを模索。情報テクノロジーを使いこなせるように、そして最終的にはSDGsを情報テクノロジーで解決することを目指した展開を考えています」(岩田先生)

▶︎岩田亮先生

▶︎Arts and Techの授業(高校)

企業の協力も得て最先端のテクノロジーを体験

探究ITの授業では、同校ならではの設備や資源、人脈を活用して、最先端のテクノロジーを体験させながら、ゼロから新しく物を作るデザイン思考を取り入れたPBL(Project Based Learning)を行っていく。しかし、デザイン思考は誰でも教えられるわけではないので、その部分は企業に協力を依頼しているという。

「中1のテーマは『最先端と不便利さ』。導入として映画『アポロ13』を使い、その後宇宙関係の企業の方に来ていただき、人工衛星データを使ってデザイン思考を学びます。次に、ドローンやロボット、セグウェイ、iPadを体験。テクノロジーで遊びながら、操縦や制御、アプリの活用、プログラミングなどを学んでいきます。後半のポイントは、不便利さです。歴史的実験装置を再現してITの進化系を探ったり、ラジカセやポケベルなど、1980年代のテクノロジーについて親や教員にインタビューして、今と過去を比較します。スマホとパソコン、Switch(ゲーム機)などしか知らない子たちに、過去の技術や製品も知ってほしいです」(岩田先生)

そして中2につなげるまとめとして、ものづくりの現場を知るために飛行機の整備工場を見学する。

「エンジニアの真剣さを体感し、テクノロジーとはどんなものか社員の方から話を聞いた後に、生徒たちが発案した次世代テクノロジーについて発表します。これが1年間のイメージですが、すでにわくわくしています(笑)。教員がわくわくするものでなければ、生徒たちが面白いわけがないと思います。まずは面白いと感じてもらい、中2、中3へとつなげていける授業にしていきたいです」(岩田先生)

中2のテーマは、5GやIoT、AIなどを扱う「NEXTスマート」。そして中3では「SDGs×IT」をテーマにリアルな社会課題をITで解決する方法を探る。

「探究GCとの架け橋となるように、中2でSDGs関連の外部コンテストなどにも参加したいと思っています。中3の後半は、GCと合流して『総合探究』です。それまでにこの授業でITを楽しんで、ITで何ができるか知り、ITという武器をたくさんそろえて、自分たちで課題発見できるようにしておきたいと考えています。そして大切なのは、主体的に動けるようになることです。電技研では、生徒たちから『3Dプリンターが欲しいです』と予算を請求してきたり、どんどん業者に電話して『この部品ないですか?』などと問い合わせをしています。探究の授業を通して、自分たちで動けるようになることも期待しています」(岩田先生)

中3の「総合探究」でGCとITが合流

中1から中3の前半までは、GCとITはそれぞれ授業を進める。そして、最後に「総合探究」という形で合流。GCで自分と立場の違う人たちのニーズを知り、見つけた課題をITで解決する探究プロジェクトを立ち上げることがゴールであると、金森先生は説明する。

「課題を見つけることができても、経験がないと解決するために何が必要なのかわかりません。まずは知ることが必要ですが、人と会ったり出来事に接して知る子もいれば、情報技術が発展してきた歴史から知る子もいます。ですから、GCとITの両方を並行させて行うことが必要なのです。総合探究では、GCとITのどちらに重きを置いてもよいと考えています。ITを使って人を助けるアプリを作ってもいいですし、社会で困っている人たちに働きかけるということでもいいのです。今まで知らなかった世界、立場の違う人たちの考え方や困っていることを知り、それを人と共有して、そこから新しいことを作っていけたらいいなと思っています」(金森先生)

「総合探究」の締めくくりである「探究発表会」では、アウトプットの方法は自由だという。それまでの授業を通して、様々な表現方法の引き出しを作ることが大切だと、斎藤先生は語る。

「1年生はインプット中心になりますが、調べたり、吸収したり、教えてもらったり、たくさんの経験をバランスよくできるかが重要です。グループワークや個人で考えたり、
いつも同じパターンではなく、生徒たちが成長できるように幅のある形で取り組んでいきたいです。中3の最後にアウトプットの場がありますが、そこではどのような発表にするかの制限はありません。ポスターセッションやPowerPointだけでなく、演劇で表現したり、いろいろな表現方法が見つけられると思います。表現方法は多様になってきているので、探究での経験を通して引き出しを作ってほしいです。高校生になったら、もっと自由に自発的に動き、適したものを選べるように、その土台を3年間で作ることを目指します」(斎藤先生)

学校の中で見つけた課題と役に立つ喜び

日本や世界が困ったときに何かできる子たちを育てることが、GCとITを作った理由だと斎藤先生は説明する。そして、それが実現できると思えるのは、すでに生徒たちが自発的に取り組んでいる様子が見られるからだという。

「例えば本校では、教室の教卓をなくして、可動式のスタンディングデスクにノートパソコンを乗せて授業を行っています。支える棒が真ん中に1本あるだけのデスクなので、中学生がその上に乗って遊んだらすぐに壊れてしまいました。机に乗って遊んでしまうのは子どもっぽい行動なのですが、その後が本校の生徒ならではの行動です。すでに8台も壊してしまったのですが、なぜすぐに壊れてしまうのか原因をさぐるために、ファクトリーで教員と一緒に分解しました。どのパーツが弱いか原因を突き止めたら、電技研の部員が設計しなおして3Dプリンターで壊れにくいパーツを作り、そのパーツでデスクを直して使っています。教室の本棚が壊れてしまったら、工作技術研究部の部員が全教室分を作りました。たいへんな作業なのに嬉しそうに、使命感にかられて作っています。そんなふうに、いろいろな部活の生徒たちが活躍している姿が見られるので、ITやGCのような授業もよい形になると思っています」(斎藤先生)

同校は、2022年に創立100周年を迎える。パンフレットなどに載せる100周年のロゴマークも、業者には頼まず、コンペを行って生徒が考えたものを使うという。

「12月の初旬が締め切りなのですが、絶対にコンペに勝って総合型選抜(旧AO入試)の自己アピールに加えたいと、気合いを入れて取り組んでいる子もいます。100周年に向けて広報でも使っていきたいので、どのようなロゴに決まるか楽しみです」(斎藤先生)

就職するときに必要な力を中高で育む

芝浦工大の就職課長を経験したこともある大坪校長先生は、就職が先に決まる学生と決まらない学生の差は、自分でアクションを起こせるかどうかだと説明する。

「就職が先に決まる学生は、自分で課題を見つけてその先には何があるのか、どんどん深められるのです。なぞっただけで終わりにしたり、寄せ集めた知識でわかったような気になると、一気に見破られてしまいます。コミュニケーション力は、理系には必要ないと思われていますが、そんなことはありません。コミュニケーション力というと器用におしゃべりをする力と短絡的に考えてしまいがちですが、そうではなく、見つけた課題の先にあるものに興味を持って探っていくことができる、アクションを起こせるか、ということなのです。それを身につけるのは、大学3年の終わりでは遅すぎます。本校では、それを身につけるための授業がまず高校のカリキュラムで実現し、今回中学のカリキュラムでも実現しました」(大坪校長先生)

就職先では、どの大学を出たかは意味がなくなってきており、トップ企業でも多様性を求めようと変わってきている。大切なのは探究する力であり、自分の人生のことも含めてどこまで真剣に考えて深められるかだという。

「芝浦工大の前学長、柘植綾夫先生は三菱重工の技術部長もされていました。柘植先生の『3回問い直す』という言葉が心に残っています。ものづくりの現場で何か失敗が起きたとき『なぜ?』と聞いても担当者の言い訳などしかでてきません。そこからさらに『なぜそうなったのか?』と聞き、さらにもう一度問いかけることで、コアな部分にようやくたどり着けるのです。自分自身に対しても、そのような問いかけができることが大切だと思います。それができれば、事の本質に迫れるのです。本校では、通常の授業も行いながら、そういった経験も積んでいきます。そこから、グローバルやIT、コンピュータ、マシン、通信、環境、生命などのキーワードと結びつけば、世の中の困りごとを解決していくことができるでしょう。『問い』はあちこちにあるのです。身の周りのものから課題を見つけ、探究できる人材を育てたいと思っています」(大坪校長先生)

▶︎校長 大坪隆明先生

<取材を終えて>
撮影のために電技研(部員約180人)を訪問したが、「納期」や「発注」などの言葉も飛び交い、どこかの企業のような雰囲気だった。ロボカップジュニアのサッカー競技用に自律型ロボットを作っていたり、電技研を紹介する動画やサイトを作成していたり、壊してしまったデスクの部品を3Dプリンターで作っていたり、それぞれが自分の“仕事”をもくもくと進めている。どれもレベルが高く、それぞれが主体的に進めているのだ。そして、それぞれに面白さや楽しさを感じていることも伝わった。これを他の生徒たちにも広げていくのが、新たに始まる2つの探究型授業である。どのような授業を展開していくのか、非常に楽しみだ。

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