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しばうらこうぎょうだいがく

芝浦工業大学附属中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(芝浦工業大学附属中学校の特色のある教育 #6)

理工系の人材育成を目指すグローバル教育

芝浦工業大学附属中学校では、中学3年次に全員参加の海外研修を実施している。世界で活躍できる理工系の人材育成を目指す、グローバル教育の特色とは?

芝浦工業大学附属中学校では、グローバル教育の一環として、中学3年次に全員参加の海外研修を実施している。2018年度の海外研修でアメリカへ行った生徒3人(現高1)と、教頭の高橋英男先生に話を聞いた。

グローバル社会に向けて身につけておきたい3つのスキル

同校では、グローバル社会で活躍するために備えておきたいスキルとして、英語、日本語、コンピューター言語の習得に力を入れ、少なくともこのうちの2つを使いこなせるようになることを目指している。

「グローバル教育というと、英語ばかりに力を入れがちですが、英語力のベースになってくるのが日本語のコミュニケーション力です。日本のことを理解しないで海外へ行っても、驚いて帰ってくるだけになってしまいます。日本語と英語の表現の違いを知ることも大切。本校の特色に関わるコンピューター言語と、英語、日本語の3つを融合させる形で理工系の人材育成を目指しています」(高橋先生)

同校では中1と中2の2年間、言語技術を学ぶ授業として「つくば言語技術教育研究所」の指導に基づく「ランゲージアワー」を実施。「論理力・伝達力・分析力」を柱に、基本的な技術を身につけるとともに、社会で自立していくために必要な論理的思考力や批判的思考力を育成することを目指す。

「理系が得意な生徒が多いので、国語や英語などの言語処理の分野に力を入れてこなかった生徒もいます。ランゲージアワーは、一般的な国語の授業とは異なり、言語技術教育の手法を取り入れた授業。わかりやすい日本語にすることに特化して、読む・書く・聞く・話すの4技能を鍛えることが目的です。英語については、日本語以上に苦手意識を持っている生徒も多いので、まずは英語を話したくなることを目指して海外研修を実施しています」(高橋先生)

▶︎教頭 高橋英男先生

2019年度から中学3年次の海外研修は4コース

中学3年次には、全員が参加する約2週間の海外研修を実施。科学技術系や情報系の産業が盛んなシアトル(ワシントン州)では、アクティビティの1つにボーイング社見学が組み込まれている。セントジョージ(ユタ州)では、ブライスキャニオンやザイオンの国立公園を訪れ、雄大で険しい自然を体感。ソルトレイクシティ(ユタ州)では、2002年冬季オリンピックの開会式・閉会式の会場となったフットボール場やヒル航空宇宙博物館などを見学する。この3コースに、2019年度からデンバー(コロラド州)が加わった。

「海外研修を実施するようになって、今年で26年目です。2001年に同時多発テロが起きたとき、飛行機が飛ばなくなってしまったことがあります。ユタ州からロサンゼルスまでバスで移動したという経験から、各コースはコンパクトに移動できる人数にしたいと考えていました。そこで、今年度からデンバーを加えた4コースとなっています。デンバーでは、ロッキーマウンテンや自然科学博物館、大規模農場を見学するほか、フードデザート(食の砂漠)問題*に取り組む団体の活動について学び、ボランティア活動なども行う予定です」(高橋先生)

*社会や経済環境の急速な変化の中で起きている生鮮食料品供給体制の崩壊と、それに伴う社会的弱者層の健康被害などの社会問題。

どのコースも、2人1組で現地の家庭にホームステイ。毎回、ホームステイの最初と最後にホストファミリーと一緒に写真を撮影する。初めて会った家族との撮影では緊張して堅い表情をしているが、帰国前の撮影では、本当の家族のように打ち解けているという。

「12泊程度では、英語力自体はそれほど変わらないでしょう。しかし、聞き取る力は伸びます。ホームステイは、現地の家族が日常で使う英語のシャワーを浴びる体験。現地の家庭に2人で入って、起きてから寝るまで日本語が通じない環境で生活しなければなりません。話すきっかけになるように、折り紙やお箸を持参して使い方を説明したりする生徒もいます。なんとか話したいけれど英語力がないために悔しい思いをしたという経験が、英語学習へのモチベーションになるのです」(高橋先生)

中高一貫校だからできる中3での海外研修

一般的に、異文化体験にウエイトを置く海外研修であれば、心が柔らかい中学生のうちがいいといわれている。

「語学としての英語のレベルアップを目指すなら、高校生で海外研修に行く方が成果も期待できるでしょう。本校でも、高校の希望者は、ニュージーランドやセブ島への語学研修を用意しています。一方で、感受性が豊かな中学生のうちに海外研修に行くことは、後の人生にも大きな影響を与える体験になります。数年前、セントジョージのショッピングモールでの研修に同行していた教員が、社会人になった卒業生3人にばったり会ったことがありました。卒業生の1人がロサンゼルスで働いていたので、他の2人が休暇を取って彼を訪ねて、中学生の頃を懐かしんで当時行ったショッピングモールを訪れていたのです。休暇を取ってまで再訪したいと思うほど、心に残る体験だったのだと思います」(高橋先生)

シアトルコースには、ボーイング社の工場見学が組み込まれているが、今年度の見学は特別なものになるという。

「日本の航空会社に勤めている卒業生が、ボーイング社に出向していて、何か研修の手伝いができないかとメールをくれました。それをコーディネーターに伝えたところ、
工場見学の案内役を卒業生の彼がやってくれることになったのです。彼は、中学生のときにボーイング社の工場見学をしたことが忘れられないと言っています。そこから、芝浦工大へ行って機械工学を学んで航空会社に就職しました。海外研修が20年以上続いているからこそ、このようなことも実現できで嬉しいです」(高橋先生)

英語力を強化して海外研修が成功体験になることを目指す

芝浦工業大学は、2014年に国のスーパーグローバル大学創成支援事業に採択された。その附属校として、「これまで通り日本語とコンピューター言語も含めた3つの言語を大切にしつつ、その中でもさらに英語力を強化していきたい」と高橋先生は語る。

「一般理系コースの高2・高3には、ハイレベルな授業を行う選抜クラス『英語SUPERコース』が用意されていますが、今年度は希望者がかなり増えました。英語への関心が高まってきているので、海外研修もより実りのあるものにしていきたいと考えています。例えば、場面を想定してこんな会話がしたいという事前学習を行い、現地でそれができたという成功体験にしていきたいです。現地でできなかったからもっと話せるようになりたいというモチベーションではなく、できたけれどそこからさらにステップアップしたいことがでてくるという経験になることを目指していきます」(高橋先生)

2018年に海外研修を経験した高校1年生3人にインタビュー

Nくん ソルトレイクコース
Mくん シアトルコース
Iくん セントジョージコース
(写真左からNくん、Mくん、Iくん)

――それぞれのコースを選んだ理由は?

Nくん ソルトレイクシティは、冬季オリンピックが開催された都市です。どのような会場で開催されたか興味があり、とても大きな塩湖があると聞いていたのでそれも見たいと思いました。

Mくん 先輩から「シアトルはいいよ」と聞いていて、海が近くて気候も日本に近く、いろいろな人種がいることにも魅力を感じました。

Iくん 国立公園が多くあり、雄大な自然など、日本では見られないものがたくさんあるのでセントジョージにしました。

――現地で驚いたことや印象に残っていることはありますか?

Nくん 土日はホストファミリーと過ごすことになっていて、最後の日曜日には滝へ連れて行ってもらいました。滝の落ち口の近くまで自分たちの足で登り、目の前にものすごく大きな滝があり、すごい量の水が落ちていく様子を間近で見たことが記憶に残っています。滝壺からさらに下へと水が落ちていき、川につながっていました。登っていく途中にも滝の音が聞こえてきて、大きな滝に向かっていることが耳からも感じることができます。あれほど幅も広くて、落差もある滝は、日本では見られません。

Mくん 休日に、ホストファミリーと教会へ行ったことが印象に残っています。教会は静かにお祈りをするイメージでしたが、訪れた教会は近代的な建物でした。ドラムやベースもいるバンドが来て、みんなで一緒に歌います。キリスト誕生についての歌詞ですが、現代的にアレンジされていて親しみやすい歌でした。スクリーンがあり、歌詞やミュージックビデオが映しだされます。神父さんも、冗談まじりで日々の知恵みたいな話をしていました。教会に来ている人種も様々です。

Iくん ブライスキャニオン国立公園など、とにかくすべてが大きいです。自然が作り出した赤い土柱がたくさんあって、ビックリしました。歩いているだけで唇が乾燥してきたり、日差しが強いのでサングラスをしている人が多くいたりして、気候の違いも肌で感じました。

――英語力の変化は感じられましたか?

Nくん 最初の頃は、恥ずかしいとか、間違っていたらどうしようなどという気持ちがあって、ホストファミリーとの会話もステイメイトに任せてしまっていました。大学での語学研修でも、先生が何を言っているかわからなかったのですが、5回目の語学研修では、先生からの質問も聞き取れて、自分の考えも伝えることができたと思います。その頃には、ホストファミリーとも1対1で会話できるようになっていました。わからなかったことがわかるようになったというより、わかっていたけれど言えなかったことが、自信を持って言えるようになったのだと思います。

Mくん 英語はあまり得意ではなく、日本語でも初対面の人と話すのは苦手ですが、ホストブラザーが明るかったので、気楽に接することができました。最初のうちは、ステイメイトと部屋にこもっていましたが、休日にホストマザーとオリンピックについて話してみたら、片言でも聞き取ってくれました。こちらの言いたいことを察してくれたり、話すスピードも合わせてくれたりします。片言でも伝わるんだと思ったら、授業で学んだ助動詞や前置詞などもちゃんと入れてみようという気持ちになりました。toとかforとかを入れてみて、間違っていたら違うと教えてくれて、いいホストファミリーに巡り会えたと思います。

Iくん 最初の方は全然聞き取れなかったので、自信が持てませんでした。何日か過ごしていくうちに、国立公園などで話しかけられたりすると、自然に英語で答えるようになって自信がついていきました。自信がついてきて、どんどん答えられるようになったら、聞き取れるようにもなりました。最後の方は、ホストファミリーが言っていることが、8割~9割聞き取れるようになったと思います。

――これから英語をどのように学んでいきたいですか?

Nくん アメリカ滞在中に、留学に来ていた日本人と出会いました。その人は、明確に自分のやりたいことを決めて、自分に足りないものを手に入れるためにアメリカに来ていました。自分とは違い、ちゃんと未来が見えていたのです。芝浦工大では、留学を推奨しているので、その時までに自分のやりたいことを明確にして、足りないものを手に入れられるようになりたいと思っています。英語を話す力や聞き取る力も足りないので、次に留学するときまでに補っておきたいです。

Mくん 英語で論文が書けるレベルになりたいです。大学では、脳に外から信号を送って認識させる人工視覚などの研究をしたいと思っています。そのためには英語の論文を読んだり書いたりする力が必要なので、早く身につけておきたいです。脳科学の分野に興味を持ったのは、あるアニメを観たからです。その作品では、末期の病で無菌室から一歩も出られない人が、病院にいながらバーチャル世界を体験する場面があります。それはまだ実現できるレベルではありませんが、たとえば視覚に障害のある人が、外からの信号を受け取ることで外界を見られるようになるなど、体外から五感情報を与える研究がしたいです。

Iくん 映画を観るのが好きなので、字幕なしで映画を観られるようになりたいです。海外に住んでみたいという気持ちもあります。英語を学んだり、現地に住む友達を作ったりすると、見えてくる世界も変わってくると思います。

――日本語、英語、コンピューター言語のうち、どれを武器にしたいですか?

Nくん 芝浦工大へ進んで、コンピューター言語を学びたいと思っています。日本語とコンピューター言語だけでいいのかなと思っていましたが、アメリカへ行って考えが変わりました。英語ができないと、いろいろな人と関わって行く中で、自分の伝えたいことがうまく伝えられない場面があります。そのせいで、手に入れられるはずだったチャンスを取りこぼすかもしれません。そうなってしまってから、なぜ英語を勉強しておかなかったのかと後悔したくないと思うようになりました。それを気づかせるために、中3でアメリカへ行かせてもらったのだと思います。ですから、日本語とコンピューター言語の2つを支えるために、英語も学んでいきたいです。

Mくん 大学で研究したいのは、生物学の分野になります。日本の論文より海外のものが多いので、やはり英語が重要です。脳波の情報をデータ化するときに必要になると思うので、コンピューター言語も必要になってくると思います。

Iくん 日本語はある程度できていると思うので、英語とコンピューター言語を重点的に勉強していこうと思っています。就職するときに強みになるように、今からしっかりと勉強して習得しておきたいです。

――この学校のいいなと思うところを教えてください。

Mくん 先生に気軽に話しかけられる雰囲気で、生徒との距離が近いです。僕は吹奏楽部でパーカッションを担当していますが、音楽室に防音対策がしてあるので、周りを気にせず練習できるなど校内の設備も整っています。

Iくん 生徒もパソコンでいろいろ調べたりできる環境が整っているので、選択肢が広がり、趣味なども見つけやすいです。僕は水泳部ですが、卓球の動画を見るのを趣味として楽しんでいます。友達と一緒に、張本智和選手や丹羽孝希選手などのプレーを見るのが楽しみです。特に、丹羽選手は、常人では考えられないようなラリーをして観客を沸かせるプレーがすごいと思います。

Nくん 板橋からの移転をきっかけに、電子化が進んで各教室にプロジェクターが導入されました。各自がパソコンを使うなど、生徒側のやれることも増えたので、授業の質も上がったと思います。得られる知識の幅も広がり、学生生活の中で得られる情報も多くなりました。その結果、未来を選ぶ選択肢が広がったことは、この学校の魅力になったと思います。

<取材を終えて>
3人のインタビューから、中学3年次での海外研修は、将来に対する考え方など、英語力以外にも大きな影響を与えていることが伝わってきた。特に、「英語が話せないせいで、チャンスを取りこぼして後悔したくない」という言葉が印象的だった。今年度は、卒業生の案内によるボーイング社の工場見学が実現するとのことで、ロールモデルとなるような人物と会う機会にもなり、より強く心に残る海外研修となるだろう。

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