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とうきょうじょがっかん

東京女学館中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(東京女学館中学校の特色のある教育 #6)

自ら進路を探究するキャリア教育と理系コースの学習・進学指導を探る

東京女学館中学校・高等学校では、中学から体系的なキャリア教育に取り組み、生徒が自ら見つけた進路を実現できるようサポートしている。今回は理系コースの学習及び進学指導に焦点を当て取材した。

同校は中高一貫校の利点を活かし、6年間を2年ごとの3ブロックに分け、中1・中2を「自己理解」、中3・高1を「個性の伸長」、高2・高3を「自己実現」と位置付けて、教育活動を実践している。ここでは生徒たちがキャリア教育のもと、どのように進路を見つけ実現しているのか、理系コースを取り上げ、進路指導部長で理科教諭の鈴木龍馬先生と、2016年度の卒業生で医師の唐(たん)アリスさんに話を聞いた。

中3・高1のキャリア教育を経て、高2から文系・理系に分かれて学ぶ

同校は進路指導を、生き方を考える「キャリア教育」と、希望の進路を実現するための「学習指導」の両輪で行っている。鈴木先生によると「本校は高2で文系と理系にコースが分かれるため、中3と高1がキャリア教育の核となります。とりわけ中3で実施している『15歳のハローワーク』と高1の『箱根研修旅行』は、自分の進路を見出す良い機会になっています」と話す。

「15歳のハローワーク」は、10以上の職業の方を招いて行うキャリアガイダンス。社会の第一線で活躍する各界の人たちの体験談を聞き、質疑応答を行う。他にも、中3のキャリア教育では保護者に「職業アンケート」をとり、それをまとめた冊子も活用しているという。

2泊3日の「箱根研修旅行」は、進路を考えるプログラムや、社会で活躍する卒業生の講演会を実施している。「なかでも全員が行う3分間スピーチは『将来、自分はこんな仕事に就いて、こんな生き方をしたい』という思いを、クラスメイトの前で発表します。自分がスピーチするだけでなく、クラス約40人分の話を聞くことで、自身のこと、将来の進路をより深く考えるきっかけになります」と鈴木先生は説明する。

生徒が最初に進路決定をするのが、高2の文理選択だ。「近年は本校も、理系に進む生徒が増えてきました。理系を選ぶ理由として、数学や科学に興味がある、実験が好き、将来就きたい職業が理系分野だから、などが挙げられますが、最近は “自分がどんな社会貢献をしたいか”を考えて理系を選ぶ傾向もみられます。具体的には『人々の生活の質を向上するために、情報やデータサイエンスを学びたい』『科学技術で持続可能な社会をつくりたいから、理工学や環境分野に進学しよう』という考え方です。

一般的に理系の大学・学部へ進学するには、早めの準備が必要です。本校では、中学生全員が理系に進んでも大丈夫なように授業を組み立てています。数学は、予習→授業→復習のサイクルを徹底し、テスト後は『訂正ノート』で間違えた問題の解き直しをするなど、理解の定着を図っています。そして、高校では習熟度別授業を行い、高2からは進路に合わせて科目を選択します。理科は自然科学への関心を高めるために、実験や観察をたくさん取り入れ、高校では大学と連携し出張講義を受けるなど、発展的な学習にも取り組んでいます」

▶︎進路指導部長 鈴木龍馬先生

▶︎箱根研修旅行

医学部に進学した卒業生にインタビュー

唐アリスさんは同校を卒業後、昭和大学(2025年4月に昭和医科大学に校名変更)医学部に進学し、現在、同大学病院に麻酔科医として勤務している。唐さんに学校生活の思い出や、大学進学にまつわるエピソードなどを聞いた。なお、鈴木先生は高3の時の担任である。

▶︎唐アリスさん

―まず、東京女学館へ進学しようと決めた理由を教えてください。

昔のことであまり覚えていないのですが、女子校に行きたかったことと、女学館は制服がかわいくて、体育館や理科室などの施設が充実していたのが気に入りました。親は進学実績の高さなども見ていたようです。

―学校生活で楽しかったこと、印象に残っていることは?

ダンス部の活動も行事も、友だちと過ごした休み時間も、すべてが楽しい6年間でした。行事で特に思い出深いのは体育大会です。高2、高3の時は優勝を目指して朝練をしたり、高3で「カドリール」「プロムナード」をみんなで踊った時は、感動して泣きました。
「箱根研修旅行」の3分間スピーチも、印象に残っています。クラス全員の夢を聞くことは、後にも先にもない経験でした。「この人はこういう夢を持っているんだ」、「この人も医学部志望なんだ」と初めて知ることも多く、刺激になり、「医師を目指す」という自分の気持ちも固まりました。

▶︎体育大会

―医学部を志望した理由と、受験までの道のりを教えてください。

兄が病気を患っていたこともあり、小さい頃から医師になりたいと思っていました。私は一浪していて、現役の頃は筑波大学の公募推薦も受験しました。その時から、自分は患者さんだけでなく、その家族も救いたい、患者さんにも家族にも寄り添える医師になりたいと考えていました。それを志望理由書に書き、鈴木先生と国語の先生に何度も添削をしてもらいました。また鈴木先生には、化学の勉強だけでなく、精神面でも支えてもらいました。高3の時は放課後、教室に残って、先生や友だちとおしゃべりをして笑って、それから塾に行っていました。勉強ばかりしていたら気が張り詰めてしまうので、あの時間はとても貴重でしたね。

▶︎放課後の貴重なリラックスタイム

―中高時代に身についた力や得たものは? それが今も活かされていると思うことはありますか?

毎年のクラス替えでいろいろな人と仲良くなりました。また部活や行事などを通して、コミュニケーション力やチームワーク力が付いたと思います。得たものは友だちです。医学部志望の友だちも何人かいて心強かったし、今もその友だちとは一緒に旅行したりしています。
チームワーク力は、今の職場でも活かされています。昭和大学はチーム医療を重視しており、医師だからトップというわけではなく、看護師、薬剤師、みなが同じ立ち位置で仕事にあたっています。実際、医師よりも看護師のほうが、患者さんや家族の気持ちをわかっていたり、患者さんも相談がしやすかったりします。薬のことは薬剤師のほうが詳しく、私たちも教えてもらうことが多いです。手術も、外科医がいて、麻酔科医がいて、器具などを揃えてくれる看護師がいて初めて行えますし、互いにリスペクトし合っています。

▶︎麻酔科医として勤務

―最後に、受験生へメッセージをお願いします。

私もそうでしたが、「自分は何のために勉強をしているのか」、わからなくなることがあると思います。そういう時は、「この学校に通いたい」と思う気持ちを強くし、それが女学館だったら、本当に楽しい6年間を過ごすことができるので、頑張ってほしいです。女学館は明るくて活発な人が多いです。私は自分から進んで表舞台に立つのが苦手なタイプでしたが、委員会やダンス部の副部長をしているうちに慣れてきました。いろいろな経験をして、できないことも自然とできるようになる、成長をさせてもらえる学校です。

一人ひとりの生徒に合わせた細やかな進路指導

「唐さんの学年は、方向性を示し、伝えるべきことを伝えたら、きちんとやっていました。中学の生活指導がしっかりしていたので、高校では既に生活習慣・学習習慣が身についていたのだと思います。進学指導では、頻繁に面談をしました。その際は、定期テストや模試だけでなく、塾の成績表なども見て受験対策をしていました」と鈴木先生は当時を振り返る。

「最近は、医療系を志望する生徒が増えているので、その専門の予備校の先生を招き、現役合格のための勉強法なども指導してもらっています。また、卒業生にも来てもらい、受験のアドバイスをお願いしています。本校は後輩思いの卒業生が多く、少しでも在学生に貢献できればと駆けつけてくれます。

今は進学先も入学試験も多様です。私たちは生徒に正しい情報を伝え、生徒自ら進路を見出すために、たくさんの経験の場を与えることが大事だと考えています。そして、それぞれの個性に応じた進学サポートをしていきます」

このように同校は、中学から体系的なキャリア教育と学習指導に取り組み、生徒一人ひとりが希望する進路実現に向けたサポートを手厚く行っている。

<取材を終えて>
同校は毎年、医学部の合格者を出すなど、理系の進学実績が高いが、ここ数年はさらに理系志望者が増え、今は理系と文系がおおむね半々の割合だという。理系を選ぶ理由として、職業に直結するだけでなく「社会貢献をしたい」という思いがあることが新鮮だった。また、唐さんの「互いをリスペクトし合って、チーム医療に臨んでいる」という話が、同校の重視するインクルーシブリーダーシップ教育とつながっていると感じた。

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