スクール特集(東京女学館中学校の特色のある教育 #7)

同じ志、異なる英語カリキュラム 東京女学館の「一般学級」と「国際学級」
東京女学館中学校・高等学校は、一般学級と国際学級の2種類のクラス(高校はコース)を編成している。それぞれのクラスの特徴や、生徒の様子などを取材した。
同校は1888年に開校し、2004年にグローバル社会を見据えて、「国際学級」を創設。そして今年度より、1クラスだった国際学級を2クラスに増やし、一般学級4、国際学級2のクラス編成をしている。広報室長の松本春佳先生によると、「国際学級が増設されたこともあり、保護者から一般学級と国際学級の違いについて質問が多く寄せられている」と言う。そこで、それぞれの学級の特色や学校生活の様子について、生徒たちを交えながら話を聞いた。
最大の違いは英語のカリキュラム
最初に松本先生は、「一般学級と国際学級は、教育理念や教育方針、育てたい生徒像は同じです。そして、一番の違いは英語のカリキュラムです。しかし最近は、高い英語力を身につけて海外大学に進学する一般学級の生徒も増えています。異なるルートをたどりながらも、最終的に目指すところはそれほど変わらないですね」と話す。
「また、本校の国際学級は、英語力の高い生徒を選別するクラスではありません。海外帰国生、小学校からの内部進学生、一般入試を受けた生徒がほぼ同じ割合で在籍し、一般受験生のなかには中学校から本格的に英語の学習を始める生徒もいます。ですから、カリキュラムは、インターナショナルスクールのようにどの教科も英語を使用するといったものではなく、 “どれだけ深く思考するか”を重視した内容になっています。ただ、美術の授業は英語が堪能な教師がいることもあり、オールイングリッシュで行っています。美術はカタチとして見せることができるので、英語初心者にとってもハードルが低いのではないでしょうか。
国際学級の英語の授業は3つのレベルに分け、週8時間のうち6時間は北米の現地校に近い形態のLanguage Artsを実施しています。英語圏の出版物を教材として使用し、プレゼンテーションやディスカッション、エッセイ・ライティングなどの表現活動を多く取り入れているのが特色です。残りの2時間は、日本人教員が文法を教えています」
なお、同校は2025年にケンブリッジ国際教育の認定を受け、国際学級(国際コース)ではケンブリッジのカリキュラムを導入している。また、高1生全員が参加するアメリカ・ボストンリーダーシップ研修(11日間)や、希望者が参加できるオーストラリア・タスマニア文化研修(中3生 6名/10日間)、エストニア・ソーシャルアントレプレナーシッププログラム(中2・中3・高2生20名/11日間)は、国際学級単体のプログラムとなっている。
「一方、一般学級の英語の授業は週6時間、2つのレベル別で実施しています。近年は、国際学級の学びのノウハウを一般学級にも取り入れるようになってきました」
松本先生は、一般学級の英語学習がここ10年で変わってきていると言う。「例えば、中1では英語の楽曲を歌うことを通して表現を学ぶなど、英語で英語を学ぶ実践も増えてきています」。また、アメリカ、東南アジア、韓国へ行く文化研修、1年派遣留学、ターム留学も、一般と国際どちらの生徒にも用意されている。
このように、一般学級と国際学級は英語のカリキュラムが異なるものの、海外研修や留学制度など、国際的な視野を育む機会は全校生徒に開かれている。また、行事や部活動、委員会活動をはじめとする学校生活も共通だ。異なる学びのアプローチを取りながらも、同校が目指す教育の方向性は両学級で変わらないと言える。

▶︎広報室長 松本春佳先生
一般学級、国際学級の生徒にインタビュー
同校の生徒たちは、一般学級と国際学級の違いをどう捉えているのだろうか。それぞれのクラスに在籍する高校2年生に、学習環境や雰囲気、日々の学校生活などについてインタビューを行った。
話を聞いた生徒さん
Nさん 高校2年生(一般学級・理系)オーケストラ部 部長
Kさん 高校2年生(国際学級・文系)オーケストラ部 学生指揮者 幼稚園~小1までアメリカ、小3~中1までオーストラリアに在住し、中2で同校へ編入

――最初に、東京女学館と今のクラスを選んだ理由から教えてください。
Nさん まず、女子校に行きたかった! 他にも理由はたくさんあって、セーラー服の制服がかわいいこと、中1からiPadを授業などで活用していること、体育大会のダンスが素敵だったこと、そして算数の過去問の相性も良かったんです。私に合い過ぎている学校だと思いました(笑)。一般学級を選んだのは、国際学級はインターナショナルスクールのようなイメージがあったから。また、当時の国際学級は1クラスだったので、6年間クラス替えがなく、人間関係などが心配でした。でも入学したら、F組(国際学級)のイメージは全く違い、生徒同士も仲が良くて楽しそうに見えました。
Kさん 東京女学館には国際学級があり、いろいろな背景を持つ生徒が集まっているのが良かったです。また、海外で身につけた英語力をキープしたく、国際学級は中2まではネイティブの先生と日本人の先生2人が担任で、英語の学習環境も整っているので、さらに力を伸ばしていけそうだと思いました。

▶︎Nさん
――一般学級と国際学級の違いや、それぞれのクラスの特色を教えてください。
Nさん 一般と国際は、部活や行事も一緒です。体育大会も学年対抗だったりするので、あまり違いを感じません。単に、「A組」「F組」と、組が違っているだけという感覚です。以前は、国際学級から理系に進むには一般学級に移る必要がありましたが、今は国際理系(コース)ができ、私が選択している化学の授業も国際学級の生徒と一緒です。また、英語の授業は、一般学級でもプレゼンや発表を頻繁に行っています。例えば、日本文化に関連する内容を学んだ後、自分が思う日本文化について発表したり…。発表前にイングリッシュルームへ行き、ネイティブの先生にライティングやスピーキングのチェックをしてもらうことも多いです。
Kさん 国際学級の特色は、国際学級だけのイベントがあることです。例えば中3で「ロミオとジュリエット」の英語劇をしたり、高1はボストン研修、高2は校内模擬国連などがあります。中学では英語の授業を3つのクラス(習熟度別)で行いますが、高校は2クラスになります。ABCから学習を始めた人も進級するにしたがって力を伸ばしているからです。国際学級には、もともと英語を話せる人がいるので、その影響もあるだろうし、生徒だけで「木曜日は英語の日にしよう」と決めて、休み時間も英語でおしゃべりをするなど、たくさん英語に触れる機会があります。また、私を含め帰国生は割と文法が苦手で、感覚で話すことが多いのですが、きちんと文法の授業をしてもらえるので、確かな英語を身につけることができます。
一般学級との大きな違いは、クラス替えがないことでした。正直、中学時代はクラスメートとケンカをすることが多かったですが、行事などを経て団結するようになり、高校生になると精神面も成長するので、今は一生の友だちができたと言えるくらい強い絆ができました。

▶︎Kさん
――今、考えている進路や将来の夢を教えてください。
Nさん 私は入学した時から理系志望で、今は医学部か歯学部に進みたいと考えています。小さい頃から医療ドラマが好きで、高2で取り組んでいる探究論文*も、「災害時のトリアージ」をテーマにしています。倫理的ジレンマにも向き合い、それをAIで補強するのは可能か、という点も掘り下げてみたいと考えています。
Kさん 小さい頃から海外にいたので、ずっと英語を活かせる仕事に就きたいと思っていましたが、女学館に入って好きなことが見つかりました。それは音楽です。「人は音をどう感じるか」ということに興味があり、探究論文も “周波数”をテーマに書いています。その際、東京藝術大学の教授にも話を聞きに行きました。今は、得意な英語と好きな音楽の両方に関われる進路はないか、先生と話し合っているところです。
*探究論文…高1から自身の決めたテーマで探究し、高2で5,000字以上の論文を作成する。
――東京女学館の良さ、魅力は何でしょうか?
Nさん 中1は宿泊研修、中2はイングリッシュキャンプ、中3は広島修学旅行、高1は進路を考える箱根研修旅行、高2は京都・奈良修学旅行というように、毎年、宿泊行事があり、いろいろな体験ができることです。海外研修も豊富にあります。私は夏休みの部活の合宿と重なって行けなかったけれど、参加した友だちの話を聞いて刺激を受け、この春休みに一般のカナダ留学をしました。思っていたよりもコミュニケーションをとることができ、授業で学んだことが役に立っていることを実感しました。
Kさん 女学館は、みんながそれぞれの得意なことを活かしたり、活躍できる学校です。例えば、運動が得意な人は体育大会、音楽なら合唱大会。私も指揮者を務めました。それぞれの分野でリーダーシップを発揮し、またリーダーに協力して1つのものを創り上げようという団結力があります。女学館には英語力を伸ばそうと入学したけれど、それ以上に人間として成長することができたと思っています。
学校に来て、自分に合った学級を確かめてほしい
生徒へのインタビューからも、両学級は学校生活やキャリア教育に関しても、違いがないことが伺える。
では、一般学級、または国際学級に向いている生徒の特徴というのはあるのだろうか。
松本先生は、「安易に言えるものではありませんが…」と前置きをした上で、「国際学級は、英語が好きで『高い英語力を身につけたい!』と強い意志のある人、また、入学前から将来のビジョンが明確にある人が向いていると思います。卒業生に、入学時からディズニーアニメーションで働く夢を持っていて、国際学級と絵画部を選択した生徒がいました。彼女は、アメリカのCalifornia Institute of the Artsに進学し、その後、念願のWalt Disney Animation Studiosで勤務しています。一方、一般学級は、いろいろな教科を満遍なく学び、時間をかけながら将来の目標を決めたい人に向いていると思います。いろいろ学んだ上で、『英語が面白いかも。海外や英語関係に進みたい』と思ったとしても、十分に伸ばしていける環境はあります」と話す。
そして、最後に松本先生は受験生に向けてこう語った。「やはり、どちらの学級が自分に向いているかは、実際の生徒の様子を見て決めてほしいと思います。例えば、今年は7月18日に国際学級の説明会があり、国際の生徒を対象にしたデモ授業も行います。自分がその授業を受けていることを想像できるか、雰囲気なども感じ取ってみてください。また、通常の学校説明会では、全ての学年、クラスで授業を公開しています。見学をして、どちらの学級がしっくりくるかを判断していただくのが一番だと思います」

<取材を終えて>
最近は英語に特化したクラスを作り、入学時から一定の英語力を求める学校も多く見られるが、同校の国際学級はABCからのスタートであっても、学習意欲のある生徒であれば受け入れているのが特徴だ。国際学級か一般学級か選択するには、“英語”がキーになるだろうが、同校は以前から英語教育や国際教育に力を入れている学校であり、一般学級でも海外大学へ進学するチャンスは大いにある。最終的には、受験生本人がそれぞれの学級を見て、自分の感覚に合うか確かめることが不可欠だと思った。











































