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とうきょうとしだいがくふぞく

東京都市大学付属中学校 

スクール特集(東京都市大学付属中学校の特色のある教育 #3)

情報の授業を通じて「探究力」を身につける

「パソコンスキルやプログラミングが主」と思われがちな情報の授業。クエストカップや人間ドキュメンタリーワークを取り入れた東京都市大学付属中学校独自の授業を取材した。

単なるパソコン操作やICTを学ぶだけではなく、情報化社会の中で勝ち抜くための問題解決力を身につける情報の授業について、その取り組みを情報科教諭の長谷川聡先生に聞くとともに、授業の中で取り組んでいる「クエストカップ」の全国大会出場者にインタビューした。

「探究→討論→発信」型の情報の授業

「情報の授業というとプログラミングやパソコンを使って何かをする、というようなイメージが強いと思いますが、本校は進学校でもあるし、それぞれの科目で生徒は多くの知識を身につけています。それをフルに活用して、いろいろな知識、知恵を出し合って、一つのものとして作り出して発信していく、これを情報の授業の一つの視点としています」(長谷川先生)

学んだことを、ただそこで終わらせるのではなく、きちんと活用できるようにする。そのため、アクティブラーニングを取り入れ、実践を通じて情報表現力や問題解決力を身につける「探究型」の授業となっている。情報の授業は中2、高1、高2(文系のみ)で行われるが、中2でパソコンスキルを身につけたうえで、高1では10年以上前から「クエストエデュケーションプログラム」を導入。企業から出される課題にグループで意見を出し合い、1つの企画にまとめ、プレゼンテーションを行う。また、高2の文系選択者には「人間ドキュメンタリーワーク」を実施。こちらもグループワークで、有名人のロールモデルを選び、ドキュメンタリーを作成する。

「クエストカップなど探究型プログラムでは、よいアイデアが思い浮かばず暗礁に乗り上げ諦めかけたり、締め切り間近になって問題点が見つかり、振り出しに戻ることになったりするなど困難もあります。でも最終発表を終えた後の振り返りでは、自分のアイデアが採用されたことの喜び、困難を無事に乗り越えた達成感、新しく発見したメンバーの良いところ、多くの成果をそれぞれが感じているようです。どうやってメンバー同士で妥協したり、誰の意見をどう採用するか、一緒にすることによってどういう効果があるのかなど、生徒自身が気づくための枠でもあるのです。
探求にゴールはありません。自分と向き合いながら終わりのない探求をいつまでもどこまでも続けていく、そのきっかけとなるような授業を行っています」(長谷川先生)

▶︎情報科 長谷川聡先生

●高1で取り組む「クエストエデュケーション」

2学期の全授業を使い、企業のミッションに対する提案をプレゼンテーションする。授業は2時間続き。探究学習では問題解決する前の問題を発見することが一番重要であるとして、それぞれの企業の歴史から調べる。生徒同士の相互評価だけでなく、実際の会社員からフィードバックがあることも。このような取り組みを通して、大学進学、その後、社会人として世の中で活躍する人材となるためのきっかけになればという。

与えられたミッションの解釈から、どのようなブレーンストーミングをして、まとめ上げていったか、一連の流れを全て発表する。結果だけでなく、プロセスも重要ということだ。さらに、スライドや、話す速度、声の大きさなど、伝え方も重要なのだという。

●高2(文系)で取り組む「人間ドキュメンタリーワーク」

「実在の人物の人生から力をもらう」をテーマに、実在の人物を深堀りし、知ることによって、自分の生き方のモデルにしてもらいたいという狙いがある。自分たちで選んだロールモデルの「どこの部分」をピックアップして「どこまで」「どの程度」伝えるか。また、伝えるにあたって、どのような表現方法を使うと、より相手に伝わりやすいのかを考える。

クエストカップ全国大会出場チームに聞く

高校1年生が情報の授業として毎年取り組んでいる「クエストカップ」。実際の企業からのミッションについてチームで考え、企画を提案する。2020年度、全国大会に出場した「出汁なし味噌汁5」のメンバー4人に、その内容と取り組みを通して学んだことなどを聞いた。

▶︎出汁なし味噌汁5メンバー

Q.情報の授業は中学2年生と高校1年生の時にありますが、中学と高校では違いはありますか?

Iくん:中学の時は、ほかの仲間とディスカッションする機会はあまりなかったのですが、高校では仲間と一緒にディスカッションすることがあったということが大きな違いです。

Sくん:中2の頃は自分での作業が多くて、たとえば新聞を作ったり、企業研修のためにチラシを作ったりしていましたが、高1になると情報という観点からインターネットなども取り入れながら仲間と一緒に作っていくというところが違うところです。

Nくん:中学の頃は本当に自分で作業することが多かったのですが、高校に入ってグループディスカッションをするようになりました。やっぱり、一人よりも大勢と意見交換するほうが、良いものができると思いました。

▶︎Iくん(高1)

Q.クエストカップで取り組んだテーマを教えてください。

Nくん:最初に候補先の企業を全員で調べて、身近だし、個人的に一番やりやすそうなのが吉野家さんだったので、吉野家さんがいいんじゃないか、と提案しました。

Iくん:吉野家ホールディングスから与えられたテーマは、「かけがえのない存在」となれるような、人々の健康に寄与する企画を考える、です。

Sくん:吉野家ホールディングスのミッションに対して、自分たちでミッションの内容を解釈して企画提案をしました。僕たちの提案は「健康に寄与する」ということから「健康アプリを作る」という企画で企業にプレゼンテーションしました。

▶︎Sくん(高1)

Q.どのようにして、「健康アプリ」に行き着いたのですか?

Sくん:最初はミッションの解釈にすごく困って、なかなか案が出ませんでした。先生からキーワードを出してはどうか、とアドバイスをもらい、一人ずつキーワードを出しあって、それをまとめて一つの大きな企画を考えました。

Iくん:それぞれパソコンにキーワードを入力して、全員の案を見てみたら、スマホを使ってできるようなことが多かったので、アプリという考えに至りました。アプリを使うことに決めてからは、意見がまとまるのが早かったです。吉野家ホールディングスのミッションである「人々の健康に寄与する」という要素を加えて、健康の要素を加えたアプリがいいんじゃないかという案にまとまりました。

Q.健康アプリとはどのようなものですか?

Sくん:例えば、駅などの階段にカロリーが書いてあったりしますが、そういったのを見ると、実際に階段を上ってみたくなったりします。同じように、メニューにもカロリーや栄養素の量など具体的な数字を表示したりすることによって、そのメニューの需要が高まるんじゃないかと考えました。

機能の面では、より簡単に自分が食べたものを記録できるようにしました。例えばキャッシュレスで決済をする場合は、決済と同時にアプリにカロリーや栄養素が自動的に記録されるようにして、現金の場合はレシートのバーコードを読み取ることで記録できるように考えました。

Iくん:また、一目で見やすいように、自分が食べた栄養素をグラフ化しました。それで、なるべく健康な食事を心がけて、栄養バランスの良い食事がとれていたら目標達成ということで、飲食店のクーポンがもらえたり。目標を達成することによって報酬がもらえると、モチベーションの向上にもつながるし、利用者も増えるのではないかと考えました。

Q.プレゼンテーションの評価はいかがでしたか?

Sくん:円グラフなどで事実を盛り込んでいたり、このアプリができたら何ができるのか、アプリを作る理由などが明確になっていた点はよかったと評価していただきました。

Iくん:逆に質問として「吉野家の利益につながるのか」というのがあったのですが、うまく答えられなくて……。もう少し、そこの対策が必要だったなと思いました。

Nくん:中間発表のときは、もうちょっと声を張ってほしいとか、もう少しゆっくりしゃべってほしいとか、話し方についての指摘が多かったです。スライドに関しても、図とかイラストとかを使い、話すだけじゃなくて、目で見てもわかりやすいようにしたほうがいいのではないかという意見があり、グラフやイラストを追加しました。

Q.なるほど。内容だけでなく、伝え方も大切なんですね。クエストカップの体験から、どんな力が付いたと思いますか?

Sくん:クエストカップを通して、積極的に発言することが大事だなと思いました。今まで、授業中などはどうしても周りの目を気にして手を上げられませんでしたが、仲間とグループワークしているときは、少なからず自分が思っていることを発言したり、他人が言ったことをただ否定するのではなく、いい面も伝えることが大事だと思いました。

Mくん:グループワークでそれぞれ意見を出し合いましたが、それぞれ思っていることが違っていました。意見が違う中で、全員の意見を取り入れて一つの案を作る、全員が納得していい案を作るためには、妥協点というのを見つけなければなりません。その妥協点の見つけ方を授業やクエストカップを通して学ぶことができたかなと思います。

Iくん:僕は部活の大会とか、こういうクエストカップの発表とか、何事も本番前にすごく緊張しちゃうんです。クエストカップで全国大会に行ったという自信から、自分が人前で何かをするときに、より自信を持てるようになりました。

Nくん:中間発表を通して、自分たちのプレゼンをほかの人に聞いてもらうことの大切さを学べたと思っています。自分たちでは見えなかった疑問点や改善点が、他人に聞いてもらうことによって出てくることがよく分かったので、そういうことを大切にしていきたいと思います。

▶︎Mくん(高1)

Q.全国大会で他校のプレゼンテーションを聞き、何か気づきはありましたか?

Iくん:大会後、みんなで話したのですが、全国レベルの高さを感じました。

Mくん:僕たちはそこに行く前に全力でやって仕上げたという感じなんですけど、そこからまた一ひねり、印象に残りやすい工夫がほかのグループには結構あったので、そこが必要なんだなというのを感じました。

Sくん:同じ一つの吉野家のミッションでも、さまざまな解釈があって、さまざまな企画があることがわかりました。例えば僕たちも考えていたクーポンの使い方もグループによって全然違っていて、僕たちは目標を達成したらもらうという感じでしたが、くじでクーポンをもらうというのもあって、自分たちになかった考え方を他校の中に発見することができて、非常に有意義な大会だったと思います。

Nくん:僕らよりも事前の情報量が他校のほうが多くて、僕らにはなかった視点とか、例えば吉野家が運営している牛丼の移動販売車があるんですけど、そのことを僕らは知らなくて、そういう下調べの力の差を知りました。また、クオリティの差も感じましたが、いろいろな人の意見が聞けて、自分の考えをもっと深められる、いい機会だったと思います。

▶︎Nくん(高1)

情報の授業こそ一番必要な授業

ほとんどの生徒がパソコンについて学ぶというイメージを持って授業を受けに来ていた4月。「情報の授業=コンピューター+プログラミング」というイメージが先行しているためだ。しかし、情報の授業が一年間終わると、伝え方はどうだったか、逆に受け止め方はどうだったかといった「情」「報」にどう向き合わなくてはいけないのかという意識に変化してくるという。その理由は、長谷川先生のこんな言葉からうかがえる。

「今の世の中は、なんでも批判をする風潮があるけれど、そうではなくて、よいところを見るように意識しなさい、と生徒に言っています。批判をされたら誰も喜ばないということもありますが、いいところを見つけるということは、話を聞く側も意識を大きく変えないと出来ないことなのです」(長谷川先生)

また、あくまでもコンピューターはツールであり、プログラミングは数学的、論理的思考を身につけるための手段だと長谷川先生は言う。例えば、プログラミングの授業では、出されている課題が何かをきちんと読み解かなければ、プログラミングの知識があっても求める結果を出すプログラムは作れない。まず必要なのは、「国語力」。出されている問題から何をしなければいけないのか、まず考える。それを実現させるためには、何をしなければいけないか、段階的に考える。それをプログラムで入力する段階で、また、論理的に組み立てて考える。そんな情報の授業こそ、この時代に一番必要とされる教科なのかもしれない。実際「情報が一番必要な授業だと思います」と言った生徒もいたという。

BYODを2021年度の高校1年生から実施

情報の教室で使用しているパソコンはタブレットとしても使えるノートパソコンだ。グループワークやプレゼンテーションの際にタブレットとして使うことを想定している。机も動かせるようになっており、グループワークがしやすく整備されている。正面に大きなスクリーンと、いくつかのグループに分けて同時にプレゼンテーションできるよう、5台のモニターを設置している。

また、2021年度の高1からBYOD(Bring Your Own Device)を実施。一人一台の端末導入がスタートする。3年をかけて、高校生全員のBYODが完了し、その後は中学生も導入していくという。それに伴い、校内のネットワークについても、生徒が十分通信回線を使えるような準備を進めているところで、情報機器の環境整備が進んでいる。

パソコンリテラシーの低下が課題

「年々、パソコンが使えなくなくなってきています。スマートフォンが増えてきたことで、うちの学校だけではなく、世の中としてパソコンリテラシーが低下してきていると思います。なので、教室のパソコンはタッチパネルにもなりますが、できるだけキーボードで入力するように生徒たちには言っています」(長谷川先生)

筆記用具と同じと言われることも多いパソコン。パソコンスキルが乏しいせいで入力スピードが遅くなり、せっかくの考えも時間内にアウトプットしきれないまま終わってしまうこともあるそうだ。タイピング力も含めたパソコンスキルをベースとして持つことも重要というわけだ。パソコンスキルが足かせになり、正しく評価されないとしたら残念なことだ。

「実際、成果物の完成度が低く、評価するのが難しいこともあります。プログラミングでも、いいアイデアを持ち、論理的に考えられていても、入力するスピードの問題で終わらない。そうなってくると、生徒にとっては二重苦三重苦にもなってくるので、ある程度、日常的に身につけられるといいですね。一方で、パソコン以外のツールを使ったほうがより効果的に表現したり伝えたりできることもありますから、その取捨選択も含め、考えて使い分けられるようにしていくことができると、なおよいのではないかと思っています」(長谷川先生)

(取材を終えて)
東京都市大学付属中学校の情報の授業は、単にパソコン操作やプログラミングを習得するものではなく、探究学習そのものだということが取材を通して理解できた。自分が身につけた知識をフル活用し、新たな価値を作り出して情報発信することを重視。そのためのツールとしてコンピューターを活用するという構図となっている。自らが課題を設定し、解決に向けて情報を収集・整理・分析する力は、社会に出てから必ず求められるものであり、そんな力を中高のうちから高めていけることは、とても素晴らしいことだと強く感じた。

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