私立中学

共学校

ぶんかがくえんだいがくすぎなみ

文化学園大学杉並中学校

この学校をブックマークする

この学校の資料請求をする

デジタルパンフレット

スクール特集(文化学園大学杉並中学校の特色のある教育 #13)

95人の社会人が高校生のために集結!対話から始まる「キャリア探究」

文化学園大学杉並中学校・高等学校では、2023年度から新たなキャリア探究プログラムがスタート。そのオープニングイベントを取材した。

2015年に日本で初めて「ダブルディプロマコース」(カナダと日本の卒業資格を取得できるコース)を導入し、世界基準の英語教育を行っている文化学園大学杉並中学・高等学校。近年は、教科の枠にとらわれない横断型のSTEAM教育やPBL(Project Based Learning)などにも力を入れ、時代やニーズの変化を見据えて1歩先を行く教育改革を進めている。2023年度からは、高校1年生で新たなキャリア探究プログラムがスタート。そのオープニングイベントを取材し、次世代教育開発部長の染谷昌亮先生に話を聞いた。

2023年度から新たな「キャリア探究」プログラム始動

同校が今年度からスタートさせた「キャリア探究」プログラムのベースにあるのは、建学の精神「感動の教育」である。「感動の教育」では、生徒が主役となり、感情の揺らぎをきっかけに思考の成熟を経験し、生徒たちは自分らしさを自覚していく。AI時代といわれる今、感動こそがロボットや人工知能には成し遂げられない人間らしさの象徴であり、そこに大きな価値があると、染谷先生は語る。

「これまでもキャリア教育は行ってきましたが、従来のキャリア教育は、大学調べや仕事調べなど、フレームの中に何かを当てはめる感覚で学ばざるを得ない部分がありました。新たなキャリア探究プログラムは、保護者のニーズや生徒たちのモチベーションなども考慮しています。3年前から教科書の枠にとらわれない探究的な学びを導入したからこそ実現できた、探究の色を濃く出したプログラムです」(染谷先生)

オープニングイベントには高校1年生333人と、在校生の保護者、卒業生の保護者、卒業生、教員の知人など、95人の社会人が参加。社会人1人に対して3~4人の高校生が1グループとなり、20分間対話をするセッションを3回行う。社会人の仕事内容については、事前のアンケートで把握。生徒たちの事前アンケートを参考に業種のマッチングを行い、3回転の組み合わせを決めておく。生徒たちの視野を広げるために、3回のうち1回は興味を持っていない業種の話を聞く機会を設けたという。

「堅苦しい話を聞く場ではなく、様々な職業の社会人と心のこもった対話をするイベントです。心を通わすために、社会人1人に対して生徒3~4人という少人数制にこだわりました。その場で流れる情報を生徒自身が自分ごととしてとらえるためには、少人数制が適しています。ICTツールを使えば、大人が立てた問いに対して多人数の生徒たちが答えを提出することはできますが、1対100人では社会人がその場で全員にフィードバックすることができません。1対3~4人なら、話したことに対して『それ面白そうですね』とか『なぜそんなことを始めたんですか?』など、そのときの感情や思考に基づく言葉がその場で生まれ、それに対して社会人もその場で答えることができるのです」(染谷先生)

▶︎次世代教育開発部長 染谷昌亮先生

社会とのつながりを活かした学校づくり

「キャリア探究」を9月からスタートさせた背景には、コンピテンシー(資質・能力)ベースのプログラムを経験してから、コンテンツ(知識・技能)重視でキャリアについて探究するプログラムにつなげたいという思いがあったと、染谷先生は語る。

「キャリア探究に必要な協働力や思考力、表現力についてのエッセンスを伝えることなく、コンテンツベースの学びを始めると、枠に当てはめようとするなど、探究的な学びにつながらない可能性があります。まずはコンテンツに縛られない学びをする必要があると考え、1学期にはEQ(心の知能指数)についてのワークショップを行い、移動教室で初対面の人との対話やペーパータワー、フリーズフレームに挑戦するなど、人間性に関わる領域に関するプログラムを行いました。それらを通して、プロジェクトに協働して取り組む上で必要なマインドセットやスキル、ゴールイメージを共有することの大切さなどを学んでから、キャリア探究をスタートさせたかったのです」(染谷先生)

これから1年間、1ヶ月に1回程度のペースでプログラムを進め、高2の1学期にクロージング企画を用意しているという。

「1年間かけてじっくりと、適性ややりがい、給与などのテーマに触れながらキャリアについて考えます。日本ではお金の話は避ける風潮がありますが、キャリアについて考えるには給与は重要な要素です。この夏にシンガポールの事例を見に行きましたが、お金に関する教育が進んでいると感じました。国立大学の学生とも話したのですが、資産運用や給与をいかに稼ぐかなど、堂々と議論できています。ですから本校でも、キャリアについて考える“ものさし”の1つとして、給与についても探究します。高2の1学期に行うクロージングは、生徒がどのように生きていきたいか社会人に向けて宣言するという、オープニングとは逆の企画です。職業レベルでも業界レベルでも『人の笑顔を引き出していきたい』といった抽象的なレベルでもよいので『なりたい自分』をアウトプットして社会人に聞いてもらいます」(染谷先生)

社会人との関わりからキャリアについて探究する機会は、中学校でも用意されている。中2では、社会課題探究ワークショップや、仕事を通じた自己実現・課題解決の過程を探究するワークショップを実施。中3では、チームを組んで外部と連携した社会課題探究を行う。

「コンテンツベースで考えると、教員がネットや書籍などでどんなに勉強しても、実際に社会で活躍している社会人の方たちにはかないません。建学の精神『感動の教育』に基づき、生徒が主役になれて、感情の揺らぎを体験でき、それを元に思考が成熟する本校らしいプロジェクトを実現させるためには、社会に対して開かれた学校であることが必要です。中学受験でも、本校がこのような活動をしていることを知った上で選んでくださるご家庭が多くなりました。今回のイベントに95人もの社会人に参加していただけたのも、皆さんのご理解や応援のおかげです。今後も本校は、保護者の皆さんや外部の方たちのご支援をいただきながら、学校づくりをしていきたいと考えています」(染谷先生)

オープニングイベントに参加した社会人3人にインタビュー

今回集まった社会人の業種や職種は、医療・福祉、サービス業、教育、マスコミ・広告、金融、コンサルティング、スポーツ選手、研究・開発、流通・小売、公務員、ITなど、多岐にわたっている。その中から3人の社会人に、高校生との対話の内容などについて聞いた。

岡崎千尋さん(卒業生の保護者)
高麗奈津子さん(卒業生の保護者)
佐谷恭さん(外部)

――お仕事について教えてください。

岡崎さん 大学を卒業後は、中学生の頃からの夢だった国際線のCAとして14年間乗務しました。産休・育休を経て、子育てに専念したいと考えて退職し、しばらく専業主婦も経験しています。子どもが中学生になったのを機に、CA時代の先輩からの紹介で特許事務所の事務職という仕事と出会い、正社員として働いています。

高麗さん 私は保育士として、28年間同じ職場で働いています。主任保育士という管理職でもあるので、保育士という仕事についてだけでなく、保育士を指導し、サポートする立場からの話もしました。

佐谷さん 私は様々な仕事をしているので「本業は何ですか?」と聞かれたら「本業はないです」と答えています(笑)。料理も作るし、講演もするし、人にアドバイスもしています。肩書きを3つだけ挙げるなら、パクチー好きのためのコミュニティ「日本パクチー狂会」の会長、パクチーの種を無担保融資する「パクチー銀行」の頭取、パクチー料理専門店「パクチーハウス」の創業者です。まだ日本でパクチーがあまり知られていなかった2007年に「パクチーハウス」をオープンし、パクチーブームを作りました。世界を旅して、旅で得た感覚で様々なビジネスをしています。

▶︎岡崎千尋さん(卒業生の保護者)

――このイベントを知って、どのような思いで参加を決めましたか?

岡崎さん 先生方の熱意が伝わり、卒業生の保護者として懐かしさもあり、私もぜひお役に立ちたいと思いました。私の場合は、英語を活かした2つの職種や出産・育児も経験しているので、いろいろな場面を切り取って話すことができると考えて参加しました。

高麗さん 保育士のイメージは、人手不足や男性が少ないといったよくない部分もあるので、そうではないことを伝えたいと思いました。平日にお休みすることになるので園長にも相談したら、保育士を目指す人を増やすことにもつながるからと、研修扱いにしてもらえました。卒業生の親としては、学校の役に立てることが嬉しいです。

佐谷さん とてもよい企画だと感じましたし、社会人が100人ぐらい集まったらよいイベントになると思って参加しましたが、何人参加するかは当日まで知りませんでした。普通は平日に100人近くも集まらないので、本当にすごいことだと思いますし、自分がその1人になれたことが嬉しいです。

▶︎高麗奈津子さん(卒業生の保護者)

――高校生にはどのようなことを話しましたか?

岡崎さん 距離が縮まるように下の名前と今はまっていることを聞いてから、話し始めました。特許について興味を持った子もいれば、CA時代について「ハイジャックはありましたか?」などと質問する子もいたりして(笑)、視点が面白かったです。グローバル化を意識している子からは「英語を大事にした方がいいですか?」という質問もありました。英語に限らず、自分からコミュニケーションを取りにいくマインドが大切だと思います。特許侵害などの争いがある一方で、幅広い企業や研究機関が利用出来る環境を作るために特許を取得するケースもあることなども伝えました。

高麗さん まずは、幼稚園や保育園の思い出について聞きました。それぞれの楽しかった話が聞けたので、そういった楽しい記憶が残っているということは、「心が動いた」からだと説明しました。私自身が高校時代に、やりたかったことを親に言えなかった経験があります。ですから、興味を持ったり、いいなと思ったことがあれば「やってみたい」と口に出してみたり、実際にやってみることが大事だと伝えました。高校生にとって、保育士はお休みが取れないイメージがあるようです。休暇制度があることや、平日でも交代で休めることなども話しました。

佐谷さん マイナーだったパクチーという食材を、どうやって広めたかを話しました。とにかく、お客様の頭にパクチーが残るように、メニューや値段に使ったのが89(パク)という数字です。店に来てから帰るまでに頭の中を89でいっぱいにすると、どこかで89という数字を見つけたら写真を送ってくれるようになったりして、楽しかったからまた行こうと思ってもらえるようになりました。南アフリカの89キロマラソンに参加したこともありますが、それは南アフリカに行きたかったからです(笑)。やりたいことや行きたい場所を自分のパッションに結びつけて、どうやってそこに楽しく人を巻き込むか考えて、キャリアを作っていくという話などをしました。

▶︎佐谷恭さん(外部)

――高校生の反応について教えてください。

岡崎さん 3回目のセッションで、「3人とも転職している人だったことが印象に残っています」と言った子がいて、仕事が変わるのも普通になってきているのだなと感じました。もちろん、1つの職業を突き進むのもよいでしょう。いろいろな関わり方があり、多様な職業選択の機会が複数回ある社会になってきているのだと思います。

高麗さん 保育士は大変そうというイメージがあったようで「疲れないですか?」という質問もありました。やることがたくさんあるように見えますが、1人でやっているわけではなくチームで仕事をしています。絵やピアノが上手じゃないと保育士になれないなど、ハードルが高いと思われていることも感じました。保育士それぞれに得手不得手があるので、苦手なことは得意な人にやってもらえばよいのです。

佐谷さん 私の仕事は1日のうちに何度も自分で決断しなければならないのですが、選択や決断をするときの、勇気や後悔について質問されました。私の場合は、1度選んだら後悔はしません。AとBがあってAを選んだなら「Aの先で何ができるか」だけを考えるようにしています。1年に1回しか決断しないと勇気がいるので、空気を吸うように毎日小さな決断をしていけば、その積み重ねが経験となっていきます。大きなビジョンを描いてどうすればいいか考えるためには、経験を広げる必要があるのです。

――オープニングイベントを終えた感想を教えてください。

岡崎さん 特許や商標登録、意匠、実用新案などが企業では重要であり、各企業に知的財産部があることなど、高校生にとっては馴染みのない話だったと思います。大学生になってから学ぶようなことでしたが、知的財産の重みや弁理士という職業などに興味を持ち、男女関係なく目をキラキラさせて聞いてくれました。

高麗さん 保育士が接しているのはもっと小さい子どもたちですが、今回のプログラムを通して、私も子どもたちの気持ちを動かす仕事をしているんだなと再確認しました。先生たちの熱意があるからこそ高校生の心が動くのと同じように、私自身の心が動かないと子どもたちも動かないでしょう。これまでも大切なことだと思っていましたが、今日改めてそう感じました。

佐谷さん 世の中、子どもも大人もみんな悩んでいます。東京に初めてコワーキングスペースを作ったこともあり、私は日頃からキャリアや人生などについての相談を受けることが多いです。タイミングとしては、中学生や高校生のうちに話すのが1番いいと思います。私の息子も高校生ですが、自分の親には聞いてこないので、他人の親から聞けるのはよい機会です。私自身も、このイベントへの参加が決まったときから楽しみにしていました。

生徒2人にインタビュー

Kさん 高1 (進学コース)
Nさん 高1 (特進コース)

――3回のセッションで、どのような職業の話を聞きましたか?

Kさん 古民家を運営して宿泊やテレビの撮影などに貸し出す仕事、元杉並区議会議員、小中学校をまわって命の教育について話す活動などについて聞きました。

Nさん 特別支援学校の教員、美容関係の開発、バドミントンのアジアチャンピオンでオリンピックにも2回出場経験のある方にお話を聞きました。

▶︎Kさん 高1 (進学コース)

――印象に残っている話を教えてください。

Kさん 元区議会議員の方は役者をやった経験もあるそうで、将来の夢は1つじゃなくていい、いろんな道を通ってもいいんだなと思いました。

Nさん 僕はサッカー部に入っているので、スポーツの話が印象に残っています。バドミントン選手だけでなく、教員の方もソフトテニス部で高校3冠を取ったことがあると聞いて、小さな目標を1つ1つ達成して結果を残すという、プロフェッショナルな考えを吸収できました。

――社会人との距離感はどうでしたか?

Kさん 自分から質問するときも「どう思いますか?」などと聞かれたときも、大人数だと緊張して発言しにくいですが、今回は少人数だったのでよかったです。聞き逃したことや、自分の聞きたいことを正直に聞けました。距離が近いからこそ、その人の仕事に対する熱量がまっすぐ伝わってきます。

Nさん 大人数だと、質問するときも全体にメリットのある質問を選んでしまいます。今回は少人数だったので、モチベーションを保つのが難しいとき、壁にぶつかったときどうするかなど、自分が知りたいことが聞けたのでよかったです。

――将来についてどのような話が参考になりましたか?

Kさん 学校をまわって命の話をしている方は、ラジオやテレビのナレーションの台本を書く仕事もしているそうです。ラジオやテレビが好きだったからその仕事に就いたと聞いて、日常にあるものが将来の職業につながることもあるんだなと思いました。私はダンスが好きで、小6からずっと続けています。ダンスの仕事ができたらいいなと思っているので、好きなことが仕事につながったという話は参考になりました。

Nさん 美容関係の開発をしている方は、学生時代は野球をやっていた男性で、全く知らない美容の世界に入ったそうです。理系なので大学の研究内容とは少し関連していますが、化粧品の開発という未知の世界に飛び込んで行くこともあるのだと驚きました。僕は、サッカーの指導者になりたいと思っているので、教員の方の話も参考になりました。

▶︎Nさん 高1 (特進コース)

――もっと知りたいと思ったことなどはありますか?

Kさん ダンス関連や親の職業、先生たちの仕事など、自分にとって身近なことには目がいくので、選択肢に入りやすいと思います。今回のプログラムで、古民家の運営という仕事があることや、小中学校に授業では学べない命のことを教えに行く方がいると初めて知りました。自分にとっては身近ではない仕事を知る機会になったので、今後も、広く深く学べたらいいなと思っています。もっと大きな幅でいろいろな職業について知ることができれば、自分に向いているものが見つかるかもしれないと思いました。

Nさん 今回、こんな仕事もあるんだ、こんなやり方もあるんだと、今まで知らなかったことを知りました。今後もプログラムを通して、これなら僕もできるかなと思えるような、新しい発見が得られたら嬉しいです。

<取材を終えて>
集まった社会人は、ノートパソコンやタブレットを使ったり、手書きの資料を用意したり、制作物を持参するなどそれぞれのやり方で高校生に話をしていた。これほど多様な業種・職種の社会人が集まることは、本当に貴重な機会である。どのグループでも心を通わせた「対話」が生まれていたが、聴く側の高校生だけでなく、話す側の社会人も生き生きとしていることが印象的だった。

  • この学校をもっと詳しく知る
  • スクール特集トップに戻る

この学校の