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文化学園大学杉並中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(文化学園大学杉並中学校の特色のある教育 #9)

生徒が自ら新しい価値を創り出す! 「STEAMプロジェクト」

英語教育に並び、近年はSTEAM教育にも力を注いでいる文化学園大学杉並中学・高等学校。昨年度からは「STEAMプロジェクト」もスタートした。その取り組みをプロジェクトリーダーの染谷昌亮先生に伺った。


探究して得た価値を具体化して周囲に発信

同校は、2年前からSTEAM(Science/科学、Technology/技術、Engineering/工学、Arts/芸術・教養、Mathematics/数学)教育を学校方針に掲げ、教科の枠にとらわれない横断型の学習に取り組んでいる。昨年は課外活動としてSTEAMプロジェクトも始動した。
初年度は高1と中1に募集をかけ、高1が約40人、中1は約30人が参加。同校の1学年の生徒数は中学が約100人、高校が約300人なので、生徒たちの(特に中学生の)関心の高さが伺える。現在は、中1、2、高1、2の4学年合わせて約100名で活動を行っている。

 染谷先生はSTEAMプロジェクトを立ち上げるにあたり「自分のやりたいことをやり、学びたいことを学びながら社会をより良くできる人材を育成したい」という思いがあったと話す。「日本の教育は生徒が学びたいことを、大人が規定してしまいがちです。そうではなく、生徒が自発的に学び、活動できる環境を提供したいと思いました。本当にやってみたいこと、学びたいことを正しく実行する生徒は、必然的に社会貢献に目が向くと私は考えています。生徒が主役となって、新しい仕組みやモノ、価値を創ることを目指していきます」
そうしてできたSTEAMプロジェクトのコンセプトが「まだ世の中にない“価値あるもの”を創り出す」だ。
「これを実現するには“探究”と“創造”双方の力が必要です。ここ数年“探究的な活動”は、多くの教育現場で実践されるようになりました。しかし、それを具体化する“創造的な活動”はまだ発展途上の段階です。『こんなシステムがあれば、世の中がよくなるのではないか』と提案はできるが、システムを作るまでには至っていない。私たちはもう1歩前へ進み、よいと思うものを実際に作り、具体化して周囲へ発信するところまで取り組んでいきたいと考えています」

▶︎染谷昌亮先生

社会とつながりをもち、生徒主導の活動を展開

STEAMプロジェクトの三大特色は、1.教科の枠にとらわれない、2.生徒主導、3.社会とつながることだ。3においては企業やNPO、大学の研究室など既に10カ所と提携をしているという。また活動は、メイカー部門、社会課題探究部門、キャリア探究部門、広報・活動記録部門の4つの部門に分かれて行われている。

メイカー部門はロボット、ゲーム、ホームページなど様々なモノづくりを実践。レーザーカッターや3Dプリンターなどの設備を整え、外部コンテストにも挑戦している。昨年はWRO(World Robot Olympiad)*1に出場し、プロジェクトが発足してすぐにもかかわらず、社会課題を解決する仕組みやロボットを提案する部門で優勝。今年は、実際に自律型ロボットを製作して出場する予定だ。
また、中学生を対象にSTEAM Play 倶楽部を設立。生徒たちはプログラミングやロボティクスをテーマに探究やモノづくりに取り組み、昨年は学内コンテストのSTEAMアワードで学習の成果を発表した。「プログラミングを0から学び、半年間で四足歩行ロボットを製作した1年生もいました。しかも、ロボットのデザインも自分で考え、レーザーカッターを使用して作っていましたね。そのスキルの高さに私たちも驚かされました」と染谷先生は話す。今後は中学生チームでも、外部コンテストの出場を目指すそうだ。

社会課題探究部門は、SDGsと関連させたプロジェクトを展開。具体的には、1.シェアボトルを利用したサーバー型自動販売機設置の提案、2.カイロ回収とGo Green Cube*2製造、およびその波及活動、3.これからの農業に関する探究(有機農業と大規模農業、2つの視点から)、4.ESGファイナンス思考に関する探究、5.古民家をリノベーションした体験型施設の立案など、現在8つのテーマで活動をしている。
「1はペットボトルいらずの自販機の製作を、飲料メーカーなどと情報交換して、実現に向けて動いています。また、このアイデアにより、サステナブル・ブランド国際会議にStudent Ambassadorとして招待を受けました。2では、Go Green Group株式会社や東京海洋大学の研究室と協働して、製品作りのお手伝をしたり、水質改善に関するワークショップを開いたりしています。この秋には、企業やスーパー、小学校などを訪問して、一緒にカイロの回収を行う予定です。3は持続可能な農業、環境を保全する農業の仕組みを考え、提携している長野県のNPO法人から有機農法を学び、実際に学校の畑で実証しています。5では、古民家のリノベーションに向けて、クラウドファンディングにも携わっています」

キャリア探究部門は、社会人へのインタビューや企業訪問、社会人を招いてワークショップを開くなどの活動を実施。広報・活動記録部門は、STEAMプロジェクトの取り組みを、より多くの人に知ってもらうために、動画を作成してYouTubeにアップしたり、Twitter<@BUNSUGI_STEAM>の運営などを行っている。

*1 WRO(World Robot Olympiad)…小中高生を対象に、ロボットを製作し、プログラムにより自動制御する技術を競う国際的なロボットコンテスト

*2 Go Green Cube…使用済みの使い捨てカイロで作るリサイクル品。汚れた水質を改善する作用があり、資源の有効活用、環境保全につながるとして注目を集めている。

「STEAMプロジェクト」メンバーにインタビュー

初年度からSTEAMプロジェクトで活動している生徒たちにも話を聞いた。

メイカー部門 マネージャー Sくん(高2)

プロジェクトが立ち上がる時、染谷先生に「未来のロボットについて話し合ったり、実際に作ったりできるよ」と声をかけられ、前からモノづくりに興味をもっていたので、参加しました。学校にレーザーカッターなどの設備が充実しているのも魅力でした。今の目標は、身に付けた技術を使って、世界の課題を解決したり、社会に役立つロボットを作って、WROで優勝をすることです。将来は開発系の仕事に就きたいと思っています。

社会課題探究部門 Hさん(高2)

小学校の時から農業に関心があり、有機農業とSDGsの関わりを知って、さらに探究したいと思いました。現在は、米ぬかや納豆、ヨーグルト、米麹で “ぼかし肥料”を作り、学校の畑でその肥料を使って枝豆などの野菜作りをしています。収穫したものは、文化祭などで出したいですね。持続可能×農業を組み合わせることで、何かポジティブなものが生まれるのではないかと考えています。それを見つけ、発信していきたいです。

社会課題探究部門 マネージャー Oさん(高2)

環境問題と教育を組み合わせたスウェーデンのムッレ教育や自然教育などにより、子供たちが自然と人間の関わり方を学ぶことで、環境問題の解決につながると考えています。また、この教育法を通し、これからの社会で必要とされる自己認知能力を得ることができると考えています。私は、この教育について探究し、将来は日本の地形、社会性にあった日本版カリキュラムを制作し教育機関を作りたいです。

社会課題探究部門 Aさん(高2)

私はあまり環境問題に詳しくなかったけれど、関心はもっていました。プロジェクトに参加して、自分の身の周りには、様々な問題が起きていることを知り、同時に自分たちで解決できることもわかりました。活動をする中で、今度は自分が環境問題を伝える側になりたいと思うようになりました。1人でも多くの人が現状を知ることで、SDGsの解決につながるだろうし、自分たちで解決できることがわかれば、世界が変わって見えるはずです。だから、発信することが大事なのだと思います。

基礎学力を定着した上で、教科にとらわれない学びを実践

現在、STEAMプロジェクトでは、高校生がリーダーとなって活動が行われている。中学生の主な活動の場は、STEAM Play 倶楽部だという。そのことについて染谷先生は「もちろん高校生が行っている企業連携の活動に、中学生が参加するケースもあります。海洋プラスチックについて学んで、一緒に発信している生徒もいますね。ただ、こうした活動は焦らずに、少しずつ段階を経て行ってもよいかなと思っています。
本校は、基礎学力を徹底するために、朝テストを行い、学内塾を入れて、19時まで学習ができる環境を整えています。中学生はまず、学習習慣や基礎学力を定着させることが大切。確かな教科学習力を身に付けることで、初めて枠にとらわれない学びを実践することができるのです」

最後にSTEAMプロジェクトの展望を次のように語った。
「今後は“社会とつながる”場所を外に求めるだけでなく、学校内に作っていきたいと考えています。また、他校と連携した活動もしてみたいですね。また、これからの大学入試は、今以上に探究型学習が評価されるシステムになっていくと言われています。そういう面からも、本校のSTEAM教育は、成果につながることが期待でき、さらに精度を高めていきたいと思っています」

<取材を終えて>
STEAM教育と聞くと、何となく理数系のイメージを思い浮かべるが、同校のSTEAMプロジェクトは幅が広く、中でも「A」は、リベラルアーツ(教養)の要素が強いのが特徴だ。また、染谷先生の「生徒が自らやりたいことを正しくやれば、社会貢献に目が向く」という言葉が印象的で、4人の生徒の話を聞き、実際にその通りであると納得した。

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