私立中学

女子校

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じょしびじゅつだいがくふぞく

女子美術大学付属中学校 

スクール特集(女子美術大学付属中学校の特色のある教育 #3)

「美術が好き」だけで終わらせない!感性を育み知性を伸ばす「女子美」の魅力

「美術」を柱に、感性を育み知性を伸ばす女子美術大学付属中学校。キャリア教育も加味した、同校ならではの道徳教育を取材した。

「美術」以外の教科もしっかり学び、「智の美」(知性)、「芸(わざ)の美」(想像力・表現力)、「心の美」(情操性)を育む女子美術大学付属中学校。同校のベースとなっている「美術」を柱とした教育や同校ならではの道徳教育について、校長の石川康子先生と中1学年主任の高城史子先生に話を聞き、「道徳」の授業を取材。授業後には、中1の生徒4人にインタビューをして、クラスの雰囲気なども語ってもらった。

「美術」は勝ち負けがない世界

同校に入学する生徒の共通点は、「美術が好き」という点である。「絵を描くのが好き」「ものをつくるのが好き」であることが、入学するための条件となっている。下手でもかまわないが、「好き」であることが大切。そしてこの共通点が、他者を尊重する気持ちにつながっていると石川校長先生は語る。

「新入生が140人いれば、いろいろな生徒がいます。元気がいい子、絵ばかり描いている子、本を読むのが好きな子、リーダーシップを発揮できる子など性格は様々で、偏差値も幅広いです。しかし、美術が好きであることは共通しています。美術というのは、勝ち負けがありません。コンクールはありますが、選考基準はテーマや用途に合っているかです。生徒たちがお互いの絵を評価するときも、Aさんが100点を付けた絵に、Bさんも100点をつけるとは限りません。誰もが100点をつける絵はありませんし、誰もが認めるすごい子もいません。生徒たちが気になることは、その絵をどうやって描いたかということなのです」(石川校長先生)

▶︎校長 石川康子先生

「そのままでいい」という安心感の中で学べる環境

石川先生が同校の校長に就任したのは、2017年4月。その年に初めて「道徳」の授業で中1の生徒たちに話をしたときに、生徒たちの言葉に驚いたという。

「1学期に何を学びましたかと質問したら、『絵は一人ひとり描き方が違うってことがわかりました。だから、絵は人それぞれ違っていていいんです』と、生徒から言われて驚きました。彼女たちは、他者を認めることが自然にできているのです。本校には『普通でなければいけない』という考えがありませんし、生徒同士にもありません。小学生のときには『変わっている』と言われていた生徒でも、本校では『そのままでいい』という安心感の中で学び、成長することができます。その雰囲気を作り上げているのは、生徒たち自身なのです」(石川校長先生)

グローバル時代といわれる今、海外で活躍するためには英語力も必要だが、義務教育の中でグローバル教育としてできることは限られている。同校でも海外研修などは行っているが、英語以上に重要なのが多様性を受け入れるベースを作ることだと、石川校長先生は考えている。

「グローバル時代を生き抜くために必要なことは、多様性を認めることだと思います。本校では、『個性的ね』『独創的ね』が誉め言葉です。一般に教員は『みんな一緒に仲良くしましょう』と言ってしまいがちですが、『いつも一緒でなくていいんだよ。1人でいたいときもあるんだから』と、本校の生徒に教えられました。お弁当を1人で食べるときがあってもいいのです。1人になりたいときもあります。小さなもめごとが起きたり、ケンカをすることもあるでしょう。いじめに関しては厳しく指導していますが、話が合わない子がいてもいいと思っています。話が合わなくても、ちがいを理解し、お互いのいいところを認め合えればいいのです」(石川校長先生)

「美術」を通して自分と向き合う6年間

同校の受験者数は近年増加しており、学校説明会への参加者も年々増えているという。

「AI時代になり、記憶力がよければ活躍できる社会ではなくなりました。職場では、言われたことだけをやっているような人は活躍できません。子どもの幸せは、自分たちの時代とは違ってきていると、保護者の皆さんも気づいたのだと思います。今求められているのは、企画力のある人、変わっていて面白い人です。それは、美術の発想と重なります。本校の卒業生には、発想力を評価されて大手企業の企画担当として活躍する人も多いです。しかし、発想力があってもそれだけでは生きていけません。情操性を育む教育だけでなく、アイデアを実現させる技術力を培うことが大切なのです」(石川校長先生)

同校では、義務教育としての「美術」の授業(1時間)にプラス3時間、合わせて週4時間「美術」の授業を行っている。「美術」以外の教科は、学習指導要領に基づいて授業を実施。高校も普通科であり、芸術学科ではない。

「基礎教育は重要です。知性と感性は補完し合っています。絵だけ描いていればいいのではなく、他の教科も学ぶことで全部が補完し合うのです。感性を伸ばしたければ知性も一緒に育む環境が必要であり、近年注目されているリベラルアーツ教育にもつながります。
今頃になって、世界のビジネスエリートは美術を学んでいることがメディアなどでも取り上げられるようになりましたが、私たちは昔からそれをやってきたのです」(石川校長先生)

女子校での学校生活は、多様性という観点からは相反するようにも思える。中学・高校、そして大学まで女子だけで過ごしていて、男性と協働することができるのかと心配になる保護者もいるかもしれない。しかし多くの卒業生が、アートの世界だけでなく一般企業も含めて、様々な分野で活躍していると、石川校長先生は語る。

「女子美には、『心を込めてものを観る』という言葉があります。絵を描くときには、ものをじっくりと観ます。ただ見るだけでなく、絵を描くために観ることで、見えてくる部分があるのです。そして、ものを観ることを通して自分と向き合い、自分自身についても考えます。本校の生徒たちはそういった時間を大事にしているので、中高の6年間、そして大学生の間に、自己が確立されます。ですから、社会に出て男性と一緒に働くことになっても、伸び伸びと力を発揮できるのです」(石川校長先生)

目標達成シートを女子美流にアレンジした「マンダラアート」

同校では、早くから総合学習として「道徳」の授業に力を入れ、何年もかけてつくり上げた土台がある。2019年度から中学校でも「道徳」が教科化されたのを機に、同校ならではの道徳教育にキャリア教育的な要素を加味したメソッド「マンダラアート」を実施。メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手が実践した目標達成シート、「マンダラチャート」を女子美流にアレンジしたものだと、高城先生は説明する。

「大谷選手の目標達成シートを見て、とても感動しました。現在の姿はすでに高校1年生のときにあり、具体的に何について努力するか言葉で表すことが大切だということを教えてくれています。そこで、彼が使ったシートをベースに、本校が教育理念として掲げている3つの美(智の美、芸の美、心の美)を絡めて作ったのが『マンダラアート』です。中1には少し難しいので、まずは各担任が中1になったつもりでシートを作り、生徒たちに見せました」(高城先生)

▶︎中1学年主任 高城史子先生

中1「道徳」の授業を取材

「マンダラアート」は、9マス(3×3)の中心に将来なりたい職業を書き、放射状の残りの8マスにそれを実現させるために必要なことを書き出す。その8つの要素に関しても同様に、その要素を身につけるために必要な具体策を書き出していくというものだ。その要素を3つの美と絡めて、「智の美」は青、「芸の美」は緑、「心の美」はピンクで表している。

取材した授業は、生徒たちが作成した「マンダラアート」についてiPadを使って1分間スピーチを行うというもの。iPadでは、学習支援クラウドサービス「Classi(クラッシー)」を使用。iPadのスライドやスピーチにも一人ひとりの個性が出ていて、元気な子もいれば、おとなしい子もいたが、発表者以外の生徒たちは、発表者の雰囲気に合わせた聞き方でメリハリをつけている。授業の最後には、生徒たちの感想をワードクラウドで可視化。多かった感想がより大きな文字で表示されるなど、瞬時に全員の感想をスクリーンで確認することができた。

情報共有で学校愛を育む保護者会

中学に入学して半年の1年生が、将来の具体的な目標を書き出すのは難しいかもしれない。しかし、「美術」が好きで入学した生徒たちは、好きを好きなだけで終わらせないために入ったのだから、目標は早めに決めたほうがいいと、高城先生は語る。

「生徒たちには1学期の終わりにシートの説明をして、夏休み中にじっくり考えてもらいました。中には、細かい部分が埋まっていない生徒もいますが、今の時点ではそれでいいと思っています。いろいろ経験する中で、目標が変わっていく生徒もいるでしょう。それでも、今の時点で取り組むことに大きな意味があります。保護者会でもマンダラアートについて説明して、保護者の方たちにも理解していただきました」(高城先生)

同校では、保護者会での意見交換や情報共有を大切にしている。保護者会の開催頻度も、一般的な学校より多いという。

「1学期には3回、2学期には2回ぐらい行います。本校に入学した生徒たちは、小学4年生や5年生で美術を選ぶと決めたので、保護者の方たちも様々な不安を抱えていると思います。ですから、保護者同士が出会う場も大切です。保護者会では、保護者の方全員のお顔が見えるように、担任も含め、座席をひとつの輪に並べます。そして、生徒達の様子を共有できるように、各家庭からひと言ずつ言ってもらうようにしています。そこから不安が解消できたり、保護者同士での相談につながっていきました。4月の最初の保護者会から女子美愛に包まれ、子どもたちをみんなで育てていきましょうという雰囲気がすでにできあがっているのが、とても嬉しいことです」(高城先生)

▶︎TIMSマンダラート/夢の実現のために、今、具体的に何をすべきかが見えてきます。

▶︎高城先生手描きのTIMS学年だより

▶︎保護者からの女子美入学の喜びにあふれた川柳特集号

ICT教育にも経験に基づく意見や伝える力が重要

近年は、運動会の徒競走は差がでないようにタイム制にするなど、1人の生徒が目立った活躍をしない方法を取り入れる学校もある。しかし、目立つ機会を減らすのではなく、それぞれの生徒が目立てる機会をたくさん作ることが大切だと、高城先生は語る。

「徒競走や書初めなど、ヒーローになるなら、今、その時!という生徒もいます。足の速い子は断トツに速く、書道が得意な子は何度でも選ばれて、それを見て悔しいと思う子や憧れる子がいてもいいと思うのです。断トツに輝ける機会をたくさん作ることが、学校の役割だと考えます。自分に自信を持てることが、周囲への尊敬につながるのです。ですから本校では、できるだけ多くの子が輝けるように多様な機会をたくさん作っています」(高城先生)

同校の生徒たちは、入学早々から「人は違っていて当たり前」と自然にわかっているという。

「小学校時代に変わり者扱いされている経験がある子ほど、他者の気持ちがわかるのかもしれません。本校の文化祭や学校見学に来て、『この学校が好きかも』と思えたら、楽しく自信を持って才能を伸ばせると思います。2018年から『女子美 自己表現入試』を導入しました。暗記した知識ではなく、経験や学習に裏付けられた自分づくりを経て、大事な力を持った子を選ぶ入試です。今年度から中1と高1にiPadを導入しましたが、ICT教育にも自己表現力が必要になります。iPadを使ってグループで調べ学習をしたり、プレゼン用のスライドをデザインするなど、教科ごとに工夫して使っていきます。来年度以降も順次導入していきますが、iPadを使うにあたって大切なことは、自分が経験したことに基づいた自分の意見を持っていること、そしてそれを伝える力があることです。『女子美 自己表現入試』には、そういった力を持った受験生が来てくれると期待しています」(高城先生)

中1の生徒4人にインタビュー

取材した「道徳」の授業を受けていた、中1の生徒4人に話を聞いた。

――この学校のどんなところがいいなと思いますか?

Yさん とにかく、みんなよく笑っています(笑)。 

Kさん みんな個性があって面白いです。自己紹介なのに、好きな男子のタイプを言ったりする子もいます(笑)。

Sさん 誰かが失敗しても笑ったりせずに、教えてくれたり励ましてくれる大切な仲間です。

Fさん どんな人でも認めてもらえるのがいいなと思います。個性がどんなに強くても、みんな笑って許してくれます。

▶︎写真左から、Kさん、Sさん、Fさん、Yさん

――クラスの雰囲気はどうですか?

Yさん うるさいです(笑)。

Sさん 小学校では、本当に好きなことがあっても、否定したりバカにする人がいたので、あまり発表できませんでした。今はそんなこともありません。

Fさん 誰かが調子に乗ると、みんなもノリノリでイケイケになります(笑)。

――「マンダラアート」には、どんな目標を書きましたか?

Kさん 私は、ファッションデザイナーになりたいと書きました。もともと絵を描くことが好きで、お店でキラキラしている洋服を見るといいなと思います。

Sさん 私は3歳からバレエをやっているので、バレエダンサーになりたいと思っています。

Fさん 私は、キャラクターデザインの仕事がしたいです。みんなの絵は個性が爆発していて面白いので、私もオリジナルキャラクターでみんなを笑顔にしたいと思いました。

Yさん 私はメイクアップアーティストになりたいです。まだ下手ですが、小さいころからメイクが大好きです。尊敬するメイクアップアーティストはゲイなのですが、メイクでいろいろな表現をしているのがかっこいいなと思います。ゲイの人は女性よりメイクやファッションのことをわかっていると感じます。小さいころはプリンセスのドレスを着て子どもが買えるメイク用品でメイクをしていましたが、もっと本格的にやってみたいです。

――「マンダラアート」の授業では、どんなことを考えましたか?

Kさん みんなちゃんと夢を持っているので、自分もちゃんと考えなければと思いました。
    
Sさん 一人ひとりが将来のこと考えていて、実際にどうすればなれるか調べたり考えているので見習いたいと思いました。私も「マンダラアート」をきっかけに、どうすればバレエダンサーになれるかについて、調べたり考えました。

Fさん みんな絵がとても上手ですが、それぞれの目標があります。みんなの「マンダラアート」を参考にして、自分にはどのような仕事が向いているか、もっと考えていきたいです。

――「マンダラアート」のことを家族と話し合ったりしますか?

Fさん 家で友達の夢について話したら、「あの子が〇〇になりたいなんて意外だね」と驚いたり、「あの子らしいね」などと言っていました。

Kさん 親同士も仲がよくて、友達がどんな性格なのかも知っています。

――これから学んでみたいこと、頑張りたいことはありますか?

Yさん 私は、ファッションアート部に所属しています。文化祭でランウェイを歩くのですが、みんなの前で歩くのはとても恥ずかしいです。自信を持って堂々と歩けるように、
まずは胸を張ってみようと思っています(笑)。

Fさん 私は表現力を向上させたいと思っています。演劇部で小さい男の子の役をいただけたので、役に合わせて自分の個性も入れながら表現していきたいです。 

Kさん 私は、漫画研究部とファッションアート部を兼部しています。漫画研究部は毎週課題があり、締め切りもあるのでとても忙しいです。課題や締め切りがある中でも、ちゃんと楽しくやっていけるように頑張りたいです。

Sさん 集中力を高めたいと思っています。私は弓道部なので、弓を射るまでの動作に集中力が必要です。先輩から、集中力を高めることは、弓を遠くまで放てるようになるだけでなく、美術にもつながると教えてもらいました。私は落ち着きがないので、まずは勉強で集中できるように頑張っています。

<取材を終えて>
「マンダラアート」の発表は、「私は将来〇〇になりたい!」「だから女子美中学で〇〇に取り組む!」というスライドからスタートしたが、なりたい職業の部分に「言いたくない」と書いている生徒がいたのが印象的だった。なりたい職業以外はしっかりと書いていたので、内に秘めた目標はあるのだろう。一般的には、言いたくなくても授業で取り組むことなら、嘘でも何かを書いてしまいがちである。しかし同校は、「言いたくない」と書いても教員にも生徒にも受け入れてもらえるのだと実感した。中1で将来の目標を考えることは、非常に難しいと思う。しかし、生徒たちは自分なりにしっかりと考え、その証として「マンダラアート」は様々な言葉で彩られていた。

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