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じょしびじゅつだいがくふぞく

女子美術大学付属中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(女子美術大学付属中学校の特色のある教育 #4)

対面授業の再開は美術から!休校中も女子美らしい教育活動を実施

美術教育を通して、創造力や感性、知性を育くむ女子美術大学付属中学校。コロナ禍の休校中は、授業動画を配信し、分散登校が始まると真っ先に美術の授業を再開した。同校の1学期の取り組みを取材した。

女子美術大学付属中学校では、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、授業はもとより、3月に東京都美術館で行う予定だった卒業制作展も取り止めとなった。4~5月の休校期間は、授業動画の配信とオンラインによる課題のやり取りを行い、6月に分散登校が始まると、美術から授業を開始した。コロナ禍の学校の取り組みについて、美術科主任の遠山香苗先生、教務主任の小幡芽里先生、美術科教諭でICTチームメンバーの志澤京香先生に話を聞いた。

卒業制作展が中止。学びの集大成を動画に収める

「新型コロナウィルスの影響を最初に受けたのが、卒業制作展でした」と遠山先生は話す。同校では、毎年、東京都美術館で卒業制作展を開催し、約5,000人もの人が訪れているという。今年は2月29日~3月6日を予定していたが、2月26日に政府から大型イベント等の中止、延期の要請があり、開催が中止に追い込まれた。
「作品を搬入する前日のことで、係の生徒40名と美術の教員が総出で美術室に待機し、5台の大型トラックも学校に到着していました。ですので美術館が閉館となり、卒業制作展ができないと分かった時は、みな呆然としました。高校3年生は半年間かけて制作に取り組み、中には高1の時から、作品のテーマを決めている生徒もいます。卒業制作は、学校で学んだことの集大成です。生徒たちは、試行錯誤しながら自分の表現を見つけ、今までやったことのない領域に挑戦し、作品を作り上げます。その発表の場が失われてしまったことは、本当に残念でした」

それでも学校は展覧会を開催しようと、4月から美術館を探した。同校の卒業生から、国立新美術館の企画展に展示する話も寄せられたが、コロナの影響が長引き、実現に至らなかった。また、学校での開催も生徒たちの安全を最優先し、見送ることになった。
しかし、審査会は例年通りに実施。6月に登校が再開されると学校のエントランスギャラリーに受賞作品を展示した。7月には、図録印刷のために撮影していた画像を用いて全作品を動画で紹介。卒業生にはDVDにして配付し、YouTubeでも配信をしている。

▶︎美術科主任 遠山香苗先生

▶︎学校のエントランスギャラリーに展示された受賞作品

遠山先生は、2019年度の卒業生について「面白いアイデアをもった生徒が多かったですね。また、試作を繰り返し、自ら進んで取材をするなど行動力もありました」と評価する。「コロナで、これまでにない生活が続くと思いますが、学校で培ったクリエイティブな力で乗り越えてほしいですね」とエールを送る。

毎日の時間割に沿って、授業動画を配信

一方、在校生たちは約2か月間、自宅学習を余儀なくされた。先生たちは、新学期の開始と同時に教科書や美術の道具を各生徒の自宅へ配送した。「水彩絵の具から画用紙、デッサンの道具など教員が箱詰めをして送りました。画材だけでも一箱分はありました」と遠山先生は話す。

各教科の学習に関しては、毎日、時間割に合わせて1コマ15分の授業動画を配信した。課題はClassiを使用して、配付と提出のやり取りを行った。「遠隔で授業を始めるにあたり、まずは自宅のWi-Fi環境やICT機器の種類、自宅学習が可能な時間などについてアンケート調査とヒアリングを行いました」とICTチームのメンバーの志澤先生は語る。
「リアルタイムのオンライン授業も検討しましたが、生徒の家庭環境は様々で、平等に学習機会を提供しようという考えから動画を配信することにしました。1コマ15分という動画の時間も、話し合いを重ねて決めました」。5人の教員で構成するICTチームは、すぐに授業動画作成のマニュアルを作り、教員からの質問の対応に当たるなど、率先して学習支援の体制を整えた。

志澤先生は、遠隔授業を実施する上で「自宅にいても、生徒たちが学校生活の感覚を少しでも持ってもらえるようにしたかった」と話す。「毎朝8時20分に担任の先生からメッセージを送りSHRを実施し、それから授業動画を配信しました。また、最初はテスト動画を配信し、課題の送受信を練習するところから徐々に始め、慣れてきたら通常の学校と同じ6時間授業へと移行。課題も生徒たちの様子を見ながら増やし、徐々にステップアップしていきました」

▶︎美術科教諭・ICTチームメンバー 志澤京香先生

自宅にいる生徒のことを考えて授業動画を作成

生徒にとって初めてとなるリモート学習だったが、先生にとっても授業動画を作るのは初の試みだった。「授業動画には既製のものもありますが、本校では、教員が『生徒はどんな学びを望んでいるのか』ということを第一に考え、手作りしました。窮屈で不自由なステイホーム中に、楽しく配信授業に取り組んでもらいたいと、皆愛情をこめて制作しました。」と小幡先生は話す。
「たとえば、美術では各学年の美術室の雰囲気を伝えながら、カメラのアングルも工夫して、描き方のポイントを明確に見せることを考えました。理科の長い実験を編集で短くして、物体の動き方なども映像でわかりやすく伝えるようにしたり。動画作りは、不自由ではありましたが、教員にとってメリットもありました。その1つが、他の先生の授業を見て参考にできることです。同じ教科でも先生によって授業の組み立て方や見せ方が異なり、今回はいろいろな授業を見ることができ、とても勉強になりました」

先生たちは動画を作る際、生徒たちが少しでも学びを楽しめるように、いろいろと工夫を凝らしたようだ。「動画に自作のイラストや効果音を入れてみたり、美術史や地理など様々な教科において、女子美生が大好きな写真図版を大増量。中学1年生のために作られた学校ルール動画では、キャラクターを使って女子美生活を紹介しました。落語調に本文解説をしたり、古典作品と関連づけて映画『君の名は』の解説をしたり。動画には、教員それぞれの個性が発揮され、それが女子美らしいなと感じました。」と小幡先生。
また、「先生同士で良い動画作りについて知恵を出し合ったり、あまりICTに詳しくないベテランの先生がICTチームの若い先生に教わったりすることで、教員間の結束も強まりました」

生徒たちは授業動画について、「通常の授業だと流されてしまうところも、動画は止めて、じっくり見ることができる」「何度も繰り返して見ることができるので、わからないところが理解できた」といった受け止め方をしていたようだ。
また、小幡先生は、「Classi NOTEに出した課題を、生徒たちがプラスアルファにして返してくることも、教員の動画作りのモチベーションにつながった」ことを明かす。「問題を解くだけだったら、3~4行で終わる課題でも、その授業で印象に残ったことや重要点などをノートにまとめてくる生徒がいました。課題を通して、自宅学習の様子が見え、また、ちょっとしたコメントのやり取りでつながっている感じを持つことができました」

▶︎教務主任 小幡芽里先生

休校中の取り組みがポートフォリオの促進へ

5月末に緊急事態宣言が解除され、6月から分散登校が始まった。同校では、クラスを半分に分け、午前2コマ、午後2コマを使い、いずれも美術の授業を実施した。「本校に入学した生徒はみな、美術を学ぶことを楽しみにしています。ですから、授業の再開は美術から始めることにしました」と遠山先生は言う。10室もの美術室をフル稼働し、最初の2週間は6学年が分散して美術の授業を受けた。「通常の半分の人数なので、アトリエも広く使え、教員も2倍、目をかけられる。生徒たちはイキイキとした表情で制作に取り組んでいました」。その間、他の教科は、授業動画を継続して配信した。


「休校中は、授業動画の配信の時に課題を出して、生徒は制作の過程や作品を撮影し、Classi NOTEに写真を掲載して記録していました。教員はその画像を見てコメントを書き、生徒はコメントを手がかりに、手直しをしたりして、作品を制作していきました。このように制作過程を記録し、振り返りをすることは、今後の制作に活かすことができ、通常の授業でも行っていきたいですね」と遠山先生。志澤先生も、「Classi NOTEに記録を残すことは、ポートフォリオにつながります。休校中の課題がきっかけとなって、生徒にポートフォリオ作りの習慣が身に付きました」と話す。

8月末現在、学校は新型コロナウィルスの感染予防をしながら、通常の教育活動を行っている。「休校中は、生徒たちもストレスを感じたり、特に中学1年生や高校からの入学生は、不安だったに違いありません。しかし、いざ分散登校が始まると、美術の授業をきっかけに、会話をしたり、友だちを作ったりしていました。『美術が好き』という共通点があること、仲間と一緒に好きなことに取り組めることの良さを、改めて実感しました。これからも美術教育をベースに、創造力と知性、人間性を備えた女性を育てていきたいと思っています」。
3人の先生からのメッセージである。

【取材の補足と感想】
同校では、1人1台のiPadを使うなど、ICTを利用した様々な学びを推進している。「その経験が、今回のリモート学習でも活かされました」と広報部の中村先生は話す。5月後半からは、Zoomを使用したホームルームも実施し、クラスの交流を図ったそうだ。
また、同校の生徒は、日頃から美術の制作など、好きなことを集中して行っているからか、自宅でも自分のペースを保って、課題などもきちんと行っていたという。
そして、中止となった卒業制作展は、卒業生の有志が集まって実行委員会を組織して開催を目指し、ついに青山で実施が決定したそうだ。コロナ禍でも、「授業を届けたい」という先生の強い思いや、前向き生徒たちの様子を見て、学校のパワーを感じた。

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