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にがわがくいん

仁川学院中学校 

スクール特集(仁川学院中学校の特色のある教育 #3)

ICT導入がもたらす教員の意識改革。見守る姿勢で主体的な学びを育む

2019年度よりタブレットの1人1台制がスタートした仁川学院中学校。ICTを活用した教育を進める中で、教員の意識改革が進み、授業が変化してきた。同校の進化しつつある教育についてレポートする。

阪急甲東園駅から徒歩6分、閑静な住宅街に佇む仁川学院中学校。広い敷地内には、コルベ講堂をはじめとする格式高い宗教建築物やアートが点在する。私立のミッション校ならではの落ち着きと気品を備えた環境の中、建学の精神「和と善」に基づく人間教育が実践されてきた。
2019年には、これからの時代に必要とされる力を育むため、タブレットの1人1台制を導入。ICTを活用した教育について、教育企画部長の長町康弘先生と教務副部長の荻原岳先生に話を伺った。

ICT導入で感じる、学習の個別最適化への手応え

中学・高校とも1・2年生がタブレットを個人所有する仁川学院。生徒や保護者とはClassiを通じて連絡を取り合い、ロイロノートを活用し、授業を進める。ロイロノートを導入したことで、授業のやり方や宿題内容が変わった。

「数学では、生徒が演習問題を解いた画面を一斉にホワイトボードに写すことができるので、誰かに解き方の発表をしてもらうのも、とてもスムーズに出来ます。今までは、生徒に授業前の休み時間に書いてもらっていたので、これがボタン一つで即座に出来るというのは、教員も生徒も手間が省けます。その分、演習や話し合い、教え合いに時間を割けるようになりました。宿題も、国語や英会話の授業では朗読を録音して送らせるなど、今まで紙では出来なかったことをできるようになりましたね」(荻原先生)

また、質問機能があるのもロイロノートの利点のひとつ。授業や宿題で分からない所があれば、生徒は教員に気軽に質問することができ、実際、生徒と教員のやりとりも増えている。教員側も、授業時の様子で単元の理解が不十分と感じた生徒にはフォローアップ資料を配信するなど、よりきめ細やかな対応が可能となり、学習の個別最適化に近づいたという手応えを感じている。

▶︎教務副部長 荻原岳先生

生徒の主体性を引き出すICT教育が、教員の意識を変える

高校では、特にカルティベーションコースでの活用度が高い。それはカルティベーションコースの学びのスタンスによる所が大きい。「皆で協力して問題を解決しよう」というコンセプトのもと、課題を発見する所からスタートし、自分たちで考えて、答えを導くことを主眼とするカリキュラムでは、協働して調べることや意見をまとめて発表する機会も多い。その際に、タブレットは非常に便利な道具として活躍してくれる。

ICT教育を推進してきた中で、「探究のような教科書のない授業や、普通の授業での学び合いのシーンでは、ICTを使うことで、結構な割合で授業の主導権が教員から生徒に移ったと感じている」と長町先生は話す。

例えば、2年生のカルティベーションコースの探究の授業で行われる地元企業とのインターンワークでのこと。企業からのミッション-例えばホンダカーズなら「兵庫県の高校生が見て楽しく、車に乗りたいなと思わせるPR画像を作りなさい。なぜこれを作ったか、その意図も説明しなさい」といったもの-に応じて、生徒はプレゼン作品を作る。

この授業では、教員は「人の写真を撮る際は必ず許可を取る」などの基本的なルールを伝えたり、全国トップレベルのプレゼン作品を紹介したりはするものの、何をするかなどの指示は一切しない。生徒は自分たちで考え、アイデアをシェアしながら、作品作りに取り組む。今年度はコロナ禍で街頭アンケート調査が難しい状況であったこともあり、SNSアプリを使ってアンケート調査を行うなど、自分たちの知識や経験を生かし、主体的に取り組む姿が見られた。

「教員は何も指示せず、中間報告などで、これはどうしてこうしたのかなどを問いかけるだけ。それでも、出来上がってきたプレゼン作品はとても創意工夫にあふれ、こんな技術を持っていたんだとビックリさせられるものでした」と長町先生は話す。

「今まで、私たち教員は分かりやすい授業をすることが良い授業だと考えていました。しかしこれからの時代、生徒の頭がいかにアクティブになるかという視点に力を置いて大切に進めていかなくてはいけないのだと日々、痛感します。教員は先回りして教えるのではなく、生徒が主体的に取り組めるように待つ。我々教員の意識改革やそれによる教育実践の変化が、ICTによって後押しされたと感じています」(長町先生)

▶︎教育企画部長 長町康弘先生

教育の中身を大切に、オンライン学習の技術を磨く

休校期間中は、中学・高校とも授業動画作りとその配信にも力を入れた。配信は、自分や家庭の都合のよいタイミングで、何度も繰り返し見られるようオンデマンド方式を採用。ほぼ全ての教科で授業動画を作成し配信、生徒たちは動画を見ながら課題に取り組み、問題集などの紙媒体を使った学習も併せて行えるようにした。休校時にタブレットを所有していた2年生は、途中からロイロノート上での課題のやりとりも積極的に行ったそうだ。

通常の授業が再開した現在も、授業動画を作成し配信を続ける教員もいる。配信された授業動画で予習をしてから授業にのぞんでもらうことで、授業では問題演習を中心に行える。それに加え、今まで受け身で授業を受けていた生徒から、少しでも「前のめり」な姿勢を引きだそうとする狙いがあると荻原先生は語る。

現在、新型コロナウィルスの再流行に備えて、ICT教育推進部では様々な取り組みを進めている。次に春のような事態になった際には双方向授業の配信を考えています。いつでも対応できるよう、現在Zoomを使っての授業の練習を重ねている所です」(荻原先生)

このほか、Googleのクラウド型グループウェアサービス・G Suiteの導入も準備中だ。2020年度はICT教材の研修をオンラインで開く会社も多く、研修にはICT教育推進部以外の教員にも参加を促し、教員全体でより良いオンライン学習を模索する体制を整える。
様々な取り組みを進める中で、長町先生が常に考えていることは、「ICTが主役ではない」ということ。
「本当に我々が教えたいこと、生徒の資質・能力を高めたいという思いやそれを育むための教育法があって、初めてICTが生きます。教員同士の教科会も活発にし、お互いで学び合って、刺激し合う。外部のICT研修などに参加するほか、新しい指導要領をしっかり読み解くことも大切です。技術だけがうまくなっても、生徒にも何も還元できません。我々の建学の精神『和と善』と合わせながら、教育の中身を真面目に磨いていかなくてはいけない」と長町先生は話す。

生徒を信頼し、生徒と共に作るネットルール

「トラブルがあって当たり前。それに一つひとつ丁寧に対応して、受け入れて進めていかないといけない。いつも生徒が何かをするのではないかと疑っていたら、それは教育ではありません。生徒を信頼して、教員から指示するだけのICT教育ではなく、生徒も参加した上で、ICT教育を進めていきます」と長町先生。

高校では2020年度、生徒会の自治会活動の一環としてICT委員会がスタートした。各クラスから2名ずつ選ばれた合計30名の生徒が、教員と共にICT環境の整備に当たる。タブレットの使用方法の普及を図る一方、生徒側からの使用上に起こる不都合を吸い上げ、教員と生徒とのパイプ役として活躍している。年明けには、「iPadのこんな便利な使い方、知っている?」や四コマ漫画などを掲載する情報紙『ICT Times』の初版発行も控える。

中学校では毎年1学期の早い段階で、携帯電話の取り扱い方やモラル、SNSでの言葉の使い方などを学年ごとに話し合い、ルールを決めることが伝統的に行われている。
ICT機器を使う上で、生徒が「ここはしっかり守る」というラインを認識しているからこそ、教員との信頼関係が生まれ、「使い方を生徒に考えさせる」という教員の姿勢へと繋がっていくのだろう。

<取材を終えて>
今までの同校の教育は、「生徒が失敗しないように、教員が先回りして手助けすることも多かった」と両先生は話す。しかし、ICT教育導入を機に、教員側の姿勢が「生徒を守り導く」から「生徒自身が動き出すのを待つ」へと変わってきた。
教員が待つことができるようになったのは、ICTを活用することで生徒自身のやり抜く力がより見えやすくなり、「彼らなら出来る」という手応えを感じたからだろう。そして、その教員の意識変化は生徒にも伝わり、教員の見守りの中、生徒はより主体的に課題に取り組むようになるという良い循環が生まれていることを、取材を通じて感じた。

人との「和」を大切に、神から贈られた「善」を分かち合う。建学の精神「和と善」により伝統的に育まれてきた生徒と教員の信頼関係は、今、ICTという道具を得て、新しい形に変わりつつある。新しい信頼関係が生む主体性を育む教育に、今後とも注目したい。

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